木曜日, 10月 16, 2008

『埴生の宿』は心に残る歌

BSハイビジョンで再放送されている『純情きらり』を録画して見ている。2年前の放送のときは4:3のテレビ画面で見ていたが、今回は16:9のハイビジョン対応画面で見ているので、内容は解っていながらも少し新鮮な気分である。

その『純情きらり』の第1週では主人公の桜子が亡くなった母を慕う音楽として、『埴生の宿』が効果的に使われている。この歌は小学校の音楽唱歌になっていたり、「日本の歌百選」に選ばれていたり、数多くの映画やドラマで印象的に使われ、日本人にはとても馴染み深い歌である。しかし、この歌はご存知の方も多いと思うが原題は『Home, Sweet Home』といい、日本の歌ではない。

『埴生の宿』は1823年にイギリスで初演されたオペラ『ミラノの乙女』のなかの挿入歌で、作詞はアメリカ人のジョン・ハワード・ペイン、作曲はイギリス人のヘンリー・ローリー・ビショップ。日本では明治時代に里見義(ただし)の訳詞よって紹介されたという。

里見義は1824年(文政7年)福岡県豊津町生まれ。小倉藩藩校の流れをくむ旧制豊津中学(現福岡県立育徳館高校)の校長をした後、1881年(明治14年)に文部省の音楽取調掛御になり、おそらくここに在任中に『Home, Sweet Home』を知るようになり、それを自ら訳詞したと思われる。そして、1889年(明治22年)12月22日発行の『中等唱歌集』に納められている。しかし、残念ながら里見はそれ以前の1886年(明治19年)8月12日に亡くなっている。

先にも書いたように『埴生の宿』は映画、ドラマなどで度々印象的な音楽として使われている。もっとも有名なのが1956年に市川崑が監督した映画『ビルマの竪琴』だろう。そして、最近では1988年にスタジオ・ジブリが製作したアニメ映画『火垂るの墓』(原作:野坂昭如)であろう。しかし、私にとっては昭和30年代に放送された少年向けテレビドラマ『ナショナル・キッド』の「謎の宇宙少年シリーズ」のなかで、宇宙少年が故郷の星を思うときに歌っているシーンが今でも瞼に残っている。

※「埴生の宿」とは「埴輪」という言葉からも連想できるように、土で造った粗末な家のことを言う。

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