昨日(9日)は内幸町ホールで行われた「さん喬あわせ鏡」を聞きに行く。出演者と演目は下記の通り。柳家さん喬の噺は全て冬に関わる噺。差し詰め「さん喬あわせ鏡 〜冬の噺〜」という会だった。
三遊亭歌きち 「子ほめ」
柳家さん喬 「福禄寿」
柳家さん喬 「掛取万歳」
〜 仲入り 〜
柳家さん喬 「芝浜」
三遊亭歌きちは三遊亭歌奴の弟子で5月に前座になったばかり。声質はとてもいいのでもっと表現力をつけるよう頑張ってもらいたい。
「福禄寿」は自分が産んだ子と譲り受けた義弟の子を分け隔てなく育てた母親と、なかなか商売が上手くならない自分の子の長男(禄太郎)と、譲り受けた子の長男(福次郎)の話。三遊亭圓朝の作で、今日この演目を演じるのは柳家さん喬と柳家三三ぐらいだという。私もYou tubeでこの話を何度か聞いていたが、実演に接するは始めて。いや〜、上手いです。こんな噺を冒頭にもってくるとはさん喬の凄さというか偉大さを感じてしまう。
「掛取万歳」は年末に訪れる借金取りを、相手の好きな話(狂歌、義太夫、喧嘩、漫才)に合わせて、あの手この手で追い返してしまうという滑稽噺。この噺はさん喬の弟弟子である柳亭市馬が得意としているが、さん喬も見事である。ただ、この追い返す手段のなかにさん喬が得意とする踊りがないのが残念。いつかオリジナルで踊りの話を盛り込んで演じてほしい。
仲入り後は「芝浜」。今日では女性落語家たちが女性目線による「芝浜」を演じているが、さん喬の「芝浜」もかなり女性目線で演じられている。というか、さん喬の演じるおかみさんがあまりにも鮮やかだからそう思ってしまうのかもしれない。酔っている旦那の魚勝こと勝五郎を誤魔化していく様、そして3年後に真実を告げる様など、どんな落語家も太刀打ちできない人情と愛情に溢れている。これまでに何人もの「芝浜」を聞いているが、さん喬を凌ぐ人にはまだ出会っていない。