金曜日, 11月 05, 2021

柳家さん喬十八番集成・晩秋公演

昨日(4日)は国立演芸場で開かれた「さん喬十八番集成・晩秋公演」を聞きに行った。演目と出演者は下記の通り。

柳亭左ん坊  「浮世根問」
柳家やなぎ  「短命」
柳家さん喬  「お直し」
 〜 仲入り 〜
柳家さん喬  「らくだ」

最近の柳家さん喬を聞く時の開口一番はいつも柳亭左ん坊(柳亭左龍の弟子=柳家さん喬の孫弟子)。前々々回は「酒の粕」、前々回は「出来心」、前回は「道具や」、そして今回は「浮世根問」。この数ヶ月に彼を4回も聞いているが、「道具や」を除いては健闘している。今回も八五郎とご隠居の大喜利のような問答を飄々と話す。まだ若いのでしっかりした味は出せていないが、出汁は良いものが入っている。

柳家やなぎはさん喬の11番目の弟子。風体も話し方も総領弟子の柳家喬太郎に似ている。マクラでトロ鉄火丼の話を延々とやるので新作落語をやるのかなと思ったら、いきなり古典の「短命」へ。これには場内のお客さんも呆気にとられる。このへんもどことなく喬太郎風。滑舌はしっかりしているし、声も大きい。表現力も構成力もある。将来が楽しみな二ツ目だ。

「お直し」は売れなくなった花魁が一緒になった男と転落していくいうお気まりの展開の廓噺。さん喬の女性の語り口は天下一品。下手な歌舞伎の女形より上手い。その女形を演じると同時にやさぐれ男や酔った客まで同時に演じるのだから、これは落語というより一人芝居。芸というよりも芸術。約1時間の長講だが、まったく飽きを感じさせず聴き入ってしまった。

「らくだ」はフグに当たって亡くなったらくだという男を、屑屋とらくだの兄貴分というドブロクの政が落合の焼き場まで運ぶ滑稽噺。見せ場は小心者の屑屋が酒を飲むと豹変するシーンだが、さん喬は酔うと共に弱々しい繊細な声が、ごく普通の声になり、最後は大虎の声になる。酔っ払いを演じるのは下戸の方が上手いとよく言うがまさにその通り。このシーン、喬太郎をはじめ酒飲みの多い弟子たちには無理だろう。w こちらも50分におよぶ長講だったが、完全に聞きいってしまった。

次回の「さん喬十八番集成」は来年3月。チケットを先行発売していたのでロビーで購入。こちらは珍品2席の長講ということで楽しみである。



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