昨日(10日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で春風亭一蔵と柳亭市弥出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。春風亭一蔵は江戸弁落語の第一人者・春風亭一朝(時代劇の江戸弁指導もしている)の弟子。柳亭市弥は落語協会会長であり、大相撲中継で花道側の席にたまに座っている柳亭市馬の弟子。なお、演目は下記の通り。
春風亭一蔵 『熊の皮』
柳亭市弥 『試し酒』
〜 仲入り 〜
柳亭市弥 『初天神』
春風亭一蔵 『宿屋の富』
1席目は「熊の皮」。NHK『超入門 ! 落語 THE MOVIE』で三遊亭遊雀の語りで放映されたが、髪さんの尻に敷かれる情けない甚兵衛が、世話になっている医者へ行って、髪さんに言われた口上をしどろもどろで伝えるという噺。春風亭一蔵はその巨体(100キロ以上はある)を上下左右に動かしながら甚兵衛夫婦を滑稽に演じていくが、甚兵衛と医者のくだりになると少し甘くなってしまう。ある意味難しいオチなので、その点を明確にしてほしかった。
2席目は「試し酒」。五升飲むという大酒の久蔵の話。これは話うんぬんより、その飲む動作を楽しむ落語といった方がいいかもしれない。よく芝居では本当の酒飲みは酔う様が下手だと言われるが、これはどうやら落語にも似たようなところがあるのかもしれない。柳亭市弥は扇子を使って上手く飲むには飲むが、その酔い方が少し甘い。もう少し大胆に酔った様を表現しても酔いのではないだろうか。そうすれば「先に表の酒屋で試しに五升飲んできた」というオチが一層効果があるような気がする。
3席目は「初天神」。枕で意外にも高校・大学ではラグビー部だったとプロフィールを明かす柳亭市弥。よく見れば耳はラグビーをやっていた影響で少し変形している。で、正月ということで定番の「初天神」。これまでに何人も「初天神」を聞いてきたが、市弥が演じる子どもは最も可愛くそしてズル賢い。できれば、親父の声色にもう少し凄味を加えてもらえれば、言うことなしだ。市弥にはイケメンだけでなく愛嬌という武器もあるので、それを使って師匠のような古典落語の王道を歩んでていってもらいたい。
4席目は「宿屋の富」。神田馬喰町の宿屋に泊まった金には困らないという大ボラ吹きの男が、なけなしの金で買った富くじに当たるという滑稽噺。春風亭一蔵の噺ぶりは巨体を生かすべくツッパリで能動的である。下手な引き技などもない。前回ここで彼が演じた「阿武松」は秀逸だったが、それ比べると今回の「宿屋の富」は人の内面(金に対する欲)を引き技で表現してもよかったのではないかと思う。とはいえ、彼には大きな体を活かして大きな噺をする落語家になってもらいたい。
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