木曜日, 12月 19, 2019

春風亭正太郎百貨店 赤坂支店 歳末大感謝祭五夜の第三夜

昨日(18日)は昨年に続き「春風亭正太郎百貨店 歳末大感謝祭五夜」の第三夜を聞きに行く。限定60席の会場は満員。演目は下記の通り。

春風亭いっ休  「牛ほめ」
春風亭正太郎  「七段目」
五街道雲助   「お見立て」
  〜 仲入り 〜
雲助・正太郎   対談
春風亭正太郎  「鼠穴」

開口一番の前座・春風亭いっ休は春風亭一之輔の弟子。頭が完全にスキンヘッドでまるで若い修行僧のような雰囲気。あとで春風亭正太郎が「彼は京都大学出身ですからね」と。どういう経緯で京大生が落語家(それも東京の)になったのかは知らないが「牛ほめ」を卒なく好演。

正太郎の「七段目」を聞くのは2回目。芝居好きの若旦那と小僧の定吉が忠臣蔵の『七段目・祇園一力の場』を演じるという滑稽噺。正太郎は日頃から多くの芝居を観ていて(私と同じようにクラシック音楽ファンでもある)、台詞回しや見得を切る仕草は下手な役者より上手い。加えて、定吉が演じるお軽の仕草も巧妙。すっかり手の内に入れた噺ぶり。お囃子も入ってなんとも贅沢な一席だった。

この日のゲストは五街道雲助。江戸落語の流れを継承する名人。大きなホールでの落語会では何度も聞いているが、マイクなしの空間で噺を聞くのは初めて。「お見立て」は吉原に通う杢兵衛が花魁の悪さに翻弄され、最後は生きている花魁の墓参りをしてしまう廓噺。その話ぶりはさすが江戸っ子というべきか、いなせで小気味よく聞いていて気持ちが良い。

対談では五街道雲助が71年ずっと同じ場所に住んでいるとか、弟子になれなかった柳家小さんの弟子たちに寿司を食われた話や、金原亭馬生に入門してからはその父である昭和の大名人・古今亭志ん生に落語を教わったりという話などを数多く披露。これには正太郎だけでなく観客もみんな興味津々。そして、三人の弟子(桃月庵白酒、隅田川馬石、蜃気楼龍玉)が私の良いところをそれぞれ持っていってくれて嬉しいと。もはや名人ではなく名伯楽でもある。

「鼠穴」は志ん生と並ぶ昭和の大名人・三遊亭圓生が構成した大ネタ。正太郎はおそらくこのネタに対する思い込みが大きかったのだろう。それゆえに、その意気込みがありすぎて少し粗も目立ち先走り感があった。大ネタなのだからもっとじっくり演じても良かったのかも。それでも金を貸した兄と三文しか借りれなかったが大成した弟との絆は上手く演じきっていた。昨今ではこの大ネタを演じる若手落語家は多いが背伸び感は否めない。正太郎が真打になったときに再度「鼠穴」を聞いてみたい。

最後に余談だが、正太郎が描く師匠方の似顔絵はめちゃくちゃに上手い。いつの日か(真打披露のとき?)にはこれまで描いた絵を全部披露してもらいたい。


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