ベートーヴェンと女性写譜師アンナとの師弟愛を描いた作品。最初に断っておきますが、これはフィックションでそのような史実はありません。ただ、ベートーヴェンには何人もの写譜師がいたことは事実のようです。
第一楽章
10年ぶりの交響曲第9番合唱付の初演を4日後に控えたベートーヴェン(エド・ハリス)のもとに、写譜師として音楽学校の首席学生であるアンナ(ダイアン・クルーガー)が派遣されてくる。気難しいベートーヴェンは女性であるアンナを最初は蔑視するが、次第にアンナの才能を認めていく。
第二楽章
仕事では傲慢なベートーヴェンだが、唯一の肉親である甥のカールだけは溺愛していた。しかし、カールは偉大な作曲家から愛情が疎ましかったのかバクチ好きになっていた。そして初演の日がやってきた。拍子がとれないベートーヴェンのためにアンナがプロンプターを務める。
第三楽章
第9番合唱付初演の日。会場には大公を初めて数多くの観客が訪れる。指揮台に立つベートーヴェン。アンナはオーケストラに隠れるように奈落からベートーヴェンにサインを送る。静まりかえる会場、そして、合唱付の第4楽章が始まる。スクリーンには歌声、歓声、そして恍惚の表情が交錯していく。
第四楽章
第9の完成後、ベートーヴェンは大フーガ(弦楽四重奏)を作曲するも悪評で、その後に倒れてしまう。そして、その病床でもアンナがベートーヴェンの音楽を聞き取り、口述筆記ならぬ口述写譜していく。そして、ベートーヴェンはその音楽の聞くことなく息をひきとる。
見どころはやはり第9の演奏シーン。ロンドンフィル(?)の演奏に載せて展開される演奏シーンは感動ものです。『のだめカンタービレ』のスタッフはこの演奏シーンを何度も見たんだろうなんて、馬鹿なことを考えてしまった。
さて、映画としての評価ですが、確かに第9のシーンは感動して涙が出てきてしまいました。しかし、変人であるベートーヴェンの描き方がなぜか今一つピンと来ませんでした。エド・ハリスの演技は悪くないのですが、狂気と正気、期待と不安といった相対するものの描き方が稚拙に見えてしまいました。加えて、第9演奏後のベートーヴェンが変人から凡人になってしまっていて、ベートーヴェンの凄みが消えてしまっています。人はやはり死を迎えると丸くなるのだろうか。ベートーヴェンのような変人奇人の偉人はそうであってほしくなかった・・・。
音楽映画としては最高の出来、愛憎映画としては上々の出来、偉人伝物語としては平凡な出来。そんな印象の映画でしたが、見て損はないと思いますので、機会があればご覧になってください。
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