一昨日(26日)は港区三田にある仏教伝道センターで行われた「第51回三田落語会」を聞いてきた。出演者と演目は下記の通り。
林家たま平 『寄合酒』
柳家さん喬 『千両みかん』
入船亭扇辰 『心眼』
〜 仲入り 〜
入船亭扇辰 『茄子娘』
柳家さん喬 『中村仲蔵』
開口一番の林家たま平は林家正蔵の長男。つまり初代林家三平の孫であり、曽祖父は7代目林家正蔵である。ある意味サラブレットであり、柳家さん喬曰く「若旦那」。w その顔立ちは親父似でなく明らかに祖父似。しかし、語り口は滑舌もしっかりしていて表現力もある。一緒に行った相方などは「(叔父の)2代目林家三平(旧名・林家いっ平)より上手いわね」と言うぐらいで、私も叔父や親父よりその器は大きく、懐も深そうに思えた。9月には二つ目になるとのことなので、今後は活躍の場がもっと広がりそうである。
『千両みかん』は夏なのにみかんが食べたいという若旦那のために番頭が江戸中を奔走して手に入れたみかんが千両もするという滑稽噺だが、それを柳家さん喬は外観を意外にあっさりと組み立て行く。それでいながら、番頭の若旦那への情感はしっかりと描写する。外は硬く内は優しいという構成は憎いばかり。
『心眼』は三遊亭円朝が実弟で盲目だった円丸の話をヒントに作ったと言われる噺。目が不自由な按摩の梅喜(ばいき)が、目が見えるようになって芸者の小春としっぽりいい仲になる。しかし、それは結局は夢物語であり「寝ている時はよく見える……」というオチで終わる。入船亭扇辰はこうした滑稽噺が上手い。
仲入りを挟んでは『茄子娘』。先日のNHKの「超入門!落語 THE MOVIE」で扇辰が演じたもので、どうしてもそれを思い浮かべてしまったが、扇辰の演じる子どもはハツラツとして気持ちがいい。さん喬が次の枕で「あの声はどこから出てくるんでしょうね」と感心していた。w
で、トリはさん喬の『中村仲蔵』。これは彼の十八番である。他の落語家がこの話を演じるとどうしても地語り主体の講談調になってしまうが、さん喬が演じるとこれはもはや完璧な一人芝居。筵(むしろ)で被われた江戸の芝居小屋から、その楽屋ももちろん舞台も目に浮かぶ。忠臣蔵5段目の見得にしてもさすがに踊りの上手い師匠だけあって、色気ときらびやかさに満ちている。
今日、落語はにわかブームになっていて、実力のある二つ目も台頭してきている。そうした若手落語家を聞くのもいいが、そうした彼らが逆立ちしても束になってかかってきても勝てない超一流の話芸も聞くべきである。さん喬師匠や扇辰師匠を聞かずして落語を語るなかれとまでは言わないが、にわかファンでなく真のファンになりたいのならば是非とも聞いてもらいたい。
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