土曜日, 5月 05, 2007

JERSEY BOYS(ジャージー・ボーイズ)


サンフランシスコのCurran Theatreで観た『JERSEY BOYS』は久しぶりに出会ったミュージカルの傑作だ。いや〜、久しぶりに興奮したミュージカルだった。2006年度トニー賞の最優秀ミュージカル作品賞を受賞したことだけはある。

お話は1960年代から1970年代にかけて、世界的にも人気を博したニュージャージー出身の4人組のポップ・コーラス・グループ「フランキー・バリーとザ・フォー・シーズンズ」の物語である。グループ誕生から、成功にいたるまでの秘話、そしてグループ間やプロデューサーたちとの内紛、そして解散、また家族の死など、彼らの悲喜こもごも描いて、最後はロックの殿堂入りの舞台で幕が降りる。こうしたストーリーと共に往年のヒット曲「シェリー」「恋はやせがまん」などがふんだんに歌われる。

これまでにこうした昔のヒット曲を使ってミュージカルにした作品はいくつもあった。こういうミュージカルを俗に「ジューク・ボックス・ミュージカル」という。有名なところではABBAの名曲を綴って地中海の島の恋物語にした『マンマ・ミア』、ビリー・ジョエルの楽曲の数々を使った『ムービン・アウト』が成功した。しかし、その後エルビス・プレスリー、ビーチボーイズ、ジョン・レノンといった超有名どころの曲を使った「ジューク・ボックス・ミュージカル」が製作されたが、ほとんど失敗に終わっている。

それでは、この『JERSEY BOYS』がなぜ受けたかといえば、この作品は単なるヒット曲を聴かせるだけのものでなく、フランキー・バリーとザ・フォー・シーズンの紆余曲折とした人生がしっかりと描かれているからである。『マンマ・ミア』のようなラブストーリーでなく、『ムービン・アウト』のようなロックミュージカルでもない、4人それぞれの生き方、心の葛藤などを描いているからである。こうしたちゃっとしたバイオグラフィがあり、主演の4人がいずれも歌も演技も素晴らしいから、観客はどんどんと劇世界に引き込まれていくのだ。

上演時間は休憩を入れて約2時間30分。それでもとっても短く感じられる舞台だった。往年のヒットソングを知っている観客たちは一緒に歌い、踊り、指笛を鳴らし、最後は場内完全にスタンディングオベーションで大興奮だった。劇場全体が完全に1960年代にタイムスリップしていた。

この作品は別に1960年代を知らない人でも、ザ・フォー・シーズンズを知らない人でも十二分に楽しめるミュージカルである。そうでなければ、若い観客にも外国人にも受け、ロングランすることはない。そして、これは「ジューク・ボックス・ミュージカル」というカテゴリーに当てはめるような作品ではない。もしそうであるならば、最優秀ミュージカル作品賞を受賞などできるはずがない。

“JERSEY BOYS” Don't miss it.

http://www.jerseyboysbroadway.com/
ブロードウェイではロングラン上演中
サンフランシスコでは9月30日まで延長上演決定

Jersey Boys at the Tony Awards
http://www.youtube.com/watch?v=WM4fMmMq1S0&mode=related&search=

この作品はいずれ日本でも上演されるに違いないが、間違っても『マンマ・ミア』のように日本人が演じるのではなく、National Tourメンバーが来日して上演してほしい。

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