月曜日, 7月 01, 2013

美食日記「アムール」(西麻布・広尾)

高級レストランや日本料理店は日曜日か水曜日が休みのところが多い。日曜はやはり夜に外食を控える人が多いからだろう。水曜に休みが多い理由は、築地市場が日曜とは別に月に2回ほど水曜に休むからであろう。そのために、魚を使う日本料理店やイタリアンは水曜休みのところが多い。ということで、水曜に美味しい食事をしたいと思うとどうしてもフレンチになってしまう。

少し前置きが長かった。

さて、今回訪れた「アムール」は銀座にあるイタリアン「アロマフレスカ」や中野「カッフェ・アロマティカ」の姉妹店にあたり、イタリアン料理店グループが初めてオープンしたフランス料理店。場所は西麻布のレストランが並ぶ通りから路地を入った一軒家で、1階およびテラスはカジュアルな「ビストロ・ボーテ Bistro Beaute」というお店になっていて、その2階にある。

ダイニングルームは意外に広いこともあるせいか、少し天井が低く感じがしたりするものの、テーブルの配置がとてもゆったりしていて、隣席を気にすることなど全くなく、リラックスして食事を楽しむことができる。装飾もいわゆるグランメゾン系の華美さはなく、白を基調としたシンプルさで清潔感を醸し出している。

この日のメニューは下記の「旬のお任せコース」。

・幕開け とうもろこし(写真右上)
     アイナメ(写真右上)
     帆立貝
     稚鮎
・日の出 フォアグラ=トマト
・紫陽花 エゾ鮑=野生アスパラ(写真左下)
・花火  鱧=夏大根
・水無月 シャラン鴨=万願寺とうがらし(写真右下)
・新緑  メロン=新茶
・楽園  マンゴー=パッションフルーツ
・余韻  プティケーキ各種 & 飲み物

実は「幕開け」の前に「アミューズ」(生ハム入り揚げパンとトマトのチップスを黒胡麻で食べる)があり、また、この日は余韻のあとにちょっとアニバーサリーのスイーツもあり、トータルで13品のフルコース。それをなんと4時間余りかけて堪能させてもらう。

「幕開け」の4品はどれも日本料理のような味わい。「泡」を飲みながら友人と2人で「日本酒が飲みたくなるねえ」と異口同音。その後の「日の出」「紫陽花」でフレンチを味わうものの、また「花火」で日本料理に戻り、口の中がフランスへ行ったり、日本に戻ったりと忙しい。それでも、一品一品の完成度は緻密にして精妙で、舌を十二分に満喫させてくれる。なかでも「紫陽花」のエゾ鮑の柔らかさと“緑色のつくし”とも言われるアスパラソバージュのコンビネーションは、口に料理を含ませながらも♪ウン、ウン、ウン〜と口づさんでしまう。(^_^)

メインディッシュはシャラン産鴨のスチーム料理。皮はパリパリ中はジューシーという逸品。万願寺とうがらしにはスライスされたアーモンドなども乗っていて、これが鴨の赤身の味をふんわりと和らげてくれてこちらも美味。肉好きには堪らない一品。ああ、また食べたい。

食後に、私は珈琲(ブルーマウンテン)をお願いしたのだが、友人の頼んだダージリン・ティーが特筆もの。これは富山にあるグレイスピースという会社が、良質なダージリンの茶葉を輸入して、それを立山連峰の天然水で独自に二次発酵させたというシロモノ。見た目はかなり薄いが、口当たりはまろやかで味には爽やかな香りとフルーティな甘みがあり、鼻腔には軽やかな香りが残る。こんな紅茶は初めてで、私も珈琲でなくこちらを頼めばと思わざるをえなかった。

シェフの後藤祐輔さんは弱冠34歳。フランスの星付きレストランで修行後、宇都宮の「オトワレストラン」、白金の「カンテサンス」、乃木坂にあった「エキュレ」のシェフを経て、「アムール」のシェフに就任。和のテイストを大切にしているというか、旬の素材を大切にしている、なんというか新感覚な料理人。日本料理とフランス料理の基本をしっかり把握しつつ、和洋折衷の味覚で新たなる料理を創造しようと挑戦している感じ。こうしたお店はクラシックなフレンチ・ファンには敬遠されるかもしれないが、日本料理、イタリアンなど幅広い料理が好きな人には好まれるに違いない。開店してまだ1年余だが、モダン・フレンチをリードしていく可能性を十二分に秘めているお店である。

アムール
http://maison510.jp/

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