日曜日, 9月 18, 2022

文春落語 柳家喬太郎の同期会【ひるの部】

一昨日(16日)は渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールで開かれた文春落語 柳家喬太郎の同期会【ひるの部】を聞いてきた。出演者と演目は下記の通り。

柳亭左ん坊  「道具屋」
柳家喬太郎  「擬宝珠」
入船亭扇辰  「麻のれん」
 〜 仲入り 〜
対談(喬太郎・扇辰)
柳家喬太郎  「お若伊之助」

柳家喬太郎、入船亭扇辰(【ひるの部】のゲスト)、林家彦いち(【よるの部】のゲスト)は1989年(平成元年)に落語界に足を踏む入れた同期。それから33年、喬太郎は古典と新作を操る二刀流として、扇辰は古典の王道を歩み、彦いちは新作まっしぐらと、三者三様の落語人生を歩んでいる。

柳家喬太郎は弟子を取らないので、柳家系の落語会に行くと最近は開口一番はいつも柳亭左ん坊。左ん坊は静岡県出身で立命館大学退学後、2018年3月喬太郎の弟弟子である六代目柳亭左龍に入門。2019年7月21日に前座になる。大学では落語研究会に所属したこともあり、滑舌や仕草などの基本はしっかりしている。ただ、前座ということで当然ながら自分の型はまだできていない。今後に期待である。

「擬宝珠」は明治時代に活躍した初代三遊亭圓遊(1850年〜1907年)の作品。この作品は一時期時代の波に埋もれてしまったが、柳家喬太郎が10年以上前に掘り起こし、現在では他の落語家も演じている。噺は塞ぎ込んでいる若旦那を幼馴染みの熊五郎がその悩みを聞きにいくというもので、このあたり出だしは「崇徳院」や「千両みかん」を思わせるが、それがなんと浅草寺の五重塔の擬宝珠を舐めたいという答に熊五郎は驚く。ところがそれを大旦那に伝えると、なんと大旦那も擬宝珠好きだった・・・。つまり、話の内容はフェチというか異常愛についてであるのだが、喬太郎は正常者(熊五郎)と異常者(若旦那)を淡々と対比させて、落ちへと持っていく。その意味において、この演目は演者の気量がかなり問われるような気がする。

「麻のれん」は按摩の杢市に関わる滑稽噺。杢市は腕の良い按摩だが、ちょっとお酒好き。そして大の枝豆好き(私もです)。そんな杢市の麻のれんと蚊帳にまつわる取り留めない話だが、入船亭扇辰は目の見えない杢市がお酒を美味そうに飲み、枝豆を美味しそうに食べる姿を見事に演じ、その後ろに町屋の家の内が見えてくるような錯覚に陥いる。落語が単なる喋るだけの話芸でないことを知らしめてくれた。

「お若伊之助」は三遊亭圓朝の作品。別れたはずのお若と伊之助だったが、いつの間にか再度密会を続けて周囲に悟られる。その結果、伊之助は銃に撃たれるが、そこに残っていたのは狸の死骸。そして、お若は孕っていることがわかる・・・。正直、話の辻褄がよく分からない怪談噺だが、柳家喬太郎は硬軟緩急巧みな言葉を使いながら話を進める。ただ、怪談噺としては「死神」の方が完成度は高いし面白い。喬太郎の演じる「死神」はかなり怖く面白い。



0 件のコメント: