金曜日, 8月 15, 2014

美食日記「アニュ」(広尾)の「キャビアとシャンパーニュ祭」


先日、私のお気に入りレストラン「アニュ」で催された期間限定(8/7〜8/11)の「キャビアとシャンパーニュ祭」へ行ってきた。これは私のちょっと贅沢な“夏休みの自由研究”である。(笑)

さて、世界三大珍味というとフォアグラ、トリュフ、キャビアと言われている。フォアグラはあの濃厚な味が食通を唸らせて美味しいが、ただ私は自分から好んで食べたいというほどの食材ではない。また、トリュフにしても独特の香りがあり美味しいと思うが、残念ながら松茸には適わないと思っている。しかし、キャビアは魚卵系大好きな(食べ過ぎて痛風にならないよう気をつけましょう!)人間にとっては堪らない食材である。

キャビアの主要な産地はカスピ海およびシベリアのアムール川だが、天然キャビアの90%はカスピ海産という。そのために、どうしてもキャビア=ロシアというイメージがある。しかし今回のメニューにはイタリア産、イスラエル産、イラン産(イランはカスピ海に面している)とロシア以外で捕れたキャビアも使われていて、キャビア=ロシアというイメージではないのかもしれない。

ところで、キャビアというと何処の国の料理でもちょっとトッピングされているだけで、「わ〜、凄い、キャビアだ!」と言って驚かされる添え物みたいな可哀想役回りをされてきた。しかし、今回のメニューはキャビア・コースということもあり、もちろんキャビアが主役であり、野菜、肉、魚、お米といった食材と見事なまでに絡み合い、凌ぎ合い、溶け合い、かつて食べたことがない最高にして最強のキャビア料理を堪能した思いであった。

前ふりが長くなったが、メニューは下記の通り。ちなみに、シャンパーニュが不得手な私は自由研究にもかかわらずキャビア・コースにブルゴーニュ・ワインを頼んだ。一方、同行者はソムリエの「普段はグラスで出されることのない豪華ラインナップです」というお薦めで、キャビア+シャンパーニュ・コースというかなり贅沢な自由研究をすることになった。まあ、私もシャンパーニュ克服のために舐める程度は嗜んだが。w

キャビア・コース
・アミューズ
・鮎のコロッケ
・産地直送野菜のサラダ イタリア産バリエキャビアと共にじゃがいものエスプーマ
・しっとりと仕上げた仔牛のキャレ イスラエル産オシェトラキャビアと一緒に
・ブルーオマール、ジロット茸、冬瓜のフリカッセ
・本日の鮮魚(真鯛) モンサンミッシェル産ムール貝のナージュ
・イラン産ベルーガのキャビア丼
・フロマージュ(イタリア産の青カビチーズと味噌漬けチーズ)
・キャビアのタルト
・食後のお飲み物とお菓子

シャンパーニュ・コース
・Krug Brut Grande Cuvée
・Zubrowka(ウォッカ)
・1999 Salon Blanc de Blancs
・Jacques Selosse Initial Brut Blanc de Blancs
・1990 Bruno Paillard Le Mesnil Blanc de Blancs
・王禄「渓」(島根県の純米吟醸酒)

はじめにお通しというか突き出しでアミューズが出される。生で食べられるカボチャの「コリンキー」などが3点。続いてコース料理のトップバッターとして鮎のコロッケがテーブルに登場。盛りつけはどことなく金のシャチホコのように見えるが、三等分された頭部分は揚げたてのパリパリ感を噛みしめ、胴部分は鮎の内蔵とコロッケの絡み合いを味わい、そして尻尾部分はコロッケの風味を楽しむといった趣向になっている。ソースはスイカをベースにしたものでこれがとても美味。鮎とコロッケの共演はアンビリーバブルだ。

 

次に登場したのはキャビアの野菜スティックディップ風。ソースはスペインの有名レストラン「エル・ブジ」(2011年閉店)が作った亜酸化窒素でムース状にするエスプーマ。野菜スティックをエスプーマまたはキャビアと絡めながら食べる。産地直送の野菜の瑞々しさも相まって爽快感と開放感溢れる一品に仕上がっている。

3品目は子牛とキャビアのコラボレーション。子牛の肉質は脂肪が少ないわりには柔らかく、私の大好物。その大好物の上にイスラエル産オシェトラキャビアをのせ、そのつなぎ役というか黒子役としていくつかの小さなリーフが供えられている。味は臭みのない子牛にキャビアの塩味、リーフのもつ薬味が微妙な主張というか凌ぎ合いというか食材反応を起こして、食材たちの力強さを楽しませもらった。

 

4品目はフランス料理の定番のひとつオマール海老。ただ、ここではブルーオマールは主役というより脇役で、ジロット茸のコクのある風味と、冬瓜のさっぱりした味覚に押されてブルーオマールは引き立て役に撤している。たまにはこうした控えめなオマール海老の料理もいい。

5品目は真鯛を鱗と一緒に焼いたもので、鱗と皮のクリスピーな歯ごたえと白身のフワフワ感のコントラストが気持ちよく、煮汁の旨味と香りとも溶け合い二重丸。さほど目立つ味わいではないが滋味(地味ではない)で上品な料理である。

 

そして、この日のメインディッシュともいうべきキャビア丼が登場。イランから取り寄せたというオリジナル缶1.79kg(お値段はいくらするんでしょうね)のベルーガを20g使い、卵で味付けされたご飯と枝豆、コーンなどとかき混ぜながら食べるという丼物。これはある意味究極の卵かけご飯でもあり、夏という季節感を味わうご飯でもあり、西洋(フランス料理)と東洋(日本料理)の架け橋というご飯でもあり、その味わいは果てしなく深く遠い。ここ最近食べた料理のなかでは文句なし一番である。あまりの美味しさに同行者と二人して顔を見合わせてもう笑うしかなかった。

 

残りのチーズ、お菓子に関してはスイーツ音痴なものでいつものように省略。作っていただいた皆さん、申しありません。m(_ _)m

最後に全体の印象を。少し解りにくい表現で申し訳ないが、遊び心のあるミスマッチ感覚なキャビア料理という感じで、私は滅茶苦茶に楽しむことがきた。今後もこうした斬新かつ浮世離れしたというか浮遊感のある料理をどんどん作っていただきたいと思う。それがある限りミシュランが星を幾つ与えようが、アニュは私のなかでは三ツ星レストランである。帰りがけにシェフの下野昌平さんとシェフ・ソムリエの皆月達海さんがお見送りにきてくれたが、そのときに「キャビア丼と鮎のコロッケは定番か季節メニューに入れてください」と自由研究の結論を伝えてきた。w

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