昨日(20日)は赤坂会館6階稽古場で開かれた林家つる子独演会「つる子の赤坂の夜は更けて」を聞きに行ってきた。演目は下記の通り。
林家つる子 「子別れ・おかみさんお徳」
~ 仲入り ~
林家つる子 「子別れ・遊女お島」
来年3月21日より真打昇進が決まった林家つる子。女性落語家としは初めての「◯人抜きの昇進」だそうだ。正直なところ◯人抜きなどどうでもいい。彼女にはすでに真打たる気質と品格、そして実力がある。私が初めて彼女を聞いたのは3年前だったが、その時点で「この人には落語家としての度量と愛嬌があるな」と思わせてくれていた。そして最近は古典落語の名作「芝浜」「紺屋高尾」を女性目線で大胆に描き直して脚光を浴びるようになった。そして、今回は「子別れ」に挑戦である。
「子別れ」は江戸時代の落語家・初代春風亭柳枝の創作らしいが、その後いろいろいろな落語家によって受け継がれ、亀吉が手にする「50銭銀貨」が大金という設定からすると基本的に明治を舞台にしていると思われる。
前半の「おかみさんお徳」版は、主人公であるはずの熊五郎よりおかみさんのお徳視点で話が進められ、普段聞く「子別れ」とはかなり異色。それでも、こちらはあくまでも古典に沿っていて、お徳の心情をクローズアップしたものであった。
仲入り後の「遊女お島」版は明らかにスピオンオフな噺で、「子別れ外伝・お島」とタイトルをつけた方がいいくらいだ。大雑把なストーリーはこんな感じ。品川宿の女郎だったお島が、惚れた熊五郎を追って吉原に移籍。その吉原で熊五郎を見つけたお島は熊五郎に見受けしてもらうが、二人の生活はあっという間に破綻する。そして、お島は再び吉原に戻り、花魁にまで登りつめる。噺の途中には「三枚起請」などの郭噺を絡めて進めたり、華やかなお囃子(井上りち)を入れたりしてまったく飽きさせない。
個人的には20年以上前に制作を担当した芝居のなかで花魁道中をクライマックスに持っていったことがあることから、つる子が誰かに肩貸して傘持ちの男衆(ハチ?)と話しながら花魁道中を披露するところにゾクゾクした。こうした展開は男性落語家は逆立ちしてもできないし、女性ならでは生き様や力強さも表すことはできない。
昨夜の会場には女性客が1〜2割程度しかいなかったが、つる子のこの女性目線の噺はもっともっと女性に聞いてもらいたい。おそらく彼女もそうに思っているに違いない。そして、こうした女性目線の古典を再構築していくことで、新たな古典落語の道が開けていく。更なる林家つる子の活躍が楽しみである。
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