日曜日, 12月 08, 2013

柳家さん喬一門師弟四人会(夜の部)

昨日(7日)はイイノホールで開かれた「柳家さん喬一門師弟四人会(夜の部)」を聞いてきた。出演者と演目は下記の通り。

林家なな子 『みそ豆』
柳家喬太郎 『首ったけ』
柳亭左龍  『鹿政談』
柳家さん喬 『中村仲蔵』
 〜 仲入り 〜
柳家さん喬 『浮世床』
柳家喬太郎 『聖夜の鐘』
柳家喬之助 『子は鎹(かすがい)』

イイノホールといえば、細長いビルのなかにある古めかしいホールというイメージしかなかったが、行ったらびっくり。いつの間にやらビルは超高層ビルに変貌、そしてホールは超綺麗。ヒェ〜。

柳家さん喬はもはや柳家小三治にも並ばんかなという落語界の大看板であり重鎮。人情噺や廓噺での情景描写は他の追随を許さないほどの実力で、その噺ぶりを聞いていると江戸時代(もしくは明治時代)に誘われているかのようになってしまう。そんな彼の一門会ということで非常に楽しみにしていた。

開口一番の林家なな子は林家正蔵の弟子。林家の軽妙な芸風を受け継いでいるが、落語の方は意外に落ち着いた語り口。女流落語家は以前のように珍しい時代ではないので、もうチヤホヤされることはないだろう。その分しっかり精進していってほしい。

柳家喬太郎は11人いる柳家さん喬の1番弟子。そして、今や押しも押されぬ落語界の人気者。前半の一席目の『首ったけ』では得意の歌で「お〜い、中村くん」を熱唱。で、次に登場する柳亭左龍の本名が「中村」と軽く2番弟子にジャブを放つというか、プレッシャーを与える。それにしても、マクラで何気に言った「NHKとは中野、方南町、高円寺」という言葉には笑った。この反応に喬太郎も「意外に受けますねぇ」とご満悦だった。

柳亭左龍は上方落語の名作『鹿政談』を丁寧に演じきる。特に最後の奉行と役人たちの駆け引きの描写がうまく、師匠譲りの正統派古典落語の王道を楽しませてもらった。彼には底力を感じた。落語協会のプロフィールによると柳家三三と年4回の勉強会をやっているというので、チャンスがあれば是非とも聞きに行ってみようと思う。

前半のトリは柳家さん喬の『中村仲蔵』。「お〜い、中村くん」の歌に始まり、本名が中村である左龍が演じ、今度は中村が演目という中村つながりという粋な計らい。『中村仲蔵』は『仮名手本忠臣蔵』五段目の定九郎を演じて、後に名優となった話であるが、さん喬はこれを鳴り物を入れてたっぷりと演じる。これを聴けただけで来たかいがあった。パチパチパチパチ!

休憩後、最初のお囃子に「鞍馬獅子」が鳴る。「あれ、またさん喬なの?」と思ったら、下手から登場したのはやはりさん喬師匠。あとで解ったのだが、この日は鈴本演芸場でトリを務めることになっていたので、イイノホールでトリを務めると夜8時に上野に間に合わないからであった。ということで、噺の方も『中村仲蔵』とは違ってかなりアッサリで終わり、ちょっと拍子抜け。それにしても、この日のさん喬師匠は、一門会の昼の部で2席、夜の部で2席、そして鈴本で1席と、1日で5席も務める。いくら体力があるとはいえ、年齢的なことを考えれば少しは控えていただきたい。

『聖夜の鐘』は喬太郎の新作落語。ビジネスホテルのボーイとガール(そういう職種になっている)と1人の宿泊客による噺で、この客の正体がある有名な彫師の末裔というオチ。ところで、マクラで話した前日に岩国で飲んだビールをマッコリで割ったという「モッコリ」というのは本当になのだろうか、と思ってネット検索してみたら結構各地の韓国系居酒屋にはメニューとしてあるようである。師匠はマズいと言っていたが、私もいつか試しに飲んでみたい。

最後は諸般の事情で3番弟子の柳家喬之助による『子は鎹(かすがい)』。別れた子供を上手くダシに使って、奥さんと再会して、仲直りするという人情噺。かなりの大ネタではあるが、正直なところ喬之助はうまく役を演じ分けられていない。男(熊五郎)と子供(亀坊)との会話は軽快でいいのだが、奥さん(お光)を加えた3人の親子の会話ではもう少し情感を入れてほしかった。あとつなぎの部分(解説?)で焦ってトチリが少し目立ってしまったのが残念。しかし、素晴らしい人情噺をする師匠がいるのだから、この噺も1〜2年でしっかりとした持ちネタにするのではないだろうか。期待したい。

この日の一門会は昼の部も夜の部も完売。イイノホールは定員が500人だが、そのうち200人は昼夜を聴くという強者だったという。昼夜で7時間もさん喬一門を聞くというのだから、この200人には頭が下がる。強者というより好き者と言わざるをえない。w

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