『江戸食べもの誌』(興津要:著)という本のなかに、文化九年(1812年)三月二十五日に魚河岸に入荷した初鰹は17本で、6本は将軍家でお買い上げ、3本は料亭八百善が二両一分で買い、8本を魚屋が仕入れ、そのうちの1本を中村歌右衛門(おそらく三代目)が三両で買って、大部屋役者にふるまった、という話が載っている。
では、その値段が今の価格にするとどれぐらいなのだろうか。
まず初めにこれを覚えていただきたい。江戸時代の貨幣は1両=4分=16朱=4000文という設定になっている。
1両の価格はその時の米価格や小判の金含有量によって値段は変わるので一概にいくらとは言えないが、江戸前期(元禄の頃)までは約100,000円、江戸中期(文化文政の頃)までは75,000円、幕末頃は4~50,000円と一般的にはいわれている。
ただし、これはあくまでも金融相場的な価格で、一般庶民の肌感覚だと、いわゆる二八蕎麦が16文(幕末は22文)だったことを考えると、この16文を仮に500円とすると1両で250杯を食べることができることになり、1両は80,000円となる。つまり、料亭八百善が二両一分で買った鰹はなんと180,000円。そして、中村歌右衛門は1本に240,000円も払ったことになる。さすが成駒屋だ。
では、現在の鰹の価格はというと1kg2,000円前後なので、標準的な3kgものは1本6,000円となる。つまり、江戸時代には今の30倍以上の初鰹を食べていたことなる。さすが、江戸っ子。宵越しの金を持たないだけはある。(呆)
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