火曜日, 4月 12, 2022

特選落語会~陽春四景~

昨日(11日)は国立劇場小劇場で開かれた「特選落語会~陽春四景~」を聞きに行ってきた。出演者と演目は下記の通り。客席はかなりの入り。

桃月庵あられ 「初天神」
桃月庵白酒  「錦の袈裟」
柳亭市馬   「蒟蒻問答」
 〜 仲入り 〜
春風亭一之輔 「意地くらべ」
柳家権太楼  「疝気の虫」

桃月庵あられは桃月庵白酒の3番弟子。前座の「初天神」というと前半の「飴玉」の部を演じることが多いが、今回は後半の「凧」の部。あられは前座とは思えない風体で、その語り口も前座とも思えないほどどっしりしている。近いうちに二ツ目になることは間違いないが、要注目の人である。

桃月庵白酒のマクラは先日のゴロフキンvs村田涼太の話。その戦いはまるでマイケル・ジャクソンvs市馬師匠の戦いのようだと。w しかし、流石にこの比喩にはお客さんの多くはポカンとしていた。どうやら落語ファンには格闘技ファンは少ないようだ。「錦の袈裟」は吉原に行こうという連中が、吉原で派手な遊びを企むというもの。白酒はいつものように汗だくになりながら熱演をして面白いことは面白いのだが、少し空回りの感が否めなかった。

柳亭市馬はマクラもほとんどなく「蒟蒻問答」へ。上州安中に住む蒟蒻屋の六兵衛さん。今はカタギだが、以前は江戸でヤクザ者だったので親分肌。そんな六兵衛さんが大僧正になって修行僧と問答を繰り広げるというお馴染みの噺。市馬はこの噺を大らかにゆっくりと進めていく。観客の多くは顛末を知っているということもあり、お客との距離をゆっくりゆっくりと近づけていきながら話す。巧みである。

春風亭一之輔のマクラは現在行われている蝶花楼桃花の襲名披露興行の話と「二十一人抜きの大抜擢」として10年前に話題になったが一之輔の真打昇進の裏話。この裏話、真偽の程はわからないが師匠(春風亭一朝)ならではのオチは面白い。「意地くらべ」は隠居から借りた50円を返すために八五郎は下駄屋の旦那から50円を借りるが、八五郎は隠居と旦那に行ったり来たりするという噺。一之輔はこの噺を飄々と語り始めるものも、途中からは少し呆れながら、そして最後は怒りながらと八五郎の気持ちになって進めていく。それでいて、隠居や旦那の感情も巧妙に演じる。いや〜、面白かった。

柳家権太楼のマクラは1月にオミクロン株にかかって入院したときの話と後日談。それをひと通り話すと、今日は何をやろうかと迷いはじめ、お囃子の太田そのさんが帰っていなかったら「疝気の虫」に、帰っていたら「子別れ」にすると言う。そのために舞台袖にいたスタッフはそのさんを探しに行く。(笑)疝気とは一般的に下腹部痛のことを言うが、この「疝気の虫」では疝気の虫が「おそば、おそば」と歌って踊ってと実に賑やかにして可愛い。これには場内大爆笑。「爆笑王」こと権太楼師匠の真髄をみた思いだ。帰り際にお客さんが「お囃子のそのさんが帰ってなくて良かったわねぇ」と言っていたが、確かにその通りで、私もお囃子の大事さを再認識する共にそのさんに感謝したい。



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