一昨日(20日)は内幸町ホールで開かれた「歳末感謝祭正太郎百貨店」(夜の部)へ行ってきた。座席は1席開けた市松模様のソーシャル・ディスタンス。演目は下記の通り。
入船亭扇ぽう 「一目上り」
春風亭正太郎 「星野屋」
柳亭市馬 「掛取三波」
〜 仲入り 〜
市馬・正太郎 対談
春風亭正太郎 「子別れ(下)」
開口一番の入船亭扇ぽうは入船亭扇遊の弟子。坊主頭にオデコという愛嬌のある顔立ち。しかし、落語はさすがに入船亭一門ということだけあって正統派。話し方も滑舌も所作もすべてしっかりしていて驚き。顔立ちが幼いのがちょっと損しているかもしれないが、そんなことは気にせずじっくりと王道を歩んでもらいたい。将来が楽しみ。
「星野屋」は星野屋平蔵が馴染みの女・お花と心中をしようとするものの、先に川に飛び込んだ平蔵を見たお花はためらって止めてしまう。しかし、これは平蔵がお花を試すものだった・・・。典型的な滑稽噺だが、正太郎はこれを少し人情噺風にも聞かせる。もっと爆笑噺してもいいような気もした。
「掛取三波」は市馬が得意としている「掛取万歳」の三波春夫バージョン。おそらく今年になって作ったであろう改訂新作版。「掛取万歳」は大晦日に大家を初めとした掛け取りを駄洒落で乗り切ろうとする長屋住いの八五郎夫婦の駄洒落噺だが、市馬師匠にかかるとこれが駄洒落だけでなく、歌舞伎芝居、歌謡曲と変幻自在。ノドに自信のある師匠だが、最後は三波春夫の名曲を何曲も歌い無双状態。その様は師匠が落語を楽しんでいると共に、正太郎の真打昇進を祝う餞(はなむけ)をしているようだった。落語協会会長、ただ者ではない。
仲入り後の対談は市馬師匠の高校時代の泣けるような剣道部のいい話。それを返すかのような師匠柳家小さんのいい話。落語は小さん師匠から習ったのは1つだけで、多くは兄弟子の入船亭扇橋師匠に習ったと。また同じ兄弟子の立川談志が池袋演芸場に来ない話や立川流一門会に登場したりと、面白い話が盛り沢山。市馬師匠、歌だけでなく師匠たちのモノマネも大変上手い。
正太郎の「子別れ」はすでに2回聞いているが、今回は明らかに進化していた。つかみも泣きどころも登場人物の演じ分けもすべて手の内に入れていた。春風亭正太郎は来年には春風亭柳枝を襲名するが、是非とも「子別れ」ならこの人、人情噺ならこの人と言われるような落語家になってもらいたい。
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