コロナ禍で仕事が減ったり、失業した人は数多くいる。その一方で逆に仕事が増えた人たちもいる。そのひとつが日本人指揮者だ。外国人指揮者の来日が難しくなったことから、東京だけでなく全国各地のオーケストラや合唱団で日本人指揮者が引くてあまたの状態になった。それはある意味、日本人指揮者にとって絶好のチャンスとなったとも言える。
さて、一昨日(15日)行ったN響コンサートではそんな日本人指揮者の活躍を如実に表してくれた。
コンサートはショパンコンクールで2位になった反田恭平が出演することもあって、チケットは早々に売り切れた。で、演目は下記の通り。
ショパン(グラズノフ編)/軍隊ポロネーズ イ長調 作品40-1(管弦楽版)
ショパン(ストラヴィンスキー編)/夜想曲 変イ長調 作品32-2(管弦楽版)
パデレフスキ/ポーランド幻想曲 作品19*
〜 休憩 〜
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」(1910年版)
反田恭平はパデレフスキの難解な曲を見事に演じきったが、その演奏は繊細的なパッションのなかにも抑揚をつけたり、逆にアクティビティある華麗さに変容を入れたりと、音域の広さというか情感の広さを見せつけるような演奏をして、テクニック的な巧さではなくテイスト的な美味さを感じた。それゆえに、私は休憩時間にTwitterに「反田恭平のピアノはミックスサンドより美味い。幕の内弁当よりも美味い」とちょっと意味深なことをツイートした。これはコンサート会場で売られているミックスサンドや劇場で売られている幕の内弁当より美味いという意味で、つまり、反田のピアノはホール内ではどんなものよりも美味いという意味を込めている。
そしたら、そのツイートに終演後に独りだけ「いいね」をつけてくれた人がいた。それはその指揮をしていた原田慶太楼だった。原田慶太楼は冒頭にも書いたようにコロナ禍で引っ張りだこになった指揮者の一人である。ただ、彼は日本人指揮者というよりも、アメリカやロシアを拠点に活動してきたので、他の日本人指揮者とは少し毛色が違う。そして、その指揮ぶりも開放的というかおおらかにして自由奔放というか、オーケストラに制約をかけずに伸び伸びと演奏してもらうスタイルで、これまでの日本人指揮者が求めがちな緻密さとか和音を追い求めるという感じではなかった。それゆえに、終演後の電車のなかで「原田慶太楼のオーケストレーションにはこれまでの日本人指揮者にはない華やかさと鮮やかさがある」とツイートしたら、これまた彼および何人かに「いいね」をされた。
今年初のコンサートで反田恭平と原田慶太楼という今後間違いなく世界で活躍する若い2人の才能に出会えたのは嬉しい限りであった。
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