一昨日(20日)は新宿末広亭で開かれていた11月中席・夜の部(千秋楽)を聞いてきた。客席は東京で感染者が2日続けて500人超えしたせいもあり、勝手にソーシャルディスタンスのかなり寂しい状態。なんか20年前の末広亭のようでもあった・・・。出演者と演目は下記の通り。
林家さく平 『転失気』
林家たま平 『出来心』
ニックス 漫才
金原亭乃ゝ香 『桃太郎」
入船亭扇辰 『たらちね』
林家楽一 紙切り
宝井琴調 講談『赤穂義士銘々伝・赤垣源蔵 徳利の別れ』
春風亭柳朝 『猫の皿』
ぺぺ桜井 漫談
林家しん平 (不明)
柳家さん遊 『饅頭恐い』
〜 仲入り 〜
桂 文雀 (不明)
マギー隆司 奇術
柳家小ゑん 『ぐつぐつ』
入船亭扇遊 (不明)
ストレート松浦 ジャグリング
林家たい平 『井戸の茶碗』
前座の林家さく平はトリのたい平師匠の弟子、というより息子。続く林家たま平は林家正蔵の息子。こちらはすでに二ツ目。落語界も政治家や芸能界と同じように二世三世が多くなってきた。ニックスは芸歴22年の美熟女姉妹の漫才。金原亭乃ゝ香は元ミス東洋大学という美人。ということで、最初の4組は世襲と美人だらけ。w
さく平は落語はともかく舞台転換(座布団返し、マイク交換など)の所作がとてもスムーズ。さすがに蛙の子だけはある。たま平はテレビドラマ(『ノーサイド』)で注目されたが、本業の高座も堂に入っていてかなり期待が持てる逸材。ニックスはお客さんの少なさに戸惑っていたが、それでも妹のトークは軽妙。姉にもう少し覇気が欲しかったが。乃ゝ香は最近二ツ目に昇進したばかりだが、滑舌がとても容姿と同じように綺麗。次はもう少し狭い会場での高座を間近で聞いて(見て?)みたい。w
真打の皆さんのなかで特筆したいのは柳家小ゑんの『ぐつぐつ』。話は居酒屋のおでん鍋でのおでんの具同士の会話。これって三遊亭円丈の噺かと思って調べたら、なんと円丈の元ネタは小ゑんが原作で、小ゑん師匠が本家本元。ということで、この噺を作られたのはかなり前だと思うが、今聞いてもまったく色あせない新作落語。そして、このネタはすでに他の落語家が口演されているのようなので、いずれ古典と定着することは間違いない。元祖『ぐつぐつ』を聞けたことはラッキーだった。
トリの林家たい平は『井戸の茶碗』。この日はたい平が主任を務める中席の千秋楽ということで、たい平はこのネタを最後まで取っておいたのではないだろうか。ということで、マクラもそこそこに本題に入る。話の展開は非常にオーソドックスながら、途中に「笑点」メンバーのくすぐりを入れるなどサービス精神は忘れない。ただ、これは満員のお客さんなら受けるかもしれないが、昨日のような客席が2〜3割しか入っていないという場合はちょっと無理がある感じがする。今後は「落語家は寄席では客層を見ながら、そしてマクラを話していながらネタ=演目を決める」(この日の高座で2人もこのセリフを言った)ではないが、客層を見てネタの内容を変えるぐらいの臨機応変さが欲しいような気がした。それでも、たい平師匠は大ネタを気負うことなく、登場人物の特徴をうまく捉えながらしっかり噺を進めていく。それゆえに、コロナで客席が寂しかったのが残念でならなかった。