木曜日, 11月 05, 2020

さん喬を聞かぬは一生の損

昨日(4日)は久しぶりに浅草まで足を伸ばし、浅草見番で開かれた「さん喬 双つ玉 ~お藤松五郎・鴻池の犬~」という落語会を聞きに行ってきた。会場は浅草芸者のお姐さんが踊りや三味線などの稽古をする場所で、座席は余裕のある座布団席が主体。演目は下記の通り。

春風亭枝次  「子ほめ」

柳家さん喬  「お藤松五郎」

 〜 仲入り 〜

柳家さん喬  「鴻池の犬」

       ♪三味線 太田その

開口一番の春風亭枝次は春風亭百栄の弟子。最近行く落語会の開口一番はなぜか「子ほめ」ばかりで、話が始まった途端に苦笑してしまった。ごめんなさい。

「お藤松五郎」は名人・六代目三遊亭圓生が得意とした話らしい。主人公は3人。茶屋を営む美人のお藤とその母。2人は道具屋の旦那に世話になっている。お藤を慕う一中節の三味線弾き松五郎。そして、母がお藤と松五郎の仲をとりもたそうとするが、話は奈落の底へ落ちるかのように二転三転していき、最期は・・・。先日聞いた「浜野矩随」と同じように柳家さん喬はその表現力で観客をぐいぐいと江戸の世界に引きずり込ませる。ただ、今回は初演ということもありちょっとぎこちない部分も見受けられた。それでもこの複雑怪奇な話を真正面から真摯に演じるている姿は素晴らしかった。この噺はさん喬の新たなる境地を開くかもしれない。

「鴻池の犬」は上方落語の名作。それを東京風にアレンジ(誰がしたの?)。ある商家(乾物屋?)の小僧が3匹の捨て犬(クロ、ブチ、シロ)を育てる。しかし、そのうちの1匹クロが大阪の鴻池にもらわれることになった。クロを一番可愛がっていた小僧は、クロがいなくなった後はブチとシロを邪険にするようになり、ブチは不慮の事故に会ってしまう。翌日シロは大阪にいるクロ兄に会いに行くために江戸を出る。大阪への道中はお伊勢参りをする犬ハチと旅をする。この時の道中は下座(お囃子)も入り楽しい。そして、伊勢と大阪に別れる時の切なさをさん喬は見事な“犬芸”で表現する。ハチと別れたシロは大阪でクロと再会する。とてもメルヘンチックな物語であり、ファンタジックなさん喬ワールドを満喫。以前「さん喬を聞かずして落語を語るなかれ」の気持ちでいると書いたことがあるが、今や「さん喬を聞かぬは一生の損」という気持ちでいる。



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