水曜日, 5月 10, 2023

さん喬あわせ鏡(上) ~新作部屋~

一昨日(8日)は日本橋劇場で開かれた「さん喬あわせ鏡(上) ~新作部屋~」を聞いてきた。出演者と演目は下記の通り。台本はすべて中央大学教授・黒田絵美子によるもの。

柳家さん喬  「恋の夢」
柳家さん喬  「はち巻地蔵」
 〜 仲入り 〜
柳家さん喬  「らくだの馬」
柳家さん喬  「こわいろや」(声色や)

冒頭は「恋の夢」。緞帳が上がる前に客席には有名な韓流ドラマの主題歌が流れる。そして柳家さん喬が「みなさんは胸がときめく恋をしたことがありますか」などといったナレーションが入り緞帳が上がる。話の内容は「キミが好きだ」という言葉に表される恋話。斬新な構成でメルヘンチックな話ではあるが、いささか物足りなさも感じる。

「はち巻地蔵」は仲良く2体で並ぶは札かけ地蔵とはちま地蔵。そこに飲兵衛の熊五郎がやってきて愚痴をこぼす。それに対してはちまき地蔵は商売繁盛、夫婦円満、良縁成就の3つの良いことをすれば、熊五郎の願いは叶うと言う。言われた熊五郎は鉢巻を持って街へ飛び出す・・・。これはさん喬師匠をかなりイメージして描いたと思われる作品。江戸庶民の人情と情緒を簡略にするところなど見事な出来。地蔵同士の話模様も秀逸。この噺は是非ともさん喬一門、特に柳亭左龍師匠あたりに受け継いでもらいたい。

仲入り後は「らくだの馬」。「らくだ」をはじめ古典落語のネタを多様した面白いおかしの小品。

「こわいろや」は以前より聞きたいと思っていた作品。江戸時代には「声色屋」という歌舞伎役者の形態模写や声帯模写をする商売があったそうで、昭和になっても寄席にも出演していたそうである。お話はなかなか結婚ができない声色屋が友人に成りすまして女性の家へ・・・。さん喬師匠の芝居好き、踊り好きなどを上手く引き出し、それに応えたさん喬の語り、立ち振る舞いが凝縮した俊作。10年以上前に作られた噺のようなので、もはや新作というより古典なのかもしれない。




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