久しぶりに江戸小話です。
江戸の娯楽といえば、なんといっても相撲と芝居だった。両国の相撲小屋は人気力士同士の取組となると、大変な混み方である。そのために、小屋前は大変な人だかりになり、お客はあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
一目でも人気力士同士の取組を観たいと思ってやって来た伍作(ごさく)も、表から入ることはできず、裏へ回って犬のように四つんばいになって、囲いの中へ入ろうとした。すると、見張りの男にに見つけられ、
「こらこら、そこは、入るところではないぞ!」
と、襟首を捕まれて、グイッとつまみ出されてしまった。
「何とか入る方法はないものかなあ」
と、伍作はしばらく考えて、今度は囲いの中へ、尻から入ろうとした。すると、またもや見張りの男にに見つかってしまい、
「こらこら、そこは、出るところではないぞ」
と、帯を捕まれて、中へと引きづまれてしまった。
おかげで、伍作はしっかりと相撲見物ができてしまった。
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