昨日(4月30日)は渋谷区文化総合センター大和田で開かれた毎日新聞落語会「渋谷に福来たる 桃月庵白酒芸術選奨新人賞受賞記念的な」を聞いてきた。本題に入る前に芸術選奨新人賞について軽く説明を。
芸術選奨新人賞(大衆芸能部門)はそう簡単に受賞できる賞ではない。2000年以降に演芸関係で受賞した人は下記の通り。
2001年 桂吉朝 『七段目』『百年目』など
2002年 笑福亭鶴笑 パペット落語『不思議の星のアリス』など
2003年 桂文我 『蛸芝居』『盆唄』など
2005年 柳家喬太郎 人情噺『錦の舞衣』など
2008年 林家たい平 『林家たい平独演会』など
2013年 古今亭菊之丞 『第七回 古今亭菊之丞独演会』など
2015年 桂吉弥 『噺家生活20周年記念 桂吉弥独演会』など
2016年 柳家三三 『定例三三独演』など
2017年 土屋伸之、塙宣之 『ナイツ独演会』など
2018年 桃月庵白酒 『桃月庵白酒25周年記念落語会的な』など
これをみればわかるように今世紀に入って東京の演芸関係者で受賞しているのは柳家喬太郎、林家たい平、古今亭菊之丞、柳家三三、ナイツ、桃月庵白酒のたった6人(組)だけなのである。一方、新人賞でなく2000年以降に芸術選奨大臣賞を受賞しているのは古今亭志ん朝、柳家小三治、桂歌丸、立川志の輔、柳家権太楼、柳家さん喬、五街道雲助、春風亭小朝、入船亭扇遊と錚々たるメンバーである。
こうみると、桃月庵白酒の受賞は喜ばしいことではあるが、かなりのプレッシャーになるやもしれない。(笑)
ということで、オープニングトークではそういうプレシャーのかかる話かと思ったら、三遊亭白鳥がいきなり「おれ、去年の芸術祭に参加したんだよ。ある人に絶対獲れるからとそそのかされたら落選よ」と。これには一同「そんなのに参加していたの」「いったい誰にのそそのかされたの」で大盛り上がり。ということで、オープニングトークは予定より10分超過して高座へ。で、演目は下記の通り。
桃月庵白酒 『宗論』
三遊亭白鳥 『黄昏のライバル〜白酒編〜』
〜 仲入り 〜
林家彦いち 『掛け声指南』
桃月庵白酒 『寝床』
1席目は本来は参加予定のはずだった(?)という春風亭一之輔に代わって桃月庵白酒が白鳥師匠曰くやっつけ仕事の『宗論』を。これは大正時代に実業家にして劇作家だった益田太郎冠者が書いた宗教を茶化した噺。本来は15分ぐらいある噺だと思うが、白酒はやっつけ仕事よろしく10分程度で終了。やっつけ仕事ながらも場内は爆笑。とにかく彼は客の反応を掴むのが上手い。
2席目は三遊亭白鳥の桃月庵白酒の20年後を予言する未来話。三遊亭白鳥は三遊亭圓丈門下ということもあり、新作落語の旗手。今回の落語も自作のオリジナルを桃月庵白酒に置き換えて、最後には駕籠かきと雲助(白酒の師匠)をかけたオチも披露。あまりの素晴らしいオチに唖然。拍手もできずごめんなさい。w
3席目は林家彦いちの有名な新作落語。ボクシングのセコンドとして働くタイ人のムァンチャイが言葉の壁を乗り越えるのため、新宿の街頭で日本語を勉強して、再びセコンドに戻るという話。とにかくその言葉遊びが荒唐無稽。彦いちは林家木久扇門下ということもあり、師匠譲りのイヤミのなさがいい。白鳥師匠には悪いが、次の芸術選新人賞は彼かもしれない。w
トリは芸術選奨新人賞受賞の桃月庵白酒。これまでに数多くの「寝床」を聞いてきたが、白酒の「寝床」はケレン味がなく、これまで聞いてきた「寝床」では最高の出来。義太夫好きの商家の旦那であり長屋の大家でもある男と番頭である繁蔵のやりとりがとにかく巧妙。さすが新人賞受賞である。次はぜひとも20年後に師匠ももらっている芸術選奨大臣賞を受賞してもらいたい。w
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