月曜日, 9月 24, 2007
ウルトラの世界は人間愛と宇宙愛の芸術なり
先日青森県立美術館で知った『怪獣と美術 ー成田亨の造型芸術とその後の怪獣美術ー』(三鷹市美術ギャラリーで10月21日まで開催中)に行ってきました。
成田亨は『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』といった初期のウルトラシリーズの特撮美術総監督として、怪獣・宇宙人・メカニックなどのデザインを行い、特撮の世界では神様とまで言われた人である。
三鷹駅前にある会場には休日ということもあってか大勢の来場者。お父さんの手をひきつれてくる子供、美術を勉強していそうな学生カップル、いかにも業界の人々などなど、老若男女が本当にいっぱいなのである。怪獣人気衰えずという感じである。
会場に入ると、まず最初に青森県立美術館などが収蔵している怪獣たちのデザイン画が並ぶ。カネゴン、ガラモン、バルタン星人、ジャミラ、メトロン星人などなど。子供たちが怪獣たちの名前を上げながら、食い入るように見つめている。40年前の絵がまだまだ燦然と輝いていて、子供たちには眩しいのである。その子供たちのためか、展示位置が普通の美術展より10センチか20センチぐらい低くしてある。
成田亨は1929年に神戸市に生まれ、すぐに青森市に移住する。青森高校卒業後、武蔵野美術学校(現在の武蔵野美術大学)で絵画と彫刻を学んだ。その在学中に映画『ゴジラ』スタッフとして関わったことをきっかけに映画美術の世界に入り、その後は東映撮影所で特撮美術監督となる。そのときに彼は『ナショナル・キッド』を手がけている。『ナショナル・キッド』には地底人や海底人が登場していて、それがウルトラマンに登場した宇宙人に似ていたような気がする。今思えばナショナル・キッドそのものもウルトラマンに似ていなくもない。
東映撮影所を辞めたあと、成田は円谷プロに入社する。そこで前述のウルトラシリーズで手腕を振るった。そして、その後は数多くの映画の特撮美術監督、彫刻家として活躍して、2002年に72歳で他界した。
美術展を見て率直な感想は、成田さんは芸術家だなと思った。それも彫刻の分野では大家に匹敵する力をもっていたと思う。彼が描く怪獣のデザイン画はすべて立体的に描かれている。展示されている彫刻やオブジェなどは鋭敏な感性で作られている。彼は「怪獣=鬼」と考えていたようで、その鬼気迫る個性は現代アートのなかでも突出しているのではないだろうか。
一方、彼が若いころに描いた油絵は意外に凡庸だ。こうした油絵には残念なことに立体感が乏しく、デザイン画のようなこれから生誕するんだという勢いが感じられない。ところが、晩年の2000年にアクリルに描いた2枚のカネゴンの絵は素晴らしい(1枚は下記のアドレスのページに載っている)。この2枚には彼が「人間愛とは何か、宇宙愛とは何か」を問いかけているようなメッセージが込められている。
追記:11月3日から12月24日までは足利市立美術館で行われます。
三鷹市美術ギャラリー
http://mitaka.jpn.org/calender/gallery/
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