土曜日, 1月 13, 2018

春風亭小朝・春風亭昇太・林家たい平 新春爆笑三人会@パーシモンホール

昨日(12日)はめぐろパーシモンホールで開かれた「春風亭小朝・春風亭昇太・林家たい平 新春爆笑三人会」を聞いてきた。昨年の会(出演者は違う)はちょっと空席が目立ったが今回は人気メンバーということもあり前売で完売。もちろん平日の昼公演ということもあり、客席のほとんどは高齢者ばかり。ただし女性客の方が男性客より多いのにはびっくり。誰が女性受けするのだろうか!? なお演目は下記の通り。

春風亭昇咲  『寿限無』
春風亭昇太  『看板の一』
春風亭小朝  『芝浜』
 〜 仲入り 〜
柳貴家雪之介  太神楽     
林家たい平  『猫の災難』

開口一番はイガグリ頭の春風亭昇咲。春風亭昇太の9番目の弟子。演目は前座お決まりの『寿限無』。昇咲の滑舌は明快だが、坊さん、父親、母親、子供、婆さんの声色の使い分けの変化がかなり乏しい。もう少し強弱、抑揚、間合いなどの工夫してもらいたい。まだまだ勉強、前座はつらいよ。

春風亭昇太は開口一番が自分の弟子が出ていたせいか、ちょっと気がきでない状態で登場。それでもマクラでお得意の「結婚できない」ネタをたっぷり披露。最後には「私は自分で稼いだ金は全部自分で使えるんだ」と開き直り。いいぞ。w さて『看板の一』(かんばんのピン)は博打話。新春や正月らしいネタではないが、それでもそれを滑稽かつ軽快にまくし立て行く。そのせいか、ちょっと聞きづらい部分もあったのが残念。

春風亭小朝はマクラもなく本題へ。小朝は所作もバッチリ、夫婦間のやり取り上手い。しかし、申し訳ないが髪型が悪い。体型や身なりで人を判断するのは悪いとわかっているが、落語は時代をも売る商売である。テレビに出る今風タレントとは違うのだ。というより、小朝はもはや以前言われた「金髪ブタ野郎」ではない。髪がかなり薄いので「金髪ハゲ野郎」状態なのである。これではいくら上手い落語も見聞きしていも興醒めしてしまう。その昔落語といえば寄席(定席)もしくラジオで聴くだけのものだったが、今やホール落語はあたり前の時代。そんな時に江戸時代の落語を話すのに金髪ハゲ野郎では様にならない。これではいくら上手くても江戸の情景が浮かび上がってこない。それゆえに、私は『芝浜』の最後の女将さんがお金を隠していたくだりでは目を瞑って聞いた。小朝には悪いがとてもじゃないが、あの顔および髪を見たら『芝浜』も芝浦の浜辺でなく、ハワイの浜辺になってしまう。古典に金髪はマッチしない。早く金髪に別れを告げるべきである。

仲入りがは皿回しの曲芸の大神楽。出刃包丁を使った芸には観客も「やめた方がいいよ」とか「怖い」とか余計なひそひそ声があちこちから。まあ、私は寄席(定席)で見慣れている上、彼が大神楽の大名人の後継者であることも知っているので、しっかりと柳貴家雪之介の芸を楽しむことができた。

林家たい平は素晴らしい。マクラでトイレネタを披露する同時に、『笑点』の「大月 vs 秩父」戦争の裏話というか先輩の三遊亭小遊三を立てることもする。そして、本題の『猫の災難』に入ると、こうも人は酒に酔うのかと思うぐらいの、酒の飲み方と酔い方をシラフで演じる。いや〜、とにかく面白い。説明の仕様がないほど面白い。『猫の災難』は爆笑王・柳家権太楼のメチャクチャに面白いのを聞いたことがあるが、それに負けずと劣らずたい平の『猫の災難』も素晴らしかった。権太楼の後を受け継ぐ爆笑王はたい平で決まりだ、と思わせる一席だった。

木曜日, 1月 11, 2018

第23回チェロキー寄席(柳亭市弥 & 春風亭一蔵)

昨日(10日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で春風亭一蔵と柳亭市弥出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。春風亭一蔵は江戸弁落語の第一人者・春風亭一朝(時代劇の江戸弁指導もしている)の弟子。柳亭市弥は落語協会会長であり、大相撲中継で花道側の席にたまに座っている柳亭市馬の弟子。なお、演目は下記の通り。

春風亭一蔵  『熊の皮』
柳亭市弥   『試し酒』
 〜 仲入り 〜
柳亭市弥   『初天神』
春風亭一蔵  『宿屋の富』

1席目は「熊の皮」。NHK『超入門 ! 落語 THE MOVIE』で三遊亭遊雀の語りで放映されたが、髪さんの尻に敷かれる情けない甚兵衛が、世話になっている医者へ行って、髪さんに言われた口上をしどろもどろで伝えるという噺。春風亭一蔵はその巨体(100キロ以上はある)を上下左右に動かしながら甚兵衛夫婦を滑稽に演じていくが、甚兵衛と医者のくだりになると少し甘くなってしまう。ある意味難しいオチなので、その点を明確にしてほしかった。

2席目は「試し酒」。五升飲むという大酒の久蔵の話。これは話うんぬんより、その飲む動作を楽しむ落語といった方がいいかもしれない。よく芝居では本当の酒飲みは酔う様が下手だと言われるが、これはどうやら落語にも似たようなところがあるのかもしれない。柳亭市弥は扇子を使って上手く飲むには飲むが、その酔い方が少し甘い。もう少し大胆に酔った様を表現しても酔いのではないだろうか。そうすれば「先に表の酒屋で試しに五升飲んできた」というオチが一層効果があるような気がする。

3席目は「初天神」。枕で意外にも高校・大学ではラグビー部だったとプロフィールを明かす柳亭市弥。よく見れば耳はラグビーをやっていた影響で少し変形している。で、正月ということで定番の「初天神」。これまでに何人も「初天神」を聞いてきたが、市弥が演じる子どもは最も可愛くそしてズル賢い。できれば、親父の声色にもう少し凄味を加えてもらえれば、言うことなしだ。市弥にはイケメンだけでなく愛嬌という武器もあるので、それを使って師匠のような古典落語の王道を歩んでていってもらいたい。

4席目は「宿屋の富」。神田馬喰町の宿屋に泊まった金には困らないという大ボラ吹きの男が、なけなしの金で買った富くじに当たるという滑稽噺。春風亭一蔵の噺ぶりは巨体を生かすべくツッパリで能動的である。下手な引き技などもない。前回ここで彼が演じた「阿武松」は秀逸だったが、それ比べると今回の「宿屋の富」は人の内面(金に対する欲)を引き技で表現してもよかったのではないかと思う。とはいえ、彼には大きな体を活かして大きな噺をする落語家になってもらいたい。