昨日(9日)は地元・学芸大学の「Cherokee LIVE TAVERN」で開かれた第3回「チェロキー寄席」を聞く。出演は春風亭正太郎。
目黒区は意外なことに落語家が多く住んでいる。その真意というか理由はよく解らないが、古くは桂小金治が住んでいたり、漫才ではあるがコロンビア・トップ(長男は中学の同級生)がいたりと、演芸関係の人は目黒区に多い。と同時に不思議なことに目黒区出身の落語家も多かったりする。柳家小ゑん、柳家小傳次、紙切りの林家正楽。そして、私が注目している春風亭正太郎(二つ目)もその一人である。
正太郎は2006年4月に春風亭正朝に入門。2009年11月に二ツ目になった落語家である。そして、今年に入ってからその実力をどんどん発揮。まず4月に若手落語家の登竜門ともいうべき第14回さがみはら若手落語家選手権で優勝。そして9月には過去に林家たい平、古今亭菊之丞、柳家三三などの優勝者を輩出した北とぴあ若手落語家競演会(第26回)でも優勝と、破竹の勢いである。
まず1席は滑稽噺の「時そば」。マクラは千葉県富里での学校落語で出会った子供たちとの話。そして、そこから本題に入っていく流れがスムーズ。そばを食べる様も巧妙で客席の女性から「おいしいそう」の声も上がる。落語家ならば誰もがやる有名な演目だが、これまで聞いた中でも秀逸な出来で、最後は誰もが爆笑だった。
2席は人情噺の「子は鎹」。これは「子別れ」という上中下の3部作からなる長い落語の「下」部分の話。それゆえに、枕はほとんどなく本題に入り、前振りでは「上」「中」のあらすじを一気に機械的に伝える。そして「下」の本題に入り、息子の亀が登場するとイキイキする。1席の枕で子供たちを演じた時と同じように、正太郎は子供を演じるのが上手い。少し褒めすぎかもしれないが、その上手さは往年の三遊亭金馬や三遊亭圓歌を彷彿させる。
春風亭正太郎の実力はすでに二ツ目ではなく真打と同等であることを立証した2席だった。できれば女を演じるときは滑稽さとは別にほんの少し女の性というものを醸し出して、今後も古典落語の真髄を極めるべく精進してもらいたい。地元のよしみで今後も彼の活躍に注目していこうと思う。