昨日(13日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で入船亭小辰と春風亭朝之助出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。入船亭小辰は「チェロキー寄席」の肝いりもしくは元締めでもある入船亭扇辰の弟子。春風亭朝之助は江戸弁落語の第一人者・春風亭一朝の弟子。ちなみに、朝之助はチラシにあるような坊主頭でなく、短いながらも毛はフサフサしている。なお、演目は下記の通り。
入船亭小辰 『高砂や』
春風亭朝之助 『啞の釣り』
〜 仲入り 〜
春風亭朝之助 『だくだく』
入船亭小辰 『替り目』
1席目は「高砂や」。かの有名な謡曲「高砂や〜、この浦舟に、帆を上げて・・・」に纏わる噺。入船亭小辰は歌を交えながら割と淡々と話していく。枕が長く客のノリもさほどでなかったせいもあるかもしれないが、本題はもっと抑揚をはっきりさせて演じてもらいたかった。
2席目は「啞の釣り」。初めて聞く。この落語は差別用語が使われることをあり、今日高座にかける落語家は少ないと思う。上野不忍池は神社仏閣にある池なので殺生禁断の池。ということで釣りは禁止。しかし、そこで毎夜釣りしていた七兵衛は与太郎に知られて、一緒に釣りに出かけるが役人に捕まってしまう。親孝行のための釣りだと言い訳するが・・・。春風亭朝之助は難しい噺を淀みなく話すが七兵衛と与太郎の違いが少し曖昧。表情をしっかり変えるか、話し方のスピードを変えるなりしてほしい。そうすれば、この難しい噺というか、他の落語家が手がけない噺をしっかりと持ちネタにすることができるだろう。
3席目は「だくだく」。滑稽噺の名作。家財道具一式を売り払った八兵衛は絵描きに部屋の中に床の間、茶箪笥、金庫など家財道具一式を描いてもらう。そんな部屋に泥棒が入り、噺がドタバタになっていく。前半の「啞の釣り」では少し苦戦していた春風亭朝之助だったが、こちらは師匠譲りの江戸弁を思う存分発揮して、水を得た魚のように快調に噺を進めていき、観客のツボをうまく掴んでいく。柳朝、一朝と続く江戸弁落語の継承者になってもらいたい。
4席目は「替り目」。初めて聞く落語。酔っ払いが自分の家の前で、車屋(人力車)を止めて、自分の家まで送ってくれと・・・。そして、今度は家の前を通ったうどん屋に冷酒をお燗してもらう・・・。朝之助同様に前半の「高砂や」では歌に苦労していた入船亭小辰だが、今度の酔っ払い顔というか酩酊する表情はとても上手い。その様はほのかに大師匠の入船亭扇橋を彷彿させる。こう思うと、小辰は江戸落語の王道を歩んでいくに違いない。
次回のチェロキー寄席(11月8日夜8時開演)は真打・入船亭扇辰の独演会。東横線沿線の皆さん、お時間のある方は是非とも足を運んでみてください。
木曜日, 9月 14, 2017
木曜日, 9月 07, 2017
正太郎・ぴっかり☆二人会その2
昨日(6日)は西新宿の「ミュージック・テイト西新宿店」で春風亭正太郎と春風亭ぴっかり☆出演の『どちらがドッカン!正太郎・ぴっかり☆二人会その2』を聞いてきた。会場は普段は落語・演歌のCDを扱うお店。
春風亭正太郎は春風亭正朝の弟子。春風亭ぴっかり☆は春風亭小朝の弟子。ということで、二人は5代目春風亭柳朝(私はこの人を子供の頃、大正テレビ寄席など見ていて結構好きだった)の孫弟子にあたる。演目は下記の通り。
正太郎&ぴっかり☆ くじ引き雑談
〜 仲入り 〜
春風亭正太郎 『明烏』
春風亭ぴっかり☆ 『徂徠豆腐』
前半は40分におよぶ二人の雑談。謝楽祭やディナーショーなどいろいろな話が出たが一番興味を引いたのが「真打昇進」。その中で正太郎が「我々もあと2〜3年後に可能性がある」というと、ぴっかり☆は「え〜、真打ですかぁ。あと2〜3年、もうそんなですかあ」と驚く。確かに二人もそれぐらいのキャリアになっているが、ぴっかり☆はまだまだその心構えがないような感じであった。
『明烏』は代表的な廓噺である。ただし、登場人物が多くて結構難しい。主人公の若旦那・時次郎、その父親(日向屋半兵衛)、町内の札付きの遊び人・源兵衛と太助、女郎屋の主(お巫女頭)、そして遊女・浦里と6人も主要人物が登場する。それゆえに、演じ分けるのがかなりやっかいである。そのために若手落語家はどうしても背景描写や地語りがおろそかになりやすい。春風亭正太郎はその点は無難にこなすが、ただ会場がお店というせいもあるせいかもしれないが、吉原の町並みを思い浮かべるに至らない。それでもサゲ近くの主人公と遊女の色香などはいい味を出していた。もう少しこの話を煮詰めていけば得意演目にできるのではないだろうか。
『徂徠豆腐』は豆腐屋七兵衛と貧乏浪人・荻生総右衛門(後の徂来)の人情噺。これを女流落語家が演じるのは結構難儀なのではないかと思う。しかし、これが春風亭ぴっかり☆の手にかかるなんか不思議な世界になる。多くの女流落語家は髪をショートヘアにするか髪を束ねるかして、男性と同じような振る舞いをするが、ぴっかり☆はもじゃもじゃヘアなので、どうしても見た目では江戸時代に入り込むことはできない。しかしながら、話が進むにつれてなんか時空を超越した女性ならでは世界を描いていき、下町人情噺のように聞こえてくる。現在の彼女は落語界のアイドル的存在だが、今回の正太郎など実力派二ツ目と競演していき、これまでにない女流落語の世界を築いていってもらいたい。そうすれば、望もうが望むまいが真打になる日もそう遠くはないだろう。
春風亭正太郎は春風亭正朝の弟子。春風亭ぴっかり☆は春風亭小朝の弟子。ということで、二人は5代目春風亭柳朝(私はこの人を子供の頃、大正テレビ寄席など見ていて結構好きだった)の孫弟子にあたる。演目は下記の通り。
正太郎&ぴっかり☆ くじ引き雑談
〜 仲入り 〜
春風亭正太郎 『明烏』
春風亭ぴっかり☆ 『徂徠豆腐』
前半は40分におよぶ二人の雑談。謝楽祭やディナーショーなどいろいろな話が出たが一番興味を引いたのが「真打昇進」。その中で正太郎が「我々もあと2〜3年後に可能性がある」というと、ぴっかり☆は「え〜、真打ですかぁ。あと2〜3年、もうそんなですかあ」と驚く。確かに二人もそれぐらいのキャリアになっているが、ぴっかり☆はまだまだその心構えがないような感じであった。
『明烏』は代表的な廓噺である。ただし、登場人物が多くて結構難しい。主人公の若旦那・時次郎、その父親(日向屋半兵衛)、町内の札付きの遊び人・源兵衛と太助、女郎屋の主(お巫女頭)、そして遊女・浦里と6人も主要人物が登場する。それゆえに、演じ分けるのがかなりやっかいである。そのために若手落語家はどうしても背景描写や地語りがおろそかになりやすい。春風亭正太郎はその点は無難にこなすが、ただ会場がお店というせいもあるせいかもしれないが、吉原の町並みを思い浮かべるに至らない。それでもサゲ近くの主人公と遊女の色香などはいい味を出していた。もう少しこの話を煮詰めていけば得意演目にできるのではないだろうか。
『徂徠豆腐』は豆腐屋七兵衛と貧乏浪人・荻生総右衛門(後の徂来)の人情噺。これを女流落語家が演じるのは結構難儀なのではないかと思う。しかし、これが春風亭ぴっかり☆の手にかかるなんか不思議な世界になる。多くの女流落語家は髪をショートヘアにするか髪を束ねるかして、男性と同じような振る舞いをするが、ぴっかり☆はもじゃもじゃヘアなので、どうしても見た目では江戸時代に入り込むことはできない。しかしながら、話が進むにつれてなんか時空を超越した女性ならでは世界を描いていき、下町人情噺のように聞こえてくる。現在の彼女は落語界のアイドル的存在だが、今回の正太郎など実力派二ツ目と競演していき、これまでにない女流落語の世界を築いていってもらいたい。そうすれば、望もうが望むまいが真打になる日もそう遠くはないだろう。
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