最近よく行く地元にある寿司屋で「お寿司を手で食べる人はどれぐらいいますか」と聞いたところ、「2割か3割、いや、1割か2割かもしれませんねぇ」という答えが返ってきた。
私は寿司を手で食べるのが苦手だ。手がベタつくのが好きでないからだ。同じような理由の人は多いと思う。また、当然のことながら(笑)にぎりを食べる前に、必ずお酒を1杯2杯とやり、刺身(造り)を2〜3品食べるので、どうしても最初に箸を使わざるをえない。その流れからにぎりも箸で食べるようになってしまう。
ちょっと昔「江戸前の寿司は箸を使わないで、手で食べるのが粋なんだ」と言って、刺身まで手で食べた人がいたという。本当かどうかは定かではないが、ありがちな話である。
江戸時代、寿司はもともと屋台で食べられていたもので、その名残は銀座「二葉鮨」の店構えに見ることができる。この時代は屋台には刺身もなければ酒もなく、お客は誰もが手で食べていた。寿司屋でお酒を出すようになったのは大正末期から昭和の初め頃だそうだ。
昭和に入ると、寿司はお店で食べるだけでなく、出前で食べるのも一般的になった。正月など忙しいときは来客は断って、出前だけにしていた店も多かったという。こうした出前に割り箸をつけたことから、手で食べる習慣が薄れていったとも思われる。
回転寿司などで若者が手で食べている姿を見かけることがある。あんな忙しない場所で、ちょと通ぶってもなぁ、と思ってしまう。しかし、これには別の理由もあるようで、ある寿司屋の店主が「箸使いのできないヤツが手で食べているだけですよ」と揶揄していた。なんか主客転倒な食べ方である。
ちなみに、にぎり寿司を手で食べる場合は、親指と中指で握りをはさみ、人さし指でタネを押さえ、そのタネに醤油をつけて食べるのがマナーのようである。また、のり巻きは切り口の下に醤油をつけて食べる。まあ、箸も同じことなのだが・・・。
参考文献:『すし屋の常識・非常識』(著・重金敦之/朝日新書)
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