火曜日, 10月 11, 2022

入船亭小辰改め十代目入船亭扇橋真打昇進襲名披露興行@新宿末廣亭

昨日(10日)は新宿末廣亭で行われている10月上席・夜の部(10日目)を聞いてきた。今回の上席は落語協会の新真打3人の真打昇進襲名披露興行。この日は入船亭扇辰門下の入船亭小辰改め十代目入船亭扇橋の真打昇進襲名披露が行われた。これで3人(一蔵、小燕枝、扇橋)の披露興行を順番通りにすべて見たことになる。

この日は末廣亭の千秋楽ということもあり、また休日ということもあり、若いお客さんが多く詰めかけ、2階席を開放するまでの大入り満員。出演者と演目は下記の通り。

入船亭辰ぢろ 「子ほめ」
三遊亭伊織  「花色木綿」
すず風にゃん子・金魚(漫才)
柳亭小燕枝  「短命」
五明樓玉の輔 「    」
松旭斉美智 美登(奇術)
三遊亭歌る多 「宗論」
入船亭扇遊  「蜘蛛駕籠」
翁家社中(大神楽)
柳亭市馬   「雛鍔」

 〜 仲入り 〜

真打昇進襲名口上

米粒写経(漫才 トレンディドラマの話)
春風亭一蔵  「幇間腹」
入船亭扇辰  「権兵衛狸」
林家正楽   (紙切り)
入船亭扇橋  「大工調べ」

真打口上は客席から見て左の下手側から司会の五明楼玉の輔、前日に還暦を迎えた三遊亭歌る多、主役の十代目入船亭扇橋、師匠の入船亭扇辰、入船亭扇遊、落語協会会長・柳亭市馬という顔ぶれ。口上なので誰もが扇橋の門出を祝う言葉だが、なかでも先代入船亭扇橋の惣領弟子である入船亭扇遊の口上に心を打たれる。あくまでも推測だが、扇遊師匠は先代から十代目はお前らが決めろと言われていたのではないだろうか。本来ならば扇遊師匠が十代目を継いでもおかしくはないのだが、それは「先代は39歳で扇橋を、小辰は38歳で受け継ぐ」という言葉に表れているように、名跡を大きくしてもらいたいがために若い世代に託したのはではないだろうか。最後の三本締めは市馬師匠の音頭で盛大に行われる。

新真打・入船亭扇橋は豊島区生まれ。実家は北大塚にある升民酒店。トリを勤める時に後ろ幕はその実家から贈られものだった。新真打は日大芸術学部落研を経て、2008年(平成20年)2月に入船亭扇辰に入門。私が彼を初めて聞いたのは今から6〜7年前。当時は上手なのだが妙にこじんまりとした話し方で、扇橋を継ぐ器量も技量も持ち合わせていなかった。ところが、この2〜3年で何処となく引き篭もっていた殻を破り、落ち着きながらもところどころに粗忽な味わいを出す落語家になってきた。この日は「大工調べ」を通しで演じ、前半では粗忽者の大工と棟梁の馬鹿馬鹿しい掛け合いを、後半は奉行と大家と棟梁の3人の微妙なやりとりをしっかり話し分け、噺に膨らみをもたせる。これだけの技量を見せてくれたので、観客は誰もが彼が大名跡を受け継ぐのに納得したに違いない。今後の活躍が楽しみである。



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