暑い夏が続いています。そこで江戸小話にあるお化け話をひとつ。
博打好きの男は来る日も来る日も賭場通いをしていました。その日はすっかり負けがこんでしまい、フンドシひとつの丸裸で長屋に帰ってきました。
「寒くてしょうがねぇ。着るものはないのか?」
「あるわけないじゃないですか! おまえさんがみんな博打ですってしまったんですよ!」
お髪さんは涙ながらに言いました。
ところが、男はお髪さんがきているものを見て、言いました。
「おい、その着物をほどいて、裏と表の二枚にして一枚を俺にくれ」
お髪さんは渋々合わせの着物をほどいて、男に裏地を渡しました。
「おまえさん、もう、博打をやめておくれよ。この寒いときに、一重の着物では、ほんとに死んでしまうよ。死んだら、幽霊に化けて出てやるからね」
お髪さんは恨めしそうに言いました。
それからまもなくして、お髪さんは本当に死んでしまいました。そして、ある日の丑三つ時に化けて出ました。
「うらほしやあー」
「着物の、うらほしやー」
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