木曜日, 5月 12, 2022

皐月恒例 さん喬十八番集成(さん喬選三夜の一夜)

昨日(11日)は日本橋劇場で開かれた「さん喬十八番集成・さん喬選三夜」の一夜目を聞きに行ってきた。出演者と演目は下記の通り。

柳亭左ん坊  「やかん」
柳家さん喬  「千両みかん」
柳家さん喬  「寝床」
 〜 仲入り 〜
柳家さん喬  「唐茄子屋政談」

前座の柳亭左ん坊は柳亭左龍の弟子(=柳家さん喬の孫弟子)。私はさん喬を聞く機会が多いので前座は左ん坊が務めることが多い。これまで彼のいくつかの演目を聞いたが、当然ながら演目によって出来不出来は変わる。今回の「やかん」は残念ながら彼にはマッチしているように思えなかった。

柳家さん喬の1席目のマクラは師匠(5代目柳家小さん)と食べた美味しいものの話。19歳で福岡の料亭で食べた焼き松茸はさほどではなかったが、東京の有名店で食べた鰻は今でも忘れらないと。師匠と食べたからから美味しかったのだろうと師匠愛。その鰻から土用の丑の日の時期なのにみかんを食べたいという「千両みかん」へ。1席目ということもあるのかもしれないが、さん喬は情景描写などは控えるも、みかんを求めて走り回る番頭やそのみかんを食べる若旦那の心理描写は憎いばかり。まさに甘酢っぱい語りだった。

2席目のマクラは大師匠である黒門町(桂文楽)の話。師匠は義太夫好きだったとか。ということで、噺は「寝床」へ。私が最も聞いている落語家はさん喬であり、おそらくもっとも聞いている落語の演目は「寝床」だと思うが、さん喬の「寝床」を聞くのは実は初めて。これまで聞いた「寝床」との大きな違いは他の落語家では義太夫部分は適当に唸るだけだが、さん喬はちゃんとひと節ふた節入れる。この節を入れたことによって、ざわつく大店内の情景が浮かびあがる。鮮やかである。

3席目はマクラもそこそこに「唐辛子屋政談」へ。先日鈴本演芸場で春風亭一之輔の熱演を聞いたばかりだが、柳家さん喬の「唐辛子屋政談」はひと味もふた味も違う。一之輔師匠には悪いが、さん喬が江戸噺をすると後ろにある屏風に江戸の街並みや長屋の様がシルエットのように映るかのようだ。加えて、勘当された若旦那の心理描写の浮き沈みも見事に描く。感動と感服の一席だった。

最後にさん喬師匠は自身の企画で10月31日(月)に深川江戸資料館でお囃子衆8人を集めた催しをするとのこと。普段は舞台の袖(下座)にいるお姐さんたちに何をさせるのだろうか。本人はまだ何も考えていませんと言っていたが、ちょっと楽しみである。



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