東京には“紹介制”や“非公開”のレストランというのがいくつかある。こうしたレストランは住所や電話番号が伏せられているので、紹介してもらわないとなかなか食べに行けなかったりする。世間からすれば閉鎖的と思われるかもしれないが、その店のオーナーやシェフからすれば、お客さんの好みが解っているだけに、それ相応の料理が作れる利点があり、お客さんもそれが楽しみになる。こうしたお店は今後も増える可能性があるのではないだろうか。
先日訪れた「スモー ブローマン Små Blomman」は2月までリッツカールトン東京の「アジュール フォーティーファイブ」のシェフを務めていた山中賢二さんがオープンした“秘密”のお店。場所は隅田川沿いにあるマンションの一室で、眼下には満開の桜並木が広がり、川を航行する遊覧船などを眺められる。そんな素晴らしい光景を間近にしながら、ちょっと贅沢な“スペシャル・ランチ”を頂いた。メニューは下記の通り。
・ホワイトアスパラのポタージュ(写真①)
オマールコンソメ
・ラグードエクルビス(写真②)
ザリガニのラグー
・フォワグラのポワレ(写真③)
スナックパインのキャラメリゼ
パンデピスのプードル、マデラソース
・金沢産カサゴのポワレとオンブルシュバリエ(写真④)
こごみ、かぶ、空豆、プチベール
アニスソース&イカスミトマトソース
・米沢牛サーロインのソテー(写真⑤)
白マイタケ、ホワイトアスパラ、筍、菜の花、ミニ人参2種 バジルソース
・イチゴ、ライムゼストヴァニラアイス
イチゴのスープ
・パヴェショコラ、パートドフリュイ(キウイ・カシス)
・食後のお飲物
1品目はフレンチの代表的な素材のホワイトアスパラ。ポタージュにしてしまうとは「ええ〜、もったいない」と思いながら食べてみると、コンソメや玉ねぎ(?)の甘みなどがマッチした味に微笑んでしまう。2品目はなんとザニガニ!。子供の頃によく釣ったあのアメリカザリガニ(フランス産だが)である。これは見た瞬間に「えっ、これ食べるの?」と思ってしまうが、これが実に美味。泥臭いわけでもなく、ぬるっとしているわけでもなく、エビ+イカといった食感だろうか。一緒に和えてあったアサリの風味も加わり、忘れられない一品になった。トレビア〜ン。
3品目は定番のフォアグラ。フォアグラがもつ脂っこさとスナックパインの強い甘みと香りが混じりあい、クラシック・フレンチがもつ濃厚な味わい。赤ワインにピッタリである。4品目はお魚料理。魚は2種で1つはカサゴ(写真右側野菜の上にのっている)、もう1つはオンブルシュバリエ(岩魚)。カサゴはアニスソース&イカスミトマトソースをつけて楽しみ、オンブルシュバリエはソースをつけずにそのままで、ふんわりした食感を楽しむ。海水魚と淡水魚、それに季節の野菜を一緒に添えるとは自然の恵みに感謝しなければならない一皿である。
ここで小休止。この日のランチは私と友人の2人だけだったので、お店のなか、といってもマンションの一室を散策。キッチンはマンションなどによくあるオープンキッチンでコンロはガスではなくIH。テーブル席は基本的に2つで、これとは別に8人までOKな個室がひとつ。ということで、お客さんは1日3組限りで12人までにしているとのこと。ちなみに料金はランチは6,000円〜、ディナーは15,000円〜(応相談)。定休は月・火。
さて、料理に戻って5品目はお肉料理で米沢牛のサーロイン・ソテー。お肉はA5等牛のさらに上をいくような霜降りで、それをレア目に焼いていただく。写真を見ればわかるようにボリューム感たっぷり。そして、食感はよく言う「溶けていく」という感じではなく、しっかりと味覚を楽しみながら口のなかで「蕩けていく」という感じだろうか。肉料理ではなかなか味わえないテイストだった。そして、デザートは2品。1品目のヴァニラアイスとイチゴのスープは爽やかな感触で、2品目のパートドフリュイは濃縮したお菓子で紅茶やコーヒーにフィットする。
というわけで、ちょっとどころでなく超贅沢な“スペシャル・ランチ”をプライベート感覚(貸切状態でもあったし w)で堪能させていただいた。山中さん、おいしゅうございました。
追記:「スモーブローマン」は今月発売の「婦人画報」(2014年5月号)の「秘密の東京・紹介制、非公開、予約困難・・・東京、秘密のレストラン」に紹介されている。
http://www.hearst.co.jp/brands/fujingaho