GW後半の4日に東京文化会館での『N響★カンタービレコンサート』に行ってきました。会場はいつものシニア層が目立つN響定期公演とは違って、子供からカップルまでいろいろな人がきていてとても賑やかでした。しかし、演奏が始まるとみんな一生懸命(緊張していたのかも)演奏に聴きいっていて、とても楽しいコンサートで、終演後のコンマスの堀正文の清々しい笑顔が印象に残りました。
演目(※はアンコール曲)
ロッシーニ/ウィリアムテル序曲
モーツァルト/オーボエ協奏曲ハ長調より第1楽章
ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第5番「春」より第1楽章
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番より第1楽章
ベートーヴェン/交響曲第7番
※ブラームス/ハンガリー舞曲第1番
指揮:渡邊一正
オーボエ:茂木大輔
ヴァイオリン:大宮臨太郎
ピアノ:河内仁志
管弦楽:NHK交響楽団
司会:八塩圭子
普段のN響定期公演は司会者などおらず、いつも淡々と演奏を聴くだけだが、今回のように簡単なトークを入れて、少し親しみやすいコンサートもいいものである。
コンサートはまず『ウィリアムテル序曲』から始まったが、これはいわゆるツカミで、これで観客を引き込ませるのだが、これが個人的に非常に良かった。というのも池田昭子のイングリッシュホルンとフルート(誰?中野富雄?)の掛け合いの音色が心地よく、私などはもうここで今日は来たかいがあったと思ってしまったほどツカまされてしまった。(笑)
次はもぎぎこと茂木大輔の『ピンクのモーツァルト』でなく『オーボエ協奏曲』。これは本当に素晴らしかった。オーボエ特有の繊細でいてしなやかな音色が広い文化会館に綺麗に響き渡っていた。さすが個人商店・茂木大輔の面目躍如たる演奏だった。
そして、次に登場したのがN響次席ヴァイオリニストの大宮臨太郎。普段はコンマスの隣で若いながらも余裕綽々と演奏しているのだが、今回はさすがに緊張していたのか、演奏にゆとりがなかった。ピアノ伴奏をした指揮の渡邊一正の方が逆に際立ってしまい、それはあんまりでしょ、という感じだった。
前半の最後は『のだめ』ファンにはたまらないラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』。演奏は昨年の日本音楽コンクールピアノ部門第1位に輝いた河内仁志。今春、京都市立芸術大学を卒業したばかりのまだまだ初々しい若手。しかし、そんな彼がラフマニノフの名曲をいとも簡単にといったら失礼かもしれないが、まるで指を自由自在に動かしながら、ラフマニノフの甘美な音色をピアノから奏でるのである。特に高音の右手中指、薬指そして小指の鍵盤のたたき方は、たたいているというより指が吸い込まれていくようなしなやかさ。これまでにラフマニノフのピアノ協奏曲は有名女性ピアニストや、アシュケナージのCDでイヤというほど聴いているが、彼の演奏はそれ以上に甘美にして耽美だ。第1楽章だけの演奏なんてもったいない。第2、第3楽章も聴きたかった。会場にいた人ならば誰もがそう思ったに違いない。
休憩後は本日のハイライトであるベートーヴェンの『交響曲第7番』。第1楽章は指揮者の渡邊一正が少し気負いすぎていたのか、どことなくバランス感もずれていて落ち着きのない演奏だったが、第2楽章の始まりからは凄かった。ちょんまげ木越洋率いるチョロ軍団と、もじゃもじゃ店村眞積率いるヴィオラ軍団が荘厳にして優雅なベートーヴェンの低音の魅力を弾き出して、一気にベト7の世界になだれ込んでいった。先日の定期演奏会のときの『チャイコフスキー第5番』でもそうだったが、あの低音部の魅力を発揮できるオケは日本にはないと思うし、世界的にもトップレベルにあると思う。私がN響を支持する最大の理由はこれなのかもしれない。
そして、第3楽章から第4楽章にかけては弦も管も打も一体となって、会場全体が息を飲み込みような迫力で観客を圧倒させていった。N響ならではのここぞという団結力が見事に演奏に現れていた。先日のコバケンのN響定期公演は遊びがなくて残念だったが、昨日の演奏は遊び心というか、初心忘れざるべからずという気持ちで演奏しているようで、どことなく若々しいN響の演奏を聴いたような気がした。冒頭にも書いたが終演後のコンマス堀正文の笑顔がとても清々しかった。
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