日本の3大集団襲撃事件は、赤穂浪士の討ち入り、桜田門外の変、二二六事件と言われている。それらの事件は偶然とはいえすべて雪のなかで起きている。そして、それらの事件がその後の日本の歴史を変えたことはいうまでもない。
映画『桜田門外ノ変』は水戸藩開藩400年を記念をして、水戸の有志たちが「『桜田門外ノ変』の映画化支援の会」を組織して作られた“地域おこし”の映画である。しかしながら、映画そのものは町おこし地域おこしの色合いはほとんどなく、重厚な歴史劇として描かれている。それは襲撃した水戸・薩摩の浪士の全員をきっちりと描いていると同時に、彦根藩にいたるまでの事件の悲劇性をもきっちりと伝えている。単なる大沢たかお主演の時代劇では全くない。
この映画で特筆すべきはキャスティングだ。これといって奇をてらっていないキャスティングがいい。人によってはあまりにも無難すぎて面白くないと言うかもしれないが、オーソドックスにキャスティングされた役者の誰もが見事にその役に十二分に応えている。
徳川斉昭の北大路欣也と井伊直弼の伊武雅刀は威厳と内包する苦渋を表情に出している。事件の首謀者というか計画立案者である3人(柄本明、西村雅彦、生瀬勝久)は常に緊張感に満ちた演技で、ぐいぐいと映画のなかに引き込んでいく。また、主人公・関鉄之介の捕縛を指揮する榎木孝明や北村有起哉や、鉄之介の逃亡を手伝う本田博太郎と温水洋一なども渋い味を出している。
演出もこれといって奇をてらったものはなく、これまたオーソドックスであるが、娯楽性に富んだ時代劇ではなく、できる限りリアリティに近い歴史劇として演出しているのが好感がもてる。
映画の最後に明治維新を成し遂げて桜田門外を通るときの永澤俊矢演じる西郷隆盛が「ここから始まったんじゃ、あっという間の8年間だった」というセリフに、尊王攘夷、倒幕運動は始めたのは水戸藩なんだという“地域おこし”のプライドが込められていた。
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