そんななかで、広尾のアニュは一昨年夏は短い期間だったが「キャビアとシャンパーニュ祭」を行い、私と相方を大いに喜ばせてくれた。あれから2年。今夏はブータン産松茸(実に大きい)とオーストラリア産冬の黒トリュフ(南半球はただいま冬)などによる下記の「キノココース」を設けてくれた。
・アミューズ
・新子のタルト
・本しめじ、花びら茸とつぶ貝のセビーチェ
・仔牛のタルタル
・鮎のフリット
・鰻と黒トリュフ 新生姜のアイスを添えて
・鰆とブータンより届く松茸
・バサス牛 ソースペリグー
・みかんの球体
・桃とバジルのデクリネゾン
アミューズはアニュお馴染みの穴の空いた大きな皿に小鉢をおいて楽しむという形式。
1品目は「新子のタルト」。和のテイストのアニュだがまさか新子が出てくるとは驚き。新子はコハダの稚魚であり、7月から8月にだけ食べられる寿司ネタだ。それがタルトの上にマッシュルームに挟まれて出てくる。それを大きく口を開けて一気にいただく。う〜ん、なんだろう、お寿司とお菓子を合わせたようような不思議感。いきなりアニュならではの浮遊感のある味わいだ。
2品目は「本しめじ、花びら茸とつぶ貝のセビーチェ」。セビーチェとはラテン・アメリカでよく食べられる小魚を砕いた料理のことらしいのだが、つぶ貝のコリコリ感、花びら茸のサクサク感が砕いた小魚(?)とちょっと奇妙なアンバランス感を醸し出してくれていて舌を惑わしてくれる。器はシックなオールドバカラ。
3品目は「仔牛のタルタル」。タルタルとは細かく刻んだことを言うのだが、ここでは贅沢にも仔牛、ムール貝、枝豆などを切り刻んでその上に山盛りのトリュフを乗せる。そして、ソースは熟成牛と生ハムと黒文字によるコンソメ。いや〜、手が込んでいるというか。一体何人で作っているのだろうか、それとも一人で何時間かけて作っているのだろうか、と思う一品である。それを私らはじっくりと眺めるものの、食べ始めたらあっという間である。思わず「お代わりが欲しい」と言ってしまった。w
4品目は「鮎のフリット」。以前にも似たような料理を何処かで食べたことがあるが、ソースが夏らしくきゅうり、すいか、アヒアマリージョ(黄色唐辛子)の3種。そして、なんといっても軽く添えられている肝のソースが素晴らしい。魚料理に魚の肝と思う人がいるかもしれないが、魚の肝ほど魚料理に合うものはない。
5品目は「鰻と黒トリュフ」。新子に続いて今度は鰻である。もう日本料理かと思うかもしれないが、最後にテーブルでスライスした香りのある黒トリュフをトッピングしてしっかりフレンチしている。一瞬、鰻に黒トリュフと思わざるをえなかったが、これが新生姜のアイスに絡むと、爽やかにしてメリハリのある香ばしさを味あわせてくれる。
6品目は「鰆とブータンより届く松茸」。鰆(さわら)は字の如く春の魚というイメージがあるが、これは関西での話で、関東では秋の魚である。その脂の乗りかけた鰆と特大のブータン産松茸をサンドウィッチしたような一皿。クリーミーなブールブランソースに西洋ネギの甘さや本わさびの刺激なども混じり合い、いい意味でなんとも不可思議な味。
7品目は「バサス牛 ソースペリグー」。バサス牛はもはや黒毛和牛では滅多にお目にかかれないサシが入っていない赤身の牛肉。外国人は日本に来るとサシがたっぷりのとろける黒毛和牛を喜んで食べるが、一方で我々にとってはこうした赤身が意外に新鮮。マディラ酒とみじん切りしたトリュフで作られるソースペリグーは濃厚さを抑えていて清々しく、赤身の旨味を引き立てくれる。
デザートは「みかんの球体」と「桃とバジルのデクリネゾン」。
ア・ニュは訪れるたびに新鮮な驚きを与えてくれる。シェフ(下野昌平さん)は季節感だけでなく時代感覚を読み取る力が優れている人だなと思う。その感性を活かして変幻自在というかフットワークの良さで創る料理はまさに時代の半歩先を進んでいるのかもしれない。また、スタッフも優しく気楽に対応してくれて、いつもながら丁寧な会話を楽しむことができた。なお、飲み物はキノココースに合わせたワインテイスティングコースを頼み、最後に私は日本酒を、相方はイケメンくんが作ったペルノをベースとしたスペシャルな桃のカクテルをいただいた。私もこれを少しだけご相伴にあずかったがめちゃくちゃに美味しかった。
アニュは料理、サービス、ドリンクとあらゆる面で“ありのままに”(アニュという意味)進化している。次に訪れるのが楽しみである。
ア・ニュルトゥルヴェ・ヴー
http://www.restaurant-anu.com/jp/index.html
0 件のコメント:
コメントを投稿