金曜日, 7月 29, 2022

春風亭柳枝・一蔵 二人会 〜オレ達の古典工場〜@ゆにおん食堂

昨日(28日)は六本木にあるゆにおん食堂で開かれた「春風亭柳枝 ・一蔵 二人会 〜オレ達の古典工場〜」を聞きに行ってきた。出演者と演目は下記の通り。

柳枝・一蔵  トーク
春風亭一蔵  「猫の皿」
春風亭柳枝  「千両みかん」
 〜 仲入り 〜
春風亭柳枝  「小言念仏」
春風亭一蔵  「寝床」 

トークの冒頭で、春風亭一蔵の提案で春風亭柳枝が「工場長」、一蔵が「日雇労働者」ということになった「オレ達の古典工場」。キャラクター的には写真にあるように「カピバラ」と「ボートレース」だ。ただ、私的には「目黒のおぼっちゃまと練馬の元ヤン」、落語的には「柿の木坂の若旦那と田柄の八五郎」という感じの2人ではないだろうか。で、トークの内容はほとんどが甲子園球場での野球観戦と柳亭市弥の酔っ払い話。市弥はさぞかし何処かでくしゃみをしていたに違いない。

一蔵のマクラは「なんでも鑑定団」の裏話。で、本題は「猫の皿」へ。旅先の茶店で猫に餌をあげる皿は高値のものと悟る男。それを手に入れようと、猫を買いましょうというが、結局は見破られるというお噺。一蔵にしてはちょっと淡白な噺でやや物足りない。やはり彼には汗をかきながらの噺が似合う。

柳枝のマクラも「なんでも鑑定団」の裏話。で、こちらは「千両みかん」へ。夏なのにみかんを食べたいという若旦那のために、みかんを求めて江戸を奔走する番頭。最後は3粒のみかんを持って失踪するという滑稽噺というより風刺噺。この噺、柳家さん喬師匠のようにサラッと演じる人と、亡くなった柳家喜多八師匠のようにじっくりと演じる人に別れる。柳枝は喜多八師匠に習ったようで、かなりタメを作って演じる。最初はこの噺は彼には合わないかもと思っていたが、番頭がみかん問屋であたふたするあたりから、好感触を得るようになる。極めてもらいたい。

柳枝の「小言念仏」は初めて聞いたと思う。「ナムアミダブッ」とお経(念仏)を読みながら、小言を言い続ける男の噺。「千両みかん」をじっくり演じたせいか、こちらはあっさりと。

一蔵の「寝床」は古典落語を逸脱したいや脱線したコテンパンの古典。(笑)義太夫好きの旦那と番頭の繁蔵のやりとりはもう型破り。「草間の倅は?」が出てきた時には吹き出した。草間とは入船亭小辰の本名。「小杉(柳枝の本名)の倅?」と言えばもっとおかしかったのだが。w 一蔵という人には破天荒な精神が宿っている。それは彼の愛嬌であり持ち味でもある。その意味において、古典を自分なりに崩して再構築するのを得意にするべきだと思う。今後も古典落語の破天荒な再生工場の日雇い労働者であってもらいたい。



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