水曜日, 5月 11, 2022

新版三人集@日本橋社会教育会館(一蔵、市弥、小辰出演)

昨日(10日)は日本橋社会教育会館で行われた春風亭一蔵、柳亭市弥、入船亭小辰による「新版三人集」を聞きに行った。

最初はトークから始まるのだが、ところが3人が登場するやいなや客席から「一蔵さん、痩せたねえ〜」のちょっと古びた黄色い声が。これには3人が「お客さんからトークが始まるは初めて」と。で、その一蔵は蝶花楼桃花の襲名興行での番頭仕事、自分の真打披露興行への準備、加えて九州での公演と大忙しでなんと12kgも体重が減ったとのこと。これには市弥、小辰だけでなくお客さんも納得。まあ、そんな大忙しいのに、彼のブログを見るとしっかり競艇はやっているようなので、まだまだ体力はありそうである。(笑)

ということで、出演者と演目は下記の通り。

入船亭辰ぢろ 「道具屋」
春風亭一蔵  「小言幸兵衛」
柳亭市弥   「あくび指南」
 〜 仲入り 〜
入船亭小辰  「木乃伊取り」

前座の入船亭辰ぢろは入船亭扇辰の三番弟子。「道具屋」は与太郎が伯父に変わって道具屋をやるというお馴染みの噺だが、辰ぢろは無難に話をすすめるが、なんか思い入れを感じない。噺の好き嫌いはあるかもしれないが、もう少し感情を込めてほしかった。

春風亭一蔵のマクラは弟子入りのときの裏話ゆえに割愛。「小言幸兵衛」は大家の幸兵衛が空いた部屋に入りたいという男たちを見定めながら、妄想をかき立てるというお噺。12kg痩せたとはいえ一蔵には既に噺家としての風格風情が備わっている。加えて剛腕な引きというか、観客を手繰り寄せる力技も身につけている。そして、春風亭一朝一門ということもあり、品位を落とすことはしない。豪放磊落のように見えて、これだけ痩せるのだから本当は胆大心小の人なのだろう。将来が本当に楽しみだ。

柳亭市弥のマクラは名古屋の大須演芸場で会った漫才のダイノジや曲芸独楽の柳家三亀司師匠の話。「あくび指南」は熊五郎があくび指南所に行くという噺。この噺、話の内容はシンプルなのだが、演じるのは難しいので聞ける機会は意外に少ない。そんな噺を意外にもといっては失礼だが、さほど器用でない柳亭市弥がちょっと粗忽ながらも展開していく。しかし、この開き直った馬鹿馬鹿しさが次第に全開になり、話を盛り上げる。そして、色気も加えて噺に広がりをもみせる。なんか市弥の新たな一面をみた思いだった。

入船亭小辰はマクラもそこそこに本題へ。「木乃伊取り」は田所町に住む大店の若旦那が吉原の角海老に5日間も入り浸りなり、弱った大旦那は番頭の佐兵衛が迎えに行かせるが帰ってこない。続いて鳶職の頭が迎えにいくが帰ってこない。最後は飯炊きの清蔵が行くがこれまた木乃伊取りになるという噺。小辰は二ツ目のなかでは抜群の実力の持ち主。ただ、感情の出し方が醒めているのが少し難があるが、この噺では顔を真っ赤にしながらの大熱演。これならば、大名跡入船亭扇橋をしっかり継いでいくに違いない。

最後に、この日配られたパンフには主宰(オフィスエムズの加藤さん)の3人の寸評・苦言と今後への期待などが書かれていた。ある落語家が「加藤さんほど落語を愛していて落語家を知っている人はいない」と言っていたが、その加藤さんに可愛がられている3人は幸せ者である。



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