10月中に見に行くつもりでいたのが、ついついノビてしまい、先日(12日)やっと見にいくことができた。
ボストン美術館は世界最大の浮世絵コレクションと言われ、その数は5万点以上はあるという。ただし、そのほとんどがまだ未整理状態とか。私が80年代後半にかの地の美術館を訪れたときも、飾られるている浮世絵は数点ぐらいしかなかった。
今回の展覧会ではそのなかから150点余を、第1章「浮世絵初期の大家たち」、第2章「春信様式の時代」、第3章「錦絵の黄金時代」、第4章「幕末のビッグネームたち」と時代ごとに4つのコーナーにわけて展示している。
第1章の「浮世絵初期の大家たち」
ここではやはり、浮世絵独自がもつ遠近法を屈指した奥村政信の「駿河町越後屋呉服店大浮絵」という現在の三越を描いた作品に目がいく。「浮絵とは、透視図法を用いることで距離感を強調して描いた絵のこと。近景が浮き出しように見えることから、この名称がついた。歌舞伎の劇場や遊郭の座敷、あるいは建物に挟まれた町の通りなど、奥行きが強調しやすい画題が好んで書かれた」という説明も非常にわかりやすい。
第2章「春信様式の時代」
タイトルに入っているように、やはり鈴木春信の絵がずらりと並ぶ。なかでも「雨中美人」「見立浦島」「座鋪八景 ぬり桶の暮雪」「座鋪八景 鏡台の秋月」などの美人画が素晴らしい。そして、今回の図録(上写真:2300円もする)の表紙にもなっている磯田湖龍斎の「雛形若菜の初模様」シリーズの「四つ目屋内 かほる 梅の しげの」や「がくたはらや内 れん山」などの逸品もある。
第3章「錦絵の黄金時代」
ここでは鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽の絵が並ぶが、なかでも歌麿の「蚊帳」の繊細な描写には誰もが溜め息げでるばかりである。写楽ファンには申し訳ないが、歌麿を観てしまうと写楽の役者絵が大胆ではあるが、面白みにかけてしまった。
第4章「幕末のビッグネームたち」
このコーナーは凄い。歌川一門(豊国、国政、国貞、広重、国芳)、葛飾北斎、渓斎英泉の風景画が並ぶ。北斎の「富嶽三十六景 尾州不二見原」(通称「桶屋の富士」)、「山下白雨」の斬新な構図は目を見張るものがある。他にも渓斎英泉の「木曽街道三十一 塩尻嶺 諏訪ノ湖水眺望」、広重の「東海道五十三次」シリーズの「丸子 名物茶店」や「庄野 白雨」、「名所江戸百景」シリーズの「両国花火」や「深川木場」など素晴らしい作品がいっぱいである。しかし、ここで一番見とれてしまったのは歌川豊国の肉筆画「遊女と禿図」。これは素人目に見てだが、国宝・重文クラスの価値があるではないだろうか。これまで江戸時代の肉筆画を見てきたが、これほど素晴らしいものはかつてない。この1点だけはぜひとも日本に返してほしいと思ってしまった。
それにしても、アメリカの美術館というのは昨年のフィラデルフィア美術館展での印象派コレクションといい、今回のボストン美術館の浮世絵展といい、その保存状態が素晴らしい。国賊と言われるかもしれないが、今回の浮世絵展を見ていて、これらの作品がボストンにあったからこそこれだけ状態が良かったのではないかと思えてしまう。まだまだボストン美術館の浮世絵は未整理状態なのだから、今後も知られざる名品や状態の素晴らしい名品が発見されるだろう。ぜひとも、何年か後にパート2を開催してもらいたい。
そして、今回は同時に江戸東京博物館で開催されている特集「錦絵にみる忠臣蔵」も見てきた。こちらはお客さんが少なく、十二分に堪能することができた。私が行った日は掲載第2期(11月24日まで)にあたるために、歌川(安藤)広重の「忠臣蔵」と渓斎英泉の「仮名手本忠臣蔵」などが展示されていた。なかでも広重の「忠臣蔵」は素晴らしい。「大序」から「十段目」で松の廊下から討入り前夜までを描き、「十一段目」では「夜討押寄」「乱入」「本望」「引取」「両国引取」「焼香場」と6枚の絵を描いている。そのどれもが、鮮やかな情景描写で忠臣蔵ファンにはたまらないだろう。
第3期(11月26日〜12月21日)には葛飾北斎の「新板浮絵忠臣蔵」と北尾政美の「浮絵仮名手本忠臣蔵」などが展示される。できれば、こちらも見てみたいと思う。
ボストン美術館 浮世絵名品展(11月30日まで)
http://ukiyoeten.jp/index.html
錦絵にみる忠臣蔵(12月21日まで)
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
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