一昨日(8日)は学芸大学駅近くで開かれた第9回「チェロキー寄席」に行ってきた。出演は入船亭扇辰。
二つ目が出演のときはお客さんが10数人の「チェロキー寄席」だが流石に真打ち。それもこの寄席の発案者の扇辰師匠ともなると、会場はいっぱいで立ち見客も出る。ただ、師匠曰く「ほとんど顔見知り」ということで会場はどことなくファンクラブ的雰囲気。そこで師匠は「若手が出るときも是非おいでください」と宣伝。
1席目は「麻のれん」。枕は当世の風潮でやばい言葉が出てくると、マズくなるという話で、テレビの収録で女乞食が出てくる「千早振る」を演じたら、スタッフがシーンとしてしまったとか。テレビという媒体だから仕方がないのかもしれないが、正直私もこうした風潮は嫌いである。で、それに応えるかのように師匠は「麻のれん」をかける。
「麻のれん」は強情っぱりの按摩の杢市が贔屓の旦那を揉んだ後に、その家に泊まることになったが、麻のれんと蚊帳を間違えて蚊に刺されるという話。この話も按摩を揶揄していることからテレビでは難しいかもしれない。それにしても、扇辰の芸は細かい。酒を飲む、塩をまぶした枝豆を食べる、はたまた蚊にいっぱい刺されるところの模写(仕草)が大袈裟でもなくワザとらしくもなく、その頃合いが絶妙。これが芸だという真髄を見せてくれた。
2席目は「さじ加減」。この演目は昨年の大手町落語会で聞いているし、「柳家喬太郎の芸賓館」でも観ている。まあ、それだけ師匠が得意としているネタなのだろう。
「さじ加減」は医者の阿部玄益が身請けしたつもりで以前懇意にしていた芸者の病を善意で治すものの、元締めは証文がなければ身請けにならないとひと騒動になる。それを最後は大岡裁きで元締めを懲らしめるというお話。ここでは扇辰は登場人物を見事に演じ分ける。阿部玄益、芸者のおなみ、茶屋の叶屋、置屋の松本屋、大家の八兵衛、八兵衛の女将さん、そして大岡越前守をそれぞれ個性豊かに小気味よいテンポで演じていく。その熱演ぶりに知っている話とはいえ、どんどん惹きよせられていく。師匠の人情噺は上手い。もちろん、最後は盛大な拍手に包まれた。
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