原作はテレビで『のだめカンタビーレ』が話題になっていたころにすでに読んでいる。ただし、内容はうろ覚えで、解散したオケが風変わりなジイサン指揮者のもとで再結成されるという話ぐらいしか覚えていなかった。で、結論だが、大絶賛はできないものの、観て損はない映画である。なかでも、クラシックに携わっている人およびクラシック好きならば、いろいろな意味で楽しむことができるので、こうした人たちにはオススメである。
演出および映像はこれといって凝ったところはなくいたってオーソドックスだ。撮影もセットはなくすべてオールロケ。主舞台になる練習場は工場跡をそのままうまく利用している。少し脱線するが、演劇の世界では工場跡や倉庫跡に手作りで稽古場を作るのは当たり前。音楽の世界は防音設備があるちゃんとした場所で練習するのが羨ましい、と観ながら思ってしまった。(苦笑)
さて、キャスティングだが、主演の松坂桃李と指揮者の西田敏行は十二分な存在感を出している。松坂はヴァイオリンを1年稽古しただけのことはあって、それなりに様になっている。もっと様になっているのが西田だ。『のだめ』では竹中直人が指揮者役を怪演したが、青年座の先輩である西田の方が圧倒的に指揮者になりきっている。これは指揮指導の佐渡裕の功績によるものなのかもしれないが、西田がもっている音楽センスが半端でないということを感じざるをえなかった。できれば、一度本気で『運命』の第1楽章だけでも何処かのプロオケで振ってもらいたい。その他の出演者では第1ヴァイオリンの大石吾朗とヴィオラの古舘寛治が俊逸だった。特に大石は助演男優賞にノミネートされてもいいぐらいの素晴らしさだった。
ということで、お時間とお金に余裕のある方はぜひともご覧ください。
余談。鑑賞後、映画館を出てエレベーターで地上に降りると、目前に知人の映画監督が。どうやら監督も観に来たようなので「おもしろかったですよ」と答える。あとは監督の近作の話などを聞いて「今度飲みましょう」と言って別れた。事情があって今はおヒマらしいので、今月末か来月にでも一杯ひっかけながらいろいろとお話をしてみたい。
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