土曜日, 1月 26, 2013

映画『レ・ミゼラブル』を観る


平日の昼間の回を観たが客席はほぼ満席。客層も熟年夫婦から若いカップルまでと幅広い。公開からすでに1ヶ月余り経っているのもかかわらず、これだけのお客さんを集めているということはかなりの観客動員があるヒット作なのではないだろうか。

『レ・ミゼラブル』を初めて観たのは1987年の帝劇だった。そして、翌年にニューヨークで観た。あれからもう四半世紀近くが経った。今回の映画は日本では4月に公演される新演出版に踏襲した映画化のようで、オリジナルとは少し違うようだが、そんなことに関係なく一気に観させるスピーディさと面白さを兼ね添えている。

ストーリーはいまさら書くこともないだろうが、元囚人ジャン・バルジャンが情け容赦ない警官ジャベールに執拗に追われるなか、薄幸の女ファンテーヌの娘コゼットの面倒を見ることによって変わっていく、彼の紆余曲折の人生を、学生たちによる革命悲劇と共に描かれている。

それにしても、映画は舞台と違って妙にリアルだ。舞台でのバリケードシーンでは銃声は轟いても血しぶきが派手に飛び交うことはない。一方で、前半は妙に表情のアップシーンが多いことに少し辟易する。そういう意味においては、いろんな点で帯に流し襷に短しは仕方がない。ただ、場面展開はとてもスムーズで観ている者を飽きさせることはなく、上映時間2時間37分という長さを忘れさせてしまう。映像はCGを多用しているが、それでも色彩感覚は優れていて、単なるダークな世界だけではない。また前半はアップを多用したカットも後半になると俯瞰もうまく取り混ぜていい編集になっている。

主演のジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマンは迫真の演技で歌も上手い。一方ジャベール役のラッセル・クロウは歌はさほどではないので賛否両論あると思うが憎々しい役を外連味なく誠実に演じていて好感がもてる。ヒロインともいうべき3人では、薄幸のファンテーヌを演じたアン・ハサウエイの悲哀に満ちた表情は美しく、エポニーヌ役のサマンサ・バークスは歌が非常に上手く、コゼット役のアマンダ・セイフライドも可憐さを十二分に表していた。

この映画を観たことによって4月から帝劇などで順次公演される新演出版の舞台を観にいく人も多いだろう。その意味においては、これほど壮大なプロモーション映画なののかもしれない。ただ、こうした映画を観て、芝居などのライブ会場に足を運ぶことは芸術全般にとっては喜ばしいことである。

公式サイト
http://www.lesmiserables-movie.jp/

0 件のコメント: