金曜日, 12月 21, 2018

春風亭正太郎百貨店 赤坂支店 歳末大感謝祭五夜の第四夜

昨日(20日)は赤坂会館稽古場(本来は赤坂芸者のお姐さんたちが踊りの稽古をするところ)で開かれた「春風亭正太郎百貨店 赤坂支店 歳末大感謝祭五夜」の第四夜を聞く。春風亭正太郎は1981年目黒区生まれの二つ目。限定60席の会場はほぼ満員。演目は下記の通り。

入船亭扇ぽう  「寿限無」
春風亭正太郎  「堪忍袋」
入船亭扇遊「   棒鱈」
  〜 仲入り 〜
扇遊・正太郎   対談
春風亭正太郎  「死神」

開口一番の前座・入船亭扇ぽうは入船亭扇遊の弟子。イガグリ頭にして童顔。あとで春風亭正太郎に「定吉(落語に出てくる丁稚の代名詞)みたいでしょ」といわれるが、今回が寄席以外の高座は初めてということだったらしい。それでも、さして緊張することもなく入船亭一門が最初に習うという『寿限無』を実直に好演。

「堪忍袋」は熊五郎とおかみさんの口喧嘩の仲裁をするために作られた‘’堪忍袋‘’が近所中に大評判となり、最後は商家のお嫁さんがその袋に姑の悪口を言うまでに、ということを描いたお話。作者は明治大正の実業家にして劇作家でもあった益田太郎冠者。正直、お話はたわいもない。しかし、それをいかに面白く演じるかが落語である。春風亭正太郎は緩急の抑揚をつけながら、噺を巧く進めていく。特におかみさんの嫉妬する表情や喋りは滑稽。彼にはこの噺が合う。あと蛇足だが、マクラで正太郎と奥さんが京都旅行に行った時に正太郎が「鳥獣戯画、見に行かない?」と言ったら、奥さんは「なんでそんな大容量のスマホが欲しいの」と。これには腹を抱えた。

ゲストの入船亭扇遊は今年3月に芸術選奨を受賞。もはや誰もが認める落語名人の一人。そして、その芸はあくまで清麗にしてスマート、そしてシックである。マクラ以外では余計なことをほどんど喋らない。下手な下ネタなどを入れない。とにかく格好いい落語家である。その師匠が意外にも「棒鱈」を披露。その話ぶりは小気味よく、前座や二つ目が演じる「棒鱈」とは一味も二味も違う。酒を飲むさま、胡椒でくしゃみをする仕草は秀逸で名人ならではと感心させらる。

対談では正太郎の師匠である春風亭正朝がまだ学生で、前座だった扇遊師匠の話を批評されて、師匠はムカついたといい、その正朝師匠が5代目春風亭柳朝に入門して寄席で会った時に「お前かあ」と叫んだのは爆笑モノ。これには、弟子の正太郎が平謝りでおかしかった。

正太郎の「死神」は決して怖くない。なったって、呪文が「アジャラカモクレン、アパマンショップ、テケレッツのパー」である。風刺をきかせていることによって、話がちょっと現実的になってしまう。それゆえに、話の比重はどうしても死神より一攫千金を求める男の方にいってしまう。それゆえか、男が商家で値段を吊り上げていく貪欲さや、枕元で死神が寝てしまう描写などが傑出している。これまでに春風亭小朝や柳家喬太郎が演じる怖い「死神」を聞いてきたが、正太郎のようにさっぱりした「死神」も悪くはない。ただ、もっと強欲な医者になった男の弱さをもう少し際立たせてもらいたかった。いずれ正太郎が真打になってからの「死神」を聞いてみたい。

水曜日, 12月 19, 2018

ふるさと納税、あなたが住んでいる自治体の財政事情をご存知ですか

今年も残り2週間になった。そのせいかどうか知らないが、テレビではやたら「ふるさと納税」を扱っているCMが流れる。しかし、この「ふるさと納税」で得している自治体もあれば、損している自治体もあることを、納税者は自覚しているのだろうか。

そもそも「ふるさと納税」は自分の出身地の自治体や自然災害にあって困っている自治体を支援するために発足した制度である。ところが、昨今は自治体自身がCMを流すなどして、完全に返礼品目当ての利己主義的というか本末転倒な制度になっている。

このために、首都圏近郊の自治体は税収が減ってしまい、公共サービスや道路整備に支障を起こすことになりかねない。例えば、私が住む目黒区だが「ふるさと納税」のために毎年10億〜12億円の税収減になっている。確かに目黒区は税収が400億円余もあるが、実は決して裕福な自治体ではない。目黒区は特殊な事情からリーマッションクの2009年度以降ずっーと財政赤字が続いている。似たような自治体は東京にはいくつもある。

私は「ふるさと納税」そのものを否定するつもりはないが、自分が住んでいる自治体の財政事情を知らずして、返礼品目当てで「ふるさと納税」をするなんていうことは納税者として恥ずかしくないだろうか。あなたは自分が住んでいる自治体の財政事情をご存知ですか。

月曜日, 10月 22, 2018

柳の家の三人会@パーシモンホール

先日(18日)めぐろパーシモンホールで「柳の家の三人会」を聞く。

出演者と演目は下記の通り

柳家圭花  「浮世根問」(うきよねどい) 
柳家喬太郎 「夢の酒」
 〜 仲入り 〜
柳家三三  「金明竹」
柳家花緑  「紺屋高尾」

開口一番は柳家花緑の弟子の柳家圭花。風貌や語り口から柳家三三の弟子かなと思ったが(三三に弟子はいない)、1200人満員の客席にも全く物怖じせず飄々と話す大器。じっくりゆっくり古典の王道を歩んでもらいたい。

喬太郎のマクラはお得意の沿線駅語り。今はもうないが東横線「高島町」駅と代官山駅の終点ひとつ前の駅の比較。これにはお客の多くが東横線沿線住民ということもあり、いきなり大盛り上がり。続けて彼が住む池袋愛を発揮して隣駅(目白と大塚)の違いを力説する。いつもながら喬太郎のマクラは楽しい。で、このままマクラで終わってしまうかと思ったら、池袋でAVを借りてしまったという夢話から「夢の酒」へ。「夢の酒」は若旦那の夢に嫉妬する嫁(お花)をなだめる大旦那が同じ夢を見に行くというお話。本来ならばお花が夢に対していじらしく焼き餅を描くのだが、そこは喬太郎、膝を立ててお花の嫉みを大きく表現して場内を笑わす。

「寿限無」と並んで早口言葉で有名な「金明竹」。普段は前座噺として後半部分だけが寄席などで頻繁に掛けられるが、今回は松公がどうして骨董屋の店番をしているかなど前半部分も詳細に演じる。これまで柳家三三の落語は何度も聞いているが、私はどうも相性が良くなく、いつも感心することがなかった。しかし、今日は違った。喬太郎、花緑には申し訳ないが、この日一番の出色の出来だった。というのも、なんというかこれまで感じていた師匠(柳家小三治)の色を全く感じさせなかったからだ。三三は落研出身でなく小三治の純粋培養で育った落語家のため、どうしても小三治の色を出してしまう。しかし、この日は弾けていた。飛んでいた。怖いもの知らずで自分を曝け出していた。落語はやっぱり無の境地で馬鹿にならないと。

「紺屋高尾」は神田紺屋町の染物職人、久蔵が吉原の三浦屋・高尾太夫に恋患いをして、3年間あくせく働きお金を貯めて彼女と会い、その心意気に惚れた彼女が翌年の年季明けに久蔵に嫁ぐというハッピーエンドな廓噺。これまでに何人ものこの噺を聞いたが、柳家花緑の「紺屋高尾」は心地よい。なんというかお客と一緒になって親近感を感じさせる。艶っぽいところも明るく演じて心をウキウキさせてくれる。人によって「こんな軽い『紺屋高尾』なんか」と云うかもしれないが、ハッピーな気持ちで家路(私は飲み屋だが)につかせてくれるのも嬉しいものである。

今回の「柳の家の三人会」は演目はいわゆる定番中の定番だったかもしれないが、喬太郎の熱演、三三の好演、そして、花緑の快演と三者三様で大満足の落語会だった。

日曜日, 9月 09, 2018

第73回扇辰・喬太郎の会

昨日(8日)は国立演芸場で「第73回扇辰・喬太郎の会」を聞く。入船亭扇辰と柳家喬太郎は同期。落語会には同期の勉強会は数多くあるが、この二人会ほど人気のあるものはなくチケットはいつも即完売。

さて、演目は下記の通り。仲入り後の2席はネタおろし。

柳家寿伴   「金明竹」
入船亭扇辰  「田能久」
柳家喬太郎  「品川心中」
 〜 仲入り 〜
柳家喬太郎  「親子酒」
入船亭扇辰  「江戸の夢」

開口一番の 柳家寿伴は柳家三寿の弟子。柳家三寿は五代目柳家小さんの弟子なのだが、私は一度も聞いたことがない。そして、前座である柳家寿伴も初めて聞くが、彼は年齢もある程度いっているので物怖じしない姿勢と滑舌の良さで前座離れしている。将来楽しみだ。

マクラは藪歯医者の話。「田能久」は芝居好きの久兵衛さんが一座を結成。旅の途中で大蛇の化身である老人とトラブルになるという噺。これまでにこの噺は何度も聞いているが、正直あまり好きになれない。そのせいか、それとも競馬疲れか睡魔に襲われる。

マクラは翌日に控えた謝楽祭のために今日は打ち上げがないという暴露話(ホント?)と、落語監修をしている10月からNHKで始まるドラマ「昭和元禄落語心中」の裏話。いつもながら喬太郎のマクラは楽しい。さて「品川心中」は売れなくなった遊女・お染が貸本屋の金蔵を道連れに自殺をしようという廓噺。この噺、本来はしっとりした古典風の展開で描かれるのが一般的だが、喬太郎ということでどことなく現代風。いいんです。w

「親子酒」は断酒した親子が結局はその禁を破るというお決まりの噺。喬太郎がこのネタを持っていなかったのに少し驚いたが、噺の主軸を親子だけでなく、女将さんと旦那子供にも置いているところが面白い。喬太郎ワールドだ。

「江戸の夢」は劇作家宇野信夫が六代目三遊亭円生のために書いたもの。初演は1967年(昭和42年)11月。もともと歌舞伎の台本だったのでかなりドラマチックな展開。お話は庄屋の武兵衛が江戸見物の折に、婿の藤七に頼まれて浅草のお茶屋・奈良屋にお茶の出来具合を鑑定してきてもらいたい、として訪ねる。そして、藤七と奈良屋の関係が明かされていく・・・。とてもネタおろしとは思えないほど完璧な扇辰の話しぶり。江戸近郊の田舎の光景や江戸の大店の光景が目に浮かぶ。まるで喬太郎の師匠である柳家さん喬のよう。ブラボー!

水曜日, 9月 05, 2018

安倍政権下での災害の数々

数年前TwitterやMixiなどのSNSで「民主党政権だから東日本大震災が起きたんだ」と言う愚かなことをいう輩がいっぱいいた。しかし安倍政権になってから西日本を中心に多くの災害が起きているに「安倍政権だから災害が立て続けに起きるんだ」と言う輩はいない。不思議だ。
 
下記は安倍政権になってから災害の数々。
 
2015年(平成27年)9月   関東東北豪雨
・鬼怒川氾濫、常総市浸水
2016年(平成28年)4月14日 熊本地震
・震度7、熊本城大被害
2016年(平成28年)7〜8月 平成26年豪雨
・広島市土砂災害
2017年(平成29年)7月   九州北部豪雨
・朝倉市・日田市大被害
2018年(平成30年)7月   西日本豪雨
・倉敷市真備町水没、広島県・愛媛県など土砂災害 
2018年(平成30年)6月18日 大阪地震
・ブロック塀倒壊、大阪府北部中心に被害
2018年(平成30年)9月4日 台風21号
・関西地方大被害、関西空港無機能化
【追記】
2018年(平成30年)9月5日 北海道地震
・全道停電、厚真町大規模土砂崩れ

火曜日, 8月 28, 2018

夏バテにアイス枕

どうやら夏バテである。

土曜、日曜と正午から午後4時まではいつも通りに競馬に興じた。成績は土曜も日曜も収支はプラスで良かったのだが、そのあとがイケナイ。ジムに行って運動でもしようかと思うが、体が思うように動かない。思わず「あれ?」「夏バテ?」と感じて体温を計ると37.2度。う〜ん、では少し寝るかとソファに横になったら、なんと2時間以上も眠ってしまった。

そこで、東洋医学に精通している知人にメールをしたところ「麹で作った甘酒、スイカ、きゅうりなどを食べましょう」「持続性のあるアイス枕で寝るようにしましょう」「微熱は気にしなくていいです」などのアドバイスが次々と送られてきた。ありがたい限りである。で、それを実践したところ、なかなか調子がいい。特にアイス枕のおかげで薄かった眠りが深くなったような気がする。


夏バテだと思ったら、食事も大事だがアイス枕を利用しましょう。なお、このアイス枕、製品によって冷たさがかなり違うみたいなので、タオルを使ってうまく温度調整をしましょう。

月曜日, 8月 20, 2018

第八回春風亭正太郎の冒険

昨日(19日)はめぐろパーシモンホール(小ホール)で「春風亭正太郎の冒険」を聞く。春風亭正太郎は1981年目黒区生まれ。春風亭正朝に入門して13年。地元での落語会も今回で8回目。定員200人の会場は満杯で7〜8割は女性。そして、その半分近くは年配の方で、彼女らはまるで自分の子供の晴れ姿を見るかのよう。(笑)

演目は下記の通り。

金原亭駒六  「元犬」
春風亭正太郎 「棒鱈」
       「鰻の幇間」
 〜 仲入り 〜
林家二楽    紙切り
春風亭正太郎 「景清」

開口一番の前座・金原亭駒六は金原亭馬生の弟子。面長でインテリ風な顔立ち。その話し方も落ち着いている。馬生師匠のお弟子さんということから、正統派落語の王道を歩まれるのではないだろうか。

「棒鱈」は隣座敷になった酔っ払いの町人と田舎侍のドタバタを描く噺。落語にはお酒にまつわる噺はいくつもあるがこれはその代表的な滑稽噺。春風亭正太郎はとにかく声がいい。滑舌は当然のことながら、その使い分けが上手い。この噺においても単に酔っ払いの声だけでなく、奇声を使って下手な歌をところなど絶品である。

「鰻の幇間」は幇間の一八が鰻を食べたいがために、太鼓持ちをするが逆に客に逃げられてなけなしの10円(明治時代は大金)を払う羽目に合う情けないお噺。登場人物は幇間の一八と客の二人だけということもあり、キャラクターを明確に分けて演じる。ただ、どうも正太郎には幇間が似合わない。育ちの良さからだろうか、それともその体型からだろうか・・・。

ゲストは紙切りの林家二楽。まずはハサミ試しに桃太郎を切った後にリクエストに応える。1つ目は「両国の花火」。花火と力士を艶やかに描く。2つ目は「カピバラ」。カピバラは春風亭正太郎の愛称もしくは別名であり、二楽師匠はその辺をちゃんとわきまえていてカピバラと正太郎を一緒に描く。そして、最後は弟子(実の息子でもある)の林家八楽を呼び寄せて「ネコ」を親子で紙切り。完成させたのは「ドラえもん」と「ドラミちゃん」。鮮やかな共演である。

「景清」は個人的に好きな演目の一つ。盲目の定次郎が願掛けのために100日続けて観音さまに通うが、満願の日になっても目は開かない。ところが、そこに雷鳴が響いて定次郎は失神。そして、気がついたら目が見えるという人情噺。春風亭正太郎にとって今回がネタおろし(初演)だったが、そんなことを微塵も感じさせず、ぐいぐいとお客を話に引きづりこんでいく。是非とも「十八番」の一つにしてもらいたい。頑張れ、カピバラ。

水曜日, 7月 18, 2018

子供の頃の気温と今年の気温

子供の頃(小学校高学年)夏休みになると私は毎日のように学校のプールに泳ぎに行っていた。そのおかげで夏の時期の記憶はしっかり甦る。

小学校4年生だった1964年、この年の梅雨明けは7月22日でほぼ平年並みだったが、翌23日に最高気温が33.7度を記録してからは連日32〜33度が続いた。そして、8月の中旬には34〜35度の日が続き大変な猛暑だった。また、この年は梅雨の降雨量が極端に少なく「東京砂漠」といわれる水不足の年でもあった。それゆえに、プールの取水制限が行われ、8月の終わりころは全く泳げなかった。そして、この年は10月に東京オリンピックを控えたこともあり、時の建設大臣河野一郎が利根川から緊急に水を引いたり、東京のあちこちで井戸を掘ることになってしまったことをよく憶えている。ちなみにこの年の8月の平均気温は27.8度あり、月平均の最高気温も32.2度もあった。

小学校5年生の1965年は平年並みの夏だった。梅雨明けは7月27日と遅く、翌々日の29日にようやく30度超えして13日までは暑い日々が続いたが、それ以降は30度を超える日は少なかった。この年は前年のような水不足もなく、私はこの年に2種の泳法で100m以上泳げるようになり1級の認定をもらった。ちなみにこの年の8月の平均気温が26.7度で、月平均の最高気温も30.8度と過ごしやすい夏だった。

1966年は最終学年。この年の梅雨明けは7月19日だったが、この年はちょっと冷夏だった。プールがとても冷たかったことを覚えている。中学受験をする連中はプールに来なくなり、また1級のクラスで泳ぐようになったため、かなりスピードを出して泳ぐようになった。それでも、クラスで一番の森敬子にはとても敵わなかった。その彼女も今では鬼籍の人になってしまった。もう一度、彼女と泳いでみたかった。この年の8月の平均気温は26.9度で、月平均の最高気温30.4度だった。

このように子供の頃(小学校高学年)は1964年を除いては、最高気温は33度ぐらいが普通であり、現在のような暑さを感じることはほどんどなかった。もちろん、家にはエアコンなどなく扇風機だけで十二分に過ごすことができた。

最後にちょっときになるデータを1つ。この10年間で月平均の最高気温値を出したのは、記憶に新しい猛暑だった2010年8月で、その数値は33.5度(過去最高は1995年8月の33.7度)である。しかしながら、今年の7月はまだ16日までのデータにもかかわらず32.1度もある。もしこのまま最高気温が35度前後の日々が続くと8年前の記録を破ってしまう・・・。加えて言うならば、東京の観測地点は2014年11月に大手町の気象庁から北の丸公園に代わり、最低気温は1度以上、最高気温は0.5度以上低くなったと言われている。つまり、もしこの7月の最高気温値が33度を超えたならば、実質2010年8月のあの猛暑を超えた暑さということにもなってしまう・・・。

月曜日, 7月 16, 2018

長崎大水害を知っていますか

この7月5日(木曜)夕方、西日本で豪雨災害が起き始めている時、私は広尾のレストランで相方と食事をしていた。そのとき私が勝手に話題にしたのが長崎大水害。というのも、その日の午後2時に気象庁は臨時の記者会見を行い、梅雨前線がしばらく停滞するため、西日本と東日本では大雨が降る状態が8日ごろまで続き、記録的な大雨になるおそれがあると警告していたからである。

長崎大水害は1982年(昭和57年)7月23日から24日にかけて長崎県長崎市を中心とした集中豪雨で、死者・行方不明者は300名近くになった大災害である。私は当時某出版社に勤めていて、その酷い状況をテレビおよびラジオで注視していたので鮮明な記憶がある。ただ、相方は私より一回り近く歳が離れていることもあり、当時高校生で夏休みだったらしく長崎大水害のことをよく覚えていない、と言った。

最近の水害というと4年前の広島市を中心とした土砂災害が記憶に新しいが、私はなぜか今回の水害が長崎大水害のようになるのではという嫌な予感がしていた。しかし、同じ時間帯に安倍晋三をはじめとした50人近い自民党議員たちは「赤坂自民亭」と称して議員会館で長崎大水害のことを思い出すこともなく宴会にあけくれていた。

私は言いたい。「赤坂自民亭」でハシャいでいた自民党議員よ、長崎大水害のことを思い起こすことはなかったのか。広島土砂災害のことを思い出すことをなかったのか。一般市民である私ですら危惧しているのに、それを思い返すことができない政治家など無用の産物である。

自民党・公明党政治に早く終止符を打たなければ日本は滅びてしまう。
https://www.youtube.com/watch?v=Vl2azVToRnc

木曜日, 7月 12, 2018

柳亭市弥 & 春風亭朝之助@第28回チェロキー寄席

昨日(11日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で柳亭市弥と春風亭朝之助出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。

先々月聞いた春風亭正太郎と柳家ほたるは絵を得意とする落語家ということで「画伯の会」もしくは「絵師の会」と勝手に名をつけたが、今回は共に1984年生まれということで「84年生まれの会」もしくは「子年の会」または「ネズミの会」である。w

さて、演目は下記の通り。

柳亭市弥   『唐茄子屋』
春風亭朝之助 『蛙茶番』
 〜 仲入り 〜
春風亭朝之助 『幇間腹』
柳亭市弥   『禁酒番屋』

『唐茄子屋』は与太郎が掛け値なし、つまり原価でカボチャ(=唐茄子)を歩いてしまうという小話風な落語。柳亭市弥は7月上旬は柳亭左龍師匠らと共に東北を巡業してきたという。そこで毎日地元の人たちとの打ち上げで飲み食いして体重が3キロも増えてしまったとか。そのせいかどうかわからないが、話し方に以前より余裕がある。与太郎が生き生きして気持ちよかった。

『蛙茶番』は素人芝居の巨大なガマガエル役を急な代役で頼まれた定吉と舞台番の半次が繰り広げるドタバタ劇。春風亭朝之助は師匠の春風亭一朝譲りの江戸弁で話を進めていくが、若干空回りの感がある。江戸弁は威勢がいいだけではないと思う。

『幇間腹』は道楽な若旦那が幇間の一八に針を打つという話。今度は春風亭朝之助の威勢のいい江戸弁は快活に聞こえてくる。不思議である。また一八の喜怒哀楽や裏表の顔の使い分け方など素晴らしい。

『禁酒番屋』は酒の番人がいるところをどう通り抜けるかという話で、そのために、酒屋がカステラ屋なったり、油屋、そして最後に小便屋までになるという滑稽噺。イケメンで女性にも人気がある柳亭市弥だが、この噺のような下世話な噺が意外というかかなり合う。この噺、師匠の柳亭市馬でも聞いたことがあるし、柳家喬太郎でも聞いたことがある。柳家の得意どころなのだろうが、市弥も是非とも十八番にしてもらいたい。

木曜日, 5月 10, 2018

柳家ほたる & 春風亭正太郎@第26回チェロキー寄席

昨日(9日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で柳家ほたると春風亭正太郎出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。

落語家というのは多彩な趣味(もしくは芸)を持つ人がいる。なかでも音楽や踊りを得意とする人は多い。また今回出演の2人のように絵を得意とする人もいる。柳家ほたるは猫の絵を、そして春風亭正太郎は似顔絵を得意とする。その意味において今回の二人会は「画伯の会」もしくは「絵師の会」でもある。w さて、演目は下記の通り。

柳家ほたる  『たらちね』
春風亭正太郎 『たがや』
 〜 仲入り 〜
春風亭正太郎 『看板のピン』
柳家ほたる  『幾代餅』

1席目。マクラは師匠(柳家権太楼)と一緒に行った熊本での出囃子の曲を間違えるという気のきいた(?)おばちゃんの話。「たらちね」は長屋の八五郎と言葉使いが馬鹿丁寧なお清との珍問答を繰り返すという噺だが、柳家ほたるはこれをほとんど淀みもなく語る。ただ、八五郎に比べてお清のインパクトが薄い。もっともっと大袈裟に表現してもいいのかもしれない。

2席目。両国の川開きの日(5月28日)に両国橋の上で、たがや(桶や樽などを竹で絞めるロープのようなものを売る商売)と侍の一行の経緯を描く話。基本的に町人が武士を揶揄する話。春風亭正太郎は情景描写が上手い。川開きでごった返す両国橋の情景というか状況を上手く語る。ただ、逆にたがやが侍を討ち果たす描写が少し生々しく滑稽さがない。これではオチに面白みがでない。難しい落語である。

3席目。「看板のピン」は博打の話である。オチが聞いている人にも想像がつくという話なので、いかに独自の話術で話を進めていくかという落語である。春風亭正太郎は軽妙かつスマートに話を展開していく。ただ、壺振りのシーンをもっと誇張した方がオチに面白みが出るような・・・。

4席目。「幾代餅」は個人的には大好きな演目。つき米屋(精米店)の奉公人清蔵が吉原の花魁・幾代太夫を娶るという、ある意味夢物語のような廓噺。清蔵の実直ぶりと花魁の艶かさの対比をいかに描くかで話の良し悪しが決まる。柳家ほたるはその風貌からして、清蔵の実直ぶりは無難にこなすが、幾代太夫の吉原にいる悲哀というか憂愁が今ひとつ。これを克服すれば、十八番にできるのではないだろうか。

それにしても、今回の会は長かった。仲入りまでに1時間10分あった。普通の落語会なら普通だが、チェロキーだと長く感じてしまう。というのも、木の椅子に長時間直接座るとお尻が痛くなる。せめて座布団もしくは小さなクッションが欲しい。

さて、次回(6月13日)のチェロキー寄席は入船亭小辰と入舟辰之助の「扇辰弟子の会」。東急東横線沿線でお時間のある方は是非とも足を運んでみてください。

金曜日, 5月 04, 2018

イチロー実質的引退

イチローが実質的にMLBを引退した。マリナーズはイチローと生涯契約を結ぶと言っているが、イチローの今シーズンの出場は今後なし。これは現監督がイチローに対して戦力外通告をしたものの、マリナーズは大功労者であるイチローに対する敬意と同時に、来年日本で開かれるMLB開幕戦(アスレチックス vs マリナーズ)のことを配慮したと思われる。つまり、来年の監督次第だがイチローは来年の日本での開幕戦および本拠地シアトルでの開幕戦を最後に登録メンバーを離れるだろう。つまりこれが完全な引退になる。

昨今のイチローの打席を見ていると、そのほとんどが振り遅れの内野ゴロばかりである。これは間違いなく動体視力の低下によるものである。こうなると、残念なことだが昨今のゴロよりフライを好むメジャーの監督としてもこういった選手を使いたいと思わなくなる。ということで、球団は現監督およびイチローのことを思い、今回のような処遇(=措置)になったのだろうと思う。

いずれにしろ、いつかこういうときがイチローにもやってくるとは思っていた。イチローは20代の頃好きだったTVゲームも封印して、動体視力の低下をしないように心がけていた。他にも野菜をほとんど食べないという偏食も改善していたと聞く。しかしながら、改善できないのは寄る年波である。なんと言っても44歳である。イチローと比較するのはおこがましいが、私は30代後半にバックパックで旅する力の限界を感じた。おそらく多くの人が似たような体力の限界を感じたことがあると思う。

イチローは2001年から18年MLBに在籍している。その間に新人王、MVP、首位打者、ゴールドグラブなど数多くの賞を受賞して、通算安打も3000本を越えている。しかし、そんな彼が得ていないものがある。ワールドシリーズ・チャンピンリングである。松井秀喜、田口壮、松坂大輔らが得ているリングを彼は持っていない。ただ、イチローが生涯契約を続けるならば、いつかマリナーズが優勝すればそのリングを手にすることができるかもしれない。しかし、その生涯契約がいつまで続くかは神のみぞ知るである。

火曜日, 5月 01, 2018

毎日新聞落語会「渋谷に福来たる 桃月庵白酒芸術選奨新人賞受賞記念的な」

昨日(4月30日)は渋谷区文化総合センター大和田で開かれた毎日新聞落語会「渋谷に福来たる 桃月庵白酒芸術選奨新人賞受賞記念的な」を聞いてきた。本題に入る前に芸術選奨新人賞について軽く説明を。

芸術選奨新人賞(大衆芸能部門)はそう簡単に受賞できる賞ではない。2000年以降に演芸関係で受賞した人は下記の通り。

2001年 桂吉朝 『七段目』『百年目』など
2002年 笑福亭鶴笑 パペット落語『不思議の星のアリス』など
2003年 桂文我 『蛸芝居』『盆唄』など
2005年 柳家喬太郎 人情噺『錦の舞衣』など
2008年 林家たい平 『林家たい平独演会』など
2013年 古今亭菊之丞 『第七回 古今亭菊之丞独演会』など
2015年 桂吉弥 『噺家生活20周年記念 桂吉弥独演会』など
2016年 柳家三三 『定例三三独演』など
2017年 土屋伸之、塙宣之 『ナイツ独演会』など
2018年 桃月庵白酒 『桃月庵白酒25周年記念落語会的な』など

これをみればわかるように今世紀に入って東京の演芸関係者で受賞しているのは柳家喬太郎、林家たい平、古今亭菊之丞、柳家三三、ナイツ、桃月庵白酒のたった6人(組)だけなのである。一方、新人賞でなく2000年以降に芸術選奨大臣賞を受賞しているのは古今亭志ん朝、柳家小三治、桂歌丸、立川志の輔、柳家権太楼、柳家さん喬、五街道雲助、春風亭小朝、入船亭扇遊と錚々たるメンバーである。

こうみると、桃月庵白酒の受賞は喜ばしいことではあるが、かなりのプレッシャーになるやもしれない。(笑)

ということで、オープニングトークではそういうプレシャーのかかる話かと思ったら、三遊亭白鳥がいきなり「おれ、去年の芸術祭に参加したんだよ。ある人に絶対獲れるからとそそのかされたら落選よ」と。これには一同「そんなのに参加していたの」「いったい誰にのそそのかされたの」で大盛り上がり。ということで、オープニングトークは予定より10分超過して高座へ。で、演目は下記の通り。

桃月庵白酒 『宗論』
三遊亭白鳥 『黄昏のライバル〜白酒編〜』
 〜 仲入り 〜
林家彦いち 『掛け声指南』
桃月庵白酒 『寝床』

1席目は本来は参加予定のはずだった(?)という春風亭一之輔に代わって桃月庵白酒が白鳥師匠曰くやっつけ仕事の『宗論』を。これは大正時代に実業家にして劇作家だった益田太郎冠者が書いた宗教を茶化した噺。本来は15分ぐらいある噺だと思うが、白酒はやっつけ仕事よろしく10分程度で終了。やっつけ仕事ながらも場内は爆笑。とにかく彼は客の反応を掴むのが上手い。

2席目は三遊亭白鳥の桃月庵白酒の20年後を予言する未来話。三遊亭白鳥は三遊亭圓丈門下ということもあり、新作落語の旗手。今回の落語も自作のオリジナルを桃月庵白酒に置き換えて、最後には駕籠かきと雲助(白酒の師匠)をかけたオチも披露。あまりの素晴らしいオチに唖然。拍手もできずごめんなさい。w

3席目は林家彦いちの有名な新作落語。ボクシングのセコンドとして働くタイ人のムァンチャイが言葉の壁を乗り越えるのため、新宿の街頭で日本語を勉強して、再びセコンドに戻るという話。とにかくその言葉遊びが荒唐無稽。彦いちは林家木久扇門下ということもあり、師匠譲りのイヤミのなさがいい。白鳥師匠には悪いが、次の芸術選新人賞は彼かもしれない。w

トリは芸術選奨新人賞受賞の桃月庵白酒。これまでに数多くの「寝床」を聞いてきたが、白酒の「寝床」はケレン味がなく、これまで聞いてきた「寝床」では最高の出来。義太夫好きの商家の旦那であり長屋の大家でもある男と番頭である繁蔵のやりとりがとにかく巧妙。さすが新人賞受賞である。次はぜひとも20年後に師匠ももらっている芸術選奨大臣賞を受賞してもらいたい。w

木曜日, 4月 26, 2018

お守りは2ドル札

2ドル札をご存知だろうか。


ドル紙幣で馴染み深いのは一に1ドルまたは20ドル。続いて5ドル、10ドルとなる。他に50ドル、100ドルと高額紙幣があるが、2ドル札はめったにお目にかかれない。

2ドル札が発行されたのは1976年の建国200年祭の年だったそうである。その年に私はアメリカにいたので、何度かお目にかかっていたが、これはいずれ珍しくなるのではないかと思い、それ以来1枚だけ(写真)常に隠し持っている。


2ドル札の表は第3代大統領のトーマス・ジェファーソン。そして裏は独立宣言署名の図である。ちなみに、ドル紙幣の裏は1ドルと2ドル以外はすべて建物ばかりで味気ない。

さて、この2ドル札。以前は使いがってが悪いとか自販機に使えないとか、日本の2000円札に近い不評だったが、最近ではレアなこともあり人気があるそうだ。私が手に入れたのは1976年だから、すでに42年もたっている。そう思うとこれは幸運のお札であり、お守りにもなっている。


月曜日, 4月 16, 2018

毎日新聞落語会「渋谷に福来たるSPECIAL 渋福 春成金」

先週の金曜(13日)は渋谷区文化総合センター大和田で開かれた毎日新聞落語会「渋谷に福来たるSPECIAL2018  渋福  春成金」を聞いてきた。成金とは落語芸術協会所属の二ツ目落語家と講談師11人で作るユニット。今回はそのなかでも人気者4人が出演ということでチケットは完売。出演者と演目は下記の通り。

春風亭昇々 『待ちわびて』
柳亭小痴楽 『あくび指南』
 〜 仲入り 〜
神田松之丞 『西行鼓ヶ滝』
桂宮治   『粗忽の釘』

春風亭昇々は2007年4月に春風亭昇太に入門。2011年4月に二ツ目に昇進。2016年第二回渋谷らくご大賞受賞。『待ちわびて』は落語界の高齢化を皮肉る共に現代の高齢化現象を風刺する新作落語。若者を意識して作られているだけであって、私を含めて50歳以上の高齢者(笑)にはげーム用語などが出てきて少々わかりずらい。また、落ち着きのない振る舞い立ち回りも少々気になる。これは師匠譲りだから仕方がないのかも。

柳亭小痴楽は5代目柳亭痴楽の次男。2005年16歳の時に11代目桂文治に前座修行に預けられ、桂ち太郎として初高座。2009年二ツ目昇進を期に3代目小痴楽を襲名。同時に父の弟弟子・柳亭楽輔の門下になる。柳亭小痴楽を聞くのは初めてだが、まだまだ若い。深みというか厚みがない。またオープニングトークで他の3人から「同じ日に同じ町で掛け持ちしては駄目」とイジられたように、どことなく手抜き感が否めなかった。これでは枕にでてきたが親父さんの着物を着るにはまだ時間がかかりそうである。

神田松之丞は2007年11月、3代目神田松鯉に入門。2012年に二ツ目昇進。2017年花形演芸大賞銀賞受賞。「西行鼓ヶ滝」は摂津にある鼓ヶ滝に行った西行が「伝え聞く 鼓ヶ滝に 来て見れば 沢辺に咲きし たんぽぽの花」と歌を詠むものの、夢のなかで近くに住む老夫婦と娘の3人に直されるという話。松之丞はとにかく声がいい。また声質の使い分けも上手い。彼のおかげで講談が人気になっているのも頷ける。

桂宮治は2008年に桂伸治に入門。2012年に二ツ目昇進。2012年10月NHK新人演芸大賞大賞受賞。まだ10年のキャリアだが、その風貌と風格は真打ち並。そして、その話し方は人を魅了させるパワーは素晴らしい。とにかく全力投球で自分の芸をまったく惜しみなく曝け出していく。それはある意味清々しい。

ということで、初めて「成金」の落語会を聞いてきたが、客席の半分は女性。それも30代から50代のいわゆる追っかけ的な人も多かった。この追っかけ的な人も1人では来るのでなく、友人知人と連れ添ってきている。「成金」は確実に落語人気の底辺を広げている。

木曜日, 3月 15, 2018

桂伸三 & 春風亭朝之助@第24回チェロキー寄席

昨日(14日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で桂伸三と春風亭朝之助出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。演目は下記の通り。

春風亭朝之助 『牛ほめ』
桂伸三    『蒟蒻問答』
 〜 仲入り 〜
桂伸三    『続・寿限無』
春風亭朝之助 『黄金餅』

チェロキー寄席の発起人は入船亭扇辰師匠だが、今回出演の二人は師匠の大学の後輩。師匠を含めて3人とも落研出身。その落研の教えには「プロにはならない」「落研内恋愛は禁止」というのがあるそうだが、春風亭朝之助はどちらも破ったとのこと。もちろん真偽のほどは落語家なので分からない。w

1席目は「牛ほめ」。与太郎噺でもっとも有名なお話。与太郎が伯父の佐兵衛の新築の家を褒めに行くが、そこで珍問答が繰り広げられる。春風亭朝之助にとっておそらく演じ慣れた演目なのだろう、淀みもなく得意の江戸弁も快活で聞いていて気持ちいい。

2席目は「蒟蒻問答」。ニセ坊主が住職の寺に諸国行脚中の永平寺の禅僧がやってきて、これまたニセ大僧侶に扮した蒟蒻屋の六兵衛との間で無言問答を行うというお話。桂伸三はこれまでチェロキー寄席で2回聞いているが、本当に上手くなっている。二ツ目にして正統派落語家としての品格というか厚みを身につけている。こんなに上手くなっているのだから、もっと注目されるべきだよなあ、と仲入りの時に彼の名前をネット検索したら、なんと3日前の11日に行われた第17回さがみはら若手落語家選手権で優勝しているではないか。そんなことをマクラでは何も言わないとは。言っていればご祝儀でもあげたのに。w

3席目は「続・寿限無」。話は寿限無が外国人(スペイン)の女性と結婚して子供を設けるという話だが、この相手の女性の名前も、子供につけようとする名前も寿限無同様に長い長い名前。それゆえに桂伸三は「蒟蒻問答」とはうって変わって、品格のカケラもなくただただ早口に喋りまくる。落語会ならではのこのギャップがいい。抱腹絶倒とはまではいかないが、本題である「寿限無」より面白い。この噺は伸三の創作のようである。お見事。

4席目は「黄金餅」。かなり難しい落語である。死体の胃の中に入っている2分金や1分金を取り出すために焼場で、腹だけは生焼けにしてくれと言い、見事に金をせしめるという話。ある意味悲惨でもあり、ある意味滑稽でもある。それゆえに、どちらにウエイトを置いて話せばいいのかで味わいが変わるような気がする。その意味において春風亭朝之助はどっちつかずで迷いがある。しかし、これから何度も噺をするうちに解決はするだろう。今後の健闘を祈る。それにしても、下谷山崎町の長屋を出て、麻布のお寺まで辿り着く道順の口上は鮮やかであった。

さて、次回(4月11日)のチェロキー寄席は入船亭小辰と入舟辰之助の「扇辰弟子の会」(豪華ゲストあり)。お時間のある方は是非とも足を運んでみてください。

水曜日, 2月 14, 2018

如月の三枚看板 喬太郎 + 文蔵 + 扇辰

昨日(13日)は銀座ブロッサムで開かれた落語会“9年目だヨ”「如月の三枚看板 喬太郎 + 文蔵 + 扇辰」を聞いてきた。チケットは完売。出演者と演目は下記の通り。

橘家かな文 『やかん』
入船亭扇辰 『紫檀楼古木』(したんろうふるき)
橘家文蔵  『化け物使い』
 〜 仲入り 〜
柳家喬太郎 『ぺたりこん』

開口一番の橘家かな文は橘家文蔵の弟子。昨年のこの会の開口一番も彼だった。噺の初めは彼の少し甲高い声がマイクに合わず耳にキンキンきたが、途中から音響さんが気づいたのかマイクのトーンを下げてとても聞きやすくなると共に、『やかん』の講談調部分からはテンポも良く、観客から大きな拍手をもらっていた。続いて登場した○○師匠も、どうしてあの師匠からどうしてこんな上手い前座さんが生まれるんだろうか、と感心しきりであった。同感。

出囃子がなぜか「Happy Birthday to You」。さて誰の誕生日だろうか、と登場したのは入船亭扇辰。実は私と扇辰師匠は最寄駅が一緒で、この日も東銀座まで同じ電車の車両で御一緒だった。で、扇辰は登場するなり舞台袖のお囃子・恩田えり社中に怒りの一喝(笑)をしてから本題に。『紫檀楼古木』はキセルの間にあるラオと呼ばれる竹を交換するラオ屋と御新造さんが狂歌を交わすというとても風情のある落語である。そのなかでラオ屋と御新造さんの間を行き来する女中のきよをうまく際立てさせて扇辰は噺を進めていく。「ラオ屋あぁ〜〜、キセル」という売り声の名調子と共に江戸の粋を十二分に味わせてもらえる一席だった。お見事。

続いては三代目橘家文蔵。まずは平昌オリンピックをマクラに。金がかかっていないオリピックは面白くない、と。私はどうして?と思ったら、師匠の金がかかっていないは賭け事の方であり思わず納得。(苦笑)そして、座布団に寝てのリュージュ姿には場内大爆笑。本題の『化け物使い』は人使いの粗いご隠居が人間ばかりでなく化け物までが音を上げてしまうという有名な噺。私はこの噺をこれまでに何人もの噺家で聞いてきたが、コワモテの師匠が化け物を心優しく演じるのに吹き出さざるをえなかった。文蔵師匠、三代目を襲名してそろそろ1年半になるが、風格も出てきて列記しとした橘家文蔵になっていた。よっ、男前!

仲入りを挟んでトリは柳家喬太郎。登場するやいなや観客に向かって「なんでみんなそんな服装なの、銀座でしょ、アルマーニを着なきゃ」と。これにはお客も唖然の大受け。そしては本題はサラリーマンの悲哀を描いた三遊亭圓丈作の『ぺたりこん』。机の上についた左手が離れなくなって、社員から備品扱いになってしまうというカフカか筒井康隆を思い浮かべてしまうシュールなお話。喬太郎師匠は古典も新作もオールマイティーな落語家であるが、初めて聞く不条理話も上手い。この人は本当にウルトラな噺家だ。

来年は節目の10回目。大いに楽しみである。

火曜日, 2月 06, 2018

美食日記『ロムデュタン シニエ ア・ニュ』(銀座)

久しぶりの美食日記。今回は昨年11月の伊勢丹シャンパーニュの祭典で手に入れた「ドゥーツ」のロゼと、手に入れにくい北海道ワイン「ドメイン・タカヒコ」のピノを美味しい料理と味わいがために、BYO(ワイン持ち込みOK)でGINZA SIX13階にある「ロム デュタン シニエ ア・ニュ」を訪れた。ここは広尾にあるアニュの姉妹店で昨年4月にオープン。シェフは広尾でスー・シェフとして活躍していた簑原祐一さん。支配人はメートルドテルだった新井哲成さんが務めている。

この日のメニューは下記の通り。

・アオリカのコンフィ
・鰤のセビーチェ
・白子のムニエル
・本日の鮮魚(桜鱒のポワレ)
・鮑と筍
・和牛のバベット
・シェーブル
・ワゴンデザート(モンブラン、プディングなど)
・飲み物(コーヒー)と小菓子

訪れたのは2月3日節分の日。席についてすぐ私が相方に「今年の恵方巻にはマグロやカニなどの高級食材をノリで巻いて、その上に金粉やキャビアが載っている15000円で売り出されたものがあるね」と話をしていたら、いきなり金粉とキャビアが乗ったアオリイカのコンフィがアミューズとして登場。これには私も思わず苦笑。

 

続く「鰤のセビーチェ」は鰤と大根のミルフィーユといった感じだが、そのテイストはどことなく和食感に満ちていていた。

「白子のムニエル」は春菊のペーストがポイント。春菊とバターなどを合わせたペーストは食材に広がりを与える美味なソース。これを使えば白身魚(例えば太刀魚)のポワレと合わせたら、美味しいだろうなあと想像が膨らむ。一方で相方は私も作ってみようかな、と。ほんまいかいなあ。

 

本日の鮮魚は「桜鱒のポワレ」。低温調理された桜鱒の身はほんのり温かくレアな感じだが、刺身と焼き魚の中間の味を見事に表現。泡のノイリーソース(?)にもマッチしていて美味。これには相方はこれは私は作れないなあ、と。当たり前でしょう。w

「鮑と筍」は試行錯誤の一品らしい。鮑をメインにするか魚のを挟んだ筍のどちらに比重を重くおくべきか迷っているらしかった。まあ、器からしてちょっと食べにくかったので、そこは改善してほしい。で、私は鮑はいつでも食べられるのだから、旬を大事にするならやはり筍をメインにする方に一票入れたい。

 

メインディッシュは「和牛のバベット」。バベットとはフランス語でヨダレカケという意味で、いわゆるハラミ肉で牛のなかでも稀少かつ恒久な部位。和牛はどこ産のものか知らないかとにかく柔らかく、赤身の旨味をしっかり表現。こうしたシンプルな味だけでも満足なのだが、それにスライスされた黒トリフもトッピングされ、トリフの薫りと共に食べる肉も美味しい。肉好きにはたまらないステーキだ。

 

デザートはシェーブルに始まり、ワゴンデザート(モンブラン、プディングなど)、そして最後に小菓子と飲み物の3連発。私は甘党でないので、ここらに関しては書くのはスルーさせてもらうが、相方はスイーツは別腹と言わんばかり、いろいろと訪張っていた。

 

こちらの店にはオープン1ヶ月後ぐらいに来たのだが、その時はまだ肩肘を張った感じの料理でちょっとという感じだったが、今回は腕を上げたというか妙な力が抜けていて、和のテイストをうまく取り入れた感性で、シェフの個性もしっかり表れていてとても好感がもてた。また、どの料理も持ち込んだシャンパンとワインにマッチしていて感謝感謝。あと写真を撮るのを忘れたが、軟水にもかかわらず炭酸が入っている「奥会津の炭酸水」というのがとても美味しかった。ヨーロッパの硬水の炭酸水に比べてマイルドで優しく飲みやすい。

土曜日, 1月 13, 2018

春風亭小朝・春風亭昇太・林家たい平 新春爆笑三人会@パーシモンホール

昨日(12日)はめぐろパーシモンホールで開かれた「春風亭小朝・春風亭昇太・林家たい平 新春爆笑三人会」を聞いてきた。昨年の会(出演者は違う)はちょっと空席が目立ったが今回は人気メンバーということもあり前売で完売。もちろん平日の昼公演ということもあり、客席のほとんどは高齢者ばかり。ただし女性客の方が男性客より多いのにはびっくり。誰が女性受けするのだろうか!? なお演目は下記の通り。

春風亭昇咲  『寿限無』
春風亭昇太  『看板の一』
春風亭小朝  『芝浜』
 〜 仲入り 〜
柳貴家雪之介  太神楽     
林家たい平  『猫の災難』

開口一番はイガグリ頭の春風亭昇咲。春風亭昇太の9番目の弟子。演目は前座お決まりの『寿限無』。昇咲の滑舌は明快だが、坊さん、父親、母親、子供、婆さんの声色の使い分けの変化がかなり乏しい。もう少し強弱、抑揚、間合いなどの工夫してもらいたい。まだまだ勉強、前座はつらいよ。

春風亭昇太は開口一番が自分の弟子が出ていたせいか、ちょっと気がきでない状態で登場。それでもマクラでお得意の「結婚できない」ネタをたっぷり披露。最後には「私は自分で稼いだ金は全部自分で使えるんだ」と開き直り。いいぞ。w さて『看板の一』(かんばんのピン)は博打話。新春や正月らしいネタではないが、それでもそれを滑稽かつ軽快にまくし立て行く。そのせいか、ちょっと聞きづらい部分もあったのが残念。

春風亭小朝はマクラもなく本題へ。小朝は所作もバッチリ、夫婦間のやり取り上手い。しかし、申し訳ないが髪型が悪い。体型や身なりで人を判断するのは悪いとわかっているが、落語は時代をも売る商売である。テレビに出る今風タレントとは違うのだ。というより、小朝はもはや以前言われた「金髪ブタ野郎」ではない。髪がかなり薄いので「金髪ハゲ野郎」状態なのである。これではいくら上手い落語も見聞きしていも興醒めしてしまう。その昔落語といえば寄席(定席)もしくラジオで聴くだけのものだったが、今やホール落語はあたり前の時代。そんな時に江戸時代の落語を話すのに金髪ハゲ野郎では様にならない。これではいくら上手くても江戸の情景が浮かび上がってこない。それゆえに、私は『芝浜』の最後の女将さんがお金を隠していたくだりでは目を瞑って聞いた。小朝には悪いがとてもじゃないが、あの顔および髪を見たら『芝浜』も芝浦の浜辺でなく、ハワイの浜辺になってしまう。古典に金髪はマッチしない。早く金髪に別れを告げるべきである。

仲入りがは皿回しの曲芸の大神楽。出刃包丁を使った芸には観客も「やめた方がいいよ」とか「怖い」とか余計なひそひそ声があちこちから。まあ、私は寄席(定席)で見慣れている上、彼が大神楽の大名人の後継者であることも知っているので、しっかりと柳貴家雪之介の芸を楽しむことができた。

林家たい平は素晴らしい。マクラでトイレネタを披露する同時に、『笑点』の「大月 vs 秩父」戦争の裏話というか先輩の三遊亭小遊三を立てることもする。そして、本題の『猫の災難』に入ると、こうも人は酒に酔うのかと思うぐらいの、酒の飲み方と酔い方をシラフで演じる。いや〜、とにかく面白い。説明の仕様がないほど面白い。『猫の災難』は爆笑王・柳家権太楼のメチャクチャに面白いのを聞いたことがあるが、それに負けずと劣らずたい平の『猫の災難』も素晴らしかった。権太楼の後を受け継ぐ爆笑王はたい平で決まりだ、と思わせる一席だった。

木曜日, 1月 11, 2018

第23回チェロキー寄席(柳亭市弥 & 春風亭一蔵)

昨日(10日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で春風亭一蔵と柳亭市弥出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。春風亭一蔵は江戸弁落語の第一人者・春風亭一朝(時代劇の江戸弁指導もしている)の弟子。柳亭市弥は落語協会会長であり、大相撲中継で花道側の席にたまに座っている柳亭市馬の弟子。なお、演目は下記の通り。

春風亭一蔵  『熊の皮』
柳亭市弥   『試し酒』
 〜 仲入り 〜
柳亭市弥   『初天神』
春風亭一蔵  『宿屋の富』

1席目は「熊の皮」。NHK『超入門 ! 落語 THE MOVIE』で三遊亭遊雀の語りで放映されたが、髪さんの尻に敷かれる情けない甚兵衛が、世話になっている医者へ行って、髪さんに言われた口上をしどろもどろで伝えるという噺。春風亭一蔵はその巨体(100キロ以上はある)を上下左右に動かしながら甚兵衛夫婦を滑稽に演じていくが、甚兵衛と医者のくだりになると少し甘くなってしまう。ある意味難しいオチなので、その点を明確にしてほしかった。

2席目は「試し酒」。五升飲むという大酒の久蔵の話。これは話うんぬんより、その飲む動作を楽しむ落語といった方がいいかもしれない。よく芝居では本当の酒飲みは酔う様が下手だと言われるが、これはどうやら落語にも似たようなところがあるのかもしれない。柳亭市弥は扇子を使って上手く飲むには飲むが、その酔い方が少し甘い。もう少し大胆に酔った様を表現しても酔いのではないだろうか。そうすれば「先に表の酒屋で試しに五升飲んできた」というオチが一層効果があるような気がする。

3席目は「初天神」。枕で意外にも高校・大学ではラグビー部だったとプロフィールを明かす柳亭市弥。よく見れば耳はラグビーをやっていた影響で少し変形している。で、正月ということで定番の「初天神」。これまでに何人も「初天神」を聞いてきたが、市弥が演じる子どもは最も可愛くそしてズル賢い。できれば、親父の声色にもう少し凄味を加えてもらえれば、言うことなしだ。市弥にはイケメンだけでなく愛嬌という武器もあるので、それを使って師匠のような古典落語の王道を歩んでていってもらいたい。

4席目は「宿屋の富」。神田馬喰町の宿屋に泊まった金には困らないという大ボラ吹きの男が、なけなしの金で買った富くじに当たるという滑稽噺。春風亭一蔵の噺ぶりは巨体を生かすべくツッパリで能動的である。下手な引き技などもない。前回ここで彼が演じた「阿武松」は秀逸だったが、それ比べると今回の「宿屋の富」は人の内面(金に対する欲)を引き技で表現してもよかったのではないかと思う。とはいえ、彼には大きな体を活かして大きな噺をする落語家になってもらいたい。