日曜日, 3月 13, 2022

第2回柳枝百貨店@日本橋社会教育会館

昨日(12日)は日本橋社会教育会館で開かれた「第2回柳枝百貨店」を聞きに行ってきた。演目は下記の通り。

春風亭いっ休 「饅頭怖い」
春風亭柳枝  「権助魚」
春風亭柳枝  「雛鍔」
 〜 仲入り 〜
春風亭柳枝  「業平文治(前半)」(ネタ下ろし)

開口一番、前座の春風亭いっ休は春風亭一之輔の三番弟子。頭がスキンヘッドなのでどうしてもお坊さんに見えてしまうが、彼の語り口は説教をする坊主というより、頭に手拭いを乗せたら江戸時代の読売(=瓦版売り)のような潔さ、キレの良さがある。そして、師匠である一之輔が持つようなアンニュイ感などはまったくない。これが良いのか悪いのかは分からないが、できればこのまま大師匠である春風亭一朝のようなキップのいい噺家になってもらいたい

「前半は後半の噺(業平文治)が地味で面白いくないので、笑ってください」ということで「権助魚」と「雛鍔」をかけるが、面白かったのはマクラで話したアンコの話と池袋カラオケ館での話。特にカラオケ館のネタは、三遊亭白鳥師匠だったら、間違いなく新作落語にしているだろう。w

そして、後半はメインイベントの「業平文治」。昨今「文七元結」「鰍沢」「牡丹燈篭」など明治の偉人・三遊亭圓朝の作品は数多く演じられているが、なぜか「業平文治」をかける噺家はほとんどいない。この噺、5つのエピソードでできているようで、真打になってまだ1年の春風亭柳枝は今回は第1話「本所中之郷杉の湯」と第2話「天神の雪女郎」をかける。

業平文治(本名は波島文治郎)は男前にしてウブな男。しかし、剣は真影流の達人、加えて力は七人力というバカ力の持ち主。そんな業平文治が「本所中之郷杉の湯」では強請りタカりを生業とする夫婦(まかなの国蔵と浮草のお波)を改心させ、「天神の雪女郎」では目の治療中の小野庄左衛門を罠にかけてその娘お町を妾にしようとする大伴蟠竜軒の悪だくみを阻止する。

観客のほとんどが初めて聞くという噺のために、プログラムには登場人物の説明と人物関係図が挟まれていた。ただ、こうした配慮に関係なく、春風亭柳枝は噺を見事なまでに分かりやすく交通整理して演じていく。江戸時代の背景描写こそ余りないが、噛み砕いた地語りを多く入れて、お客さんに丁寧に噺を進めていく。柳枝のこうした手法は同年代の落語家に比べて実にうまい。そして、今回の噺は登場人物が多いにも拘らず、それらの人物に味わいをつけて演じ分ける。この噺、長いので寄席ではかけることができないかもしれないが、地方での独演会などでかけていけば熟成していくに違いない。

ということで、次回6月30日の第3話「柳橋芸者お村」以降の話が楽しみである。





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