昨日(13日)東京文化会館でのN響東京文化会館6月公演に行ってきました。指揮は今月いっぱでN響音楽監督を退任するウラディーミル・アシュケナージ。チェロは今回が日本初お目見えのデーヴィッド・コーエン。
演目(※はアンコール曲)
デュカス/交響詩『魔法使いの弟子』
チャイコフスキー/ロココ風の主題による変奏曲
※バッハ/無伴奏チョロ組曲 ?
ルーセル/バレエ組曲『バッカスとアリアーヌ』第2番
ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」
今回のお目当てはチャイコフスキーのチェロ変奏曲。ソロは弱冠22歳にしてフィルハーモニー管弦楽団の首席チェリストに就任したデーヴィッド・コーエン(現在は27歳)。そして、アシュケナージによるバレエ組曲『火の鳥』。私はバレエ好きでもあるのですが、バレエ音楽のなかでもこの曲はお気に入りのひとつです。幻惑的というか幻想的でドラマティックだからであろう。
さて、デーヴィッド・コーエンによる『ロココ風の主題による変奏曲』だが、この曲を聴くのはおそらく始めて。ちょっと難解でテクニックがいる感じの作品。童顔で子供っぱいマスクのコーエンはそんな曲を目茶苦茶に甘く奏でる。その甘さはお菓子のような甘さではなく、マンゴーとか果物に入っている糖分のような甘さだ。彼はとにかく素直で、汚れを知らないような純粋な音色を奏でる。そして、これがとにかく甘い。私にはちょっと勘弁したくなるほどだが、もちろんテクニックも凄腕なので、この音色にうっとりしてしまう女性もいるに違いない。今日、ロストロボービッチのような世界をまたにかけるチェリストは少なくなったが、彼にはその素質が少し見え隠れした。今後がちょっと気になる人であった。
さて、休憩時間を挟んでルーセルの『バッカスとアリアーヌ』第2番。この曲は間違いなく始めて聴いた。この『バッカスとアリアーヌ』第2番はバレエ公演(初演は1931年)は成功しなかったのに、音楽の方が残ったという希有な作品とのこと。そして、第1幕を第1番、第2幕を第2番として演奏会用組曲として演奏され続けているそうだ。で、この音楽はめちゃくちゃにいい。詳しい音楽形式はよく解らないが、メロディ、リズム、テンポすべてが洗練されていて、とてもパワフルでエネルギッシュ。正直、バレエ音楽という感じはしない。色彩美豊かな音色がいくつも重なりあう交響曲の様相。始めて聴いたということもあり、ちょっとお得な気分になってしまった。アシュケナージもノリノリで指揮をしていて、最後には指揮台の手すりに寄り掛かり「ああ、楽しかった」というおどけた表情を見せたのが印象的だった。
そして、メインディッシュの『火の鳥』。この曲はオリジナルのバレエ音楽と、3種類の組曲(1911年版、1919年版、1945年版)があり、今回はもっともポピュラーな1919年版の演奏。アシュケナージはこのバレエの名曲を、それこそ炎のように奏でようと試みるが、どうもオケはそれについていけない。というのも、今回の木管と金管メンバーの半分近くがN響メンバーのようでなかっただろうか。それとも前曲の『バッカスとアリアーヌ』でエネルギーを使い果たしてしまったからだろうか。もちろん私が求めている幻想的な音色もどこからも聞えてこない。う〜ん、完全に空回りしている。こうなると、指揮者とオケの関係はミスマッチになって音が噛み合わず分散してしまう。とういうわけで、終演後のアシュケナージの顔は先程と違って「ああ、疲れた」という感じだった。
途中までは気分よく過ごせていたのに、最後の最後で消化不良の演奏会になってしまった。残念。
0 件のコメント:
コメントを投稿