月曜日, 10月 22, 2018

柳の家の三人会@パーシモンホール

先日(18日)めぐろパーシモンホールで「柳の家の三人会」を聞く。

出演者と演目は下記の通り

柳家圭花  「浮世根問」(うきよねどい) 
柳家喬太郎 「夢の酒」
 〜 仲入り 〜
柳家三三  「金明竹」
柳家花緑  「紺屋高尾」

開口一番は柳家花緑の弟子の柳家圭花。風貌や語り口から柳家三三の弟子かなと思ったが(三三に弟子はいない)、1200人満員の客席にも全く物怖じせず飄々と話す大器。じっくりゆっくり古典の王道を歩んでもらいたい。

喬太郎のマクラはお得意の沿線駅語り。今はもうないが東横線「高島町」駅と代官山駅の終点ひとつ前の駅の比較。これにはお客の多くが東横線沿線住民ということもあり、いきなり大盛り上がり。続けて彼が住む池袋愛を発揮して隣駅(目白と大塚)の違いを力説する。いつもながら喬太郎のマクラは楽しい。で、このままマクラで終わってしまうかと思ったら、池袋でAVを借りてしまったという夢話から「夢の酒」へ。「夢の酒」は若旦那の夢に嫉妬する嫁(お花)をなだめる大旦那が同じ夢を見に行くというお話。本来ならばお花が夢に対していじらしく焼き餅を描くのだが、そこは喬太郎、膝を立ててお花の嫉みを大きく表現して場内を笑わす。

「寿限無」と並んで早口言葉で有名な「金明竹」。普段は前座噺として後半部分だけが寄席などで頻繁に掛けられるが、今回は松公がどうして骨董屋の店番をしているかなど前半部分も詳細に演じる。これまで柳家三三の落語は何度も聞いているが、私はどうも相性が良くなく、いつも感心することがなかった。しかし、今日は違った。喬太郎、花緑には申し訳ないが、この日一番の出色の出来だった。というのも、なんというかこれまで感じていた師匠(柳家小三治)の色を全く感じさせなかったからだ。三三は落研出身でなく小三治の純粋培養で育った落語家のため、どうしても小三治の色を出してしまう。しかし、この日は弾けていた。飛んでいた。怖いもの知らずで自分を曝け出していた。落語はやっぱり無の境地で馬鹿にならないと。

「紺屋高尾」は神田紺屋町の染物職人、久蔵が吉原の三浦屋・高尾太夫に恋患いをして、3年間あくせく働きお金を貯めて彼女と会い、その心意気に惚れた彼女が翌年の年季明けに久蔵に嫁ぐというハッピーエンドな廓噺。これまでに何人ものこの噺を聞いたが、柳家花緑の「紺屋高尾」は心地よい。なんというかお客と一緒になって親近感を感じさせる。艶っぽいところも明るく演じて心をウキウキさせてくれる。人によって「こんな軽い『紺屋高尾』なんか」と云うかもしれないが、ハッピーな気持ちで家路(私は飲み屋だが)につかせてくれるのも嬉しいものである。

今回の「柳の家の三人会」は演目はいわゆる定番中の定番だったかもしれないが、喬太郎の熱演、三三の好演、そして、花緑の快演と三者三様で大満足の落語会だった。