火曜日, 7月 17, 2007

オーストラリア・バレエ団 白鳥の湖

ちょっと変わった『白鳥の湖』であった。オデットをダイアナ妃、ジークフリートをチャールズ皇太子、ロットバルトをカミラ夫人に置き換えて構成されている。人によっては斬新と受け取られるかもしれないが、このような設定変更はシェイクスピア劇や歌舞伎の名作の現代演劇化した芝居を数え切れないほど観ているので、私にとっては新鮮味はあまり感じられない。

第一幕はオデットとジークフリートの結婚式。これが全く面白くない。男性陣の衣装が軍人の礼服や軍服ばかり、女性陣もロングドレスばかり。衣装がバレエ本来の身体表現を消している。構成も振付もバレエがもつ肉体表現を完全に無視して、演劇に走り過ぎで、明らかにバレエの領域を逸脱しすぎ。まるで三文オペラのような有様だった。モダンでありたいのはわかるが・・・。

第二幕はサナトリウムに収容されたオデットが見る夢の世界。これが俄然おもしろい。盆を斜めにしたような舞台装置がシンプルでいい。そして、この幕では白鳥たちの踊りが続く。その踊りには精密さはないにしろ、非常に大らかで優美。やっぱりバレエはこうではなくてはと思わされる。

第三幕はオデットとロットバルトがジークフリートを奪いあう舞踏会。ここでやっと第一幕の演劇性と第二幕のバレエ本来の舞踊の面白みが融合する。しかし、男性陣の衣装はタキシード姿で最終的に一度も男性陣の身体性をいかさない。これにはがっかりのお客さんもいるのではないだろうか。この舞台では男性陣はまるで刺し身のツマでしかないようだ。エンディングは結局、オデットは亡くなりジークフリートは悲嘆にくれるという悲劇で幕を閉じる。

出演者のなかでは、オデットよりジークフリートを演じたルシンダ・ダンが群を抜いて上手かった。しかし、もっとも目をひいたのは指揮者のニコレット・フレイヨン。第一幕はあまり鳴っていなかったオケ(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)を、第二幕以降は完全に自分の掌中にいれて、踊り手たちを見事に援護射撃していた。第二幕以降の盛り上がりは彼女の力によるところが大きい。もう一人、目をひいたのが第一幕では第一王女を、第二幕では二羽の白鳥の一羽を、第三幕ではイブニングドレスの女性を踊ったゲイリーン・カンマーフィールド。実は私は帰るまでプログラムを買わなかったが、彼女と指揮者を知りたいがために2000円もするプログラムを買ってしまった。次回はぜひとも彼女のように若くて魅力的なダンサーによるオデットを見せてもらたい。

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