日曜日, 9月 30, 2007

フルート、オーボエ、コンマスのブラームス交響曲第1番

昨日(29日)、NHKホールでのNHK交響楽団第1601回定期公演を聴いてきました。指揮はモーシェ・アツモン。ヴァイオリンはセルゲイ・クリーロフ。当初、指揮はコンスタンティノス・カリーディスが予定されていたが、健康がすぐれず来日ができなくなり、代わって、モーシェ・アツモンが指揮するようなった。

演目
R.シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219「トルコ風」
  〜休 憩〜
ブラームス/交響曲第1番ハ短調

1曲目。いきなり100人編成の大オーケストラ。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットなどが4人もいる。ヒェ〜。それゆえに見知らぬ顔も何人かいる。まあ、そんなことどうでもいい。指揮のモーシェ・アツモンはいきなり全開です。エンジンがローからいきなりトップギアに入ったかのような指揮ぶりです。この曲はオケで聴くのは初めてですが、かなりダイナミックで劇的で、聴いていて楽しくなった。アツモンにとって今回が初のN響の指揮だが、彼は名古屋フィルハーモニーや東京都交響楽団の指揮者をしているので、日本のオケはかなり熟知しているのであろう。1曲目でオケを掌握してしまった。

2曲目。私があまり得意でないモーツァルト。なぜ得意でないかというと、メロディがダラダラ流れるようになるところが多く、非常に眠くなるからです。それはこのヴァイオリン協奏曲第5番も同じで、聞こえてくるセルゲイ・クリーロフの音色は心地良い。そのせいか、右隣のオジサンも左隣のオバサマも心地良い世界に入っている。こういう緊張感のない曲はどうも私には向かない。私までウトウトしてしまいました。

そして、休憩を挟んでブラームスの交響曲第1番。数多くある交響曲のなかでも、私はこの交響曲が3本の指に入ると思うぐらい偉大な交響曲だと思っています。それはなぜかといえば、バラエティに富みながらも整然としたメロディの数々、交響曲全体を引っ張る弦楽器の厚みと深みのあるテンポとリズム、木管金管など各楽器の特徴を際出せるソロの音色など、この交響曲には凄さと怖さの魅力が満ち溢れているからです。演奏すること自体はおそらくさほど難しくはないだろうが、指揮者およびオケの力量がはっきり表れる交響曲でもある。

第1楽章。ブラームスとしては非常にゆっくりとした入り方。人によっては何? この間延びした出だしは? と思うだろう。しかし、ティンパニー(久保昌一)の威厳のある音、弦のゆったりと流れるN響がもつ独自の統率力のある音がNHKホールの観客を一瞬にして制圧する。しかし、ファゴットかホルンあたりの和音が乱れる。それでも、アツモンはぐいぐいとオケを引っ張っていく。それに応えるべく、藤森亮一率いるチェロおよび店村眞積率いるヴィオラが、まるで地の底から音を這い上がていくかのように低音を奏でていく。いや〜、この厚みと深みです。他の日本のオケにないリズムと音色です。これを聴かずして何を聴くというのだろうかと思うぐらいです。

第2楽章。緩徐楽章。最初にオーボエ(茂木大輔)が高らかにメロディを奏でて、この楽章をリードしていく。それから、穏やかなヴァイオリンの音色が続き、クラリネット(横川晴児)、フルート(客演の高木綾子)などの美しい音色がNHKホールにこだまする。終章部分ではコンマス(篠崎史紀)のヴァイオリンソロとホルン(今井仁志)による掛け合い。篠崎の高音の響きは綺麗な余韻を残していく。短い楽章なのだが、観客からため息が漏れそうであった。

第3楽章。間奏曲。かなりロマンチックな楽章でもある。流れるようなメロディを木管金管の各楽器がリレーしながら奏でていく。この辺りになると、オケ全体の緊張感が和らいでてきて、メンバーはノリノリで演奏していく。

第4楽章。この交響曲のハイライトというか。ブラームス音楽のエキスがすべて入っている楽章です。第一楽章同様にティンパニーが轟く。弦による不吉な感じのメロディで始まる。しかし、それを覆すかのようにホルンが夜明けを告げていく。加えて、この日最高の音色と思われた高木綾子のフルートが響く。そして、あの有名なメロディが怒濤のように流れていく。なかでも、ヴィオラの響きが冴え渡る。あ〜、やっぱりこの曲はヴィオラなんだよなぁと、ひとり悦に入ってしまう。それは不協和音のように聞こえる部分で更に納得してしまう。アツモンは最後の最後は堅実にまとめていく。見事な仕事ぶりでした。

結論としては、私は昨年1月にヘルベルト・ブロムシュテットが指揮したときの名演奏を聴いているので、残念ながらそのときほどの感動は味わえなかった。それでも、フルートの高木綾子(またN響に出演してほしい)、オーボエの茂木大輔、コンマスのまろ様こと篠崎史紀の3人には心からブラボーと言いたい。また、低音部を支えたヴィオラ、チェロ、コントラバスのみなさんに大きな拍手を送りたい。

この日の演奏会の模様は11月2日(金)午前10時からのBS2「N響演奏会」で放送予定になっている。

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