木曜日, 7月 15, 2021

納涼四景(一之輔、市馬、白酒、さん喬)@国立劇場小劇場

 一昨日(13日)国立劇場小劇場で開かれた「納涼四景」を聞きに行ってきた。演目と出演者は下記の通り。

柳亭左ん坊  「酒の粕」
春風亭一之輔 「加賀の千代」
柳亭市馬   「淀五郎」
 〜 仲入り 〜
桃月庵白酒  「お見立て」
柳家さん喬  「井戸の茶碗」

開口一番、前座の柳亭左ん坊(柳亭左龍の弟子)の持ち時間は5分。それをあっという間に終わらせ、次に登場した春風亭一之輔が「あいつ、3分で済ませやがって」と大慌て。「心の準備ができてないんだから」と愚痴をこぼす。私もさすがに3分の落語というのは初めてであった。w

「加賀の千代」は女房に急かされた甚兵衛さんが大家さんに20円を借りに行く滑稽噺。春風亭一之輔の十八番の一つ。今回は前座の早さに焦ったのか、心の準備ができていなかったせいか何処となくズルズルと話を進めていく。ところが、その投げやりとも思える話し方が一之輔の持ち味である虚脱感というか脱力感に輪をかけていき、不思議と話を魅了させていく。災い転じて福となすではないが、前座の早技転じて芸に磨きかかるという感じだった。

「淀五郎」は『仮名手本忠臣蔵』の舞台に急遽立つことになった澤村淀五郎の物語。「中村仲蔵」も同じような話。語りは「中村仲蔵」の方が難しいかもしれないが「淀五郎」は舞台描写が上手くないと演じられない。私は歌舞伎には疎いが、柳亭市馬の描写は舞台の上下、花道を垣間見れるようで素晴らしい。

「お見立て」は杢兵衛大尽が妓夫の喜助と共に生きている喜瀬川花魁の墓参りをするという郭噺というか滑稽噺。桃月庵白酒の杢兵衛大尽を演じるときのズーズー弁が絶妙。分からないようで分かるズーズー弁を話すところが芸だ。以前も書いたが今や白酒は話を始めたら無双状態。あのエグさがたまらない。

「井戸の茶碗」はいわずと知れた落語の傑作。なかでも柳家さん喬の弟子である柳家喬太郎は「歌う井戸の茶碗」なる新作まで進化(?)させて演じている。もちろん、彼の普通の「井戸の茶碗」も聞いたがことがあるが、師匠のは初めて。そこでどうしても聞きながら比較してしまう。話の流れの持っていき方はもちろん一緒だが、やはり滑稽噺っぽい喬太郎に比べて師匠は人情噺っぽくホロリとさせてくれる。柳家さん喬が稀代の名人であることを再認識させてくれた。



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