木曜日, 5月 10, 2018

柳家ほたる & 春風亭正太郎@第26回チェロキー寄席

昨日(9日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で柳家ほたると春風亭正太郎出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。

落語家というのは多彩な趣味(もしくは芸)を持つ人がいる。なかでも音楽や踊りを得意とする人は多い。また今回出演の2人のように絵を得意とする人もいる。柳家ほたるは猫の絵を、そして春風亭正太郎は似顔絵を得意とする。その意味において今回の二人会は「画伯の会」もしくは「絵師の会」でもある。w さて、演目は下記の通り。

柳家ほたる  『たらちね』
春風亭正太郎 『たがや』
 〜 仲入り 〜
春風亭正太郎 『看板のピン』
柳家ほたる  『幾代餅』

1席目。マクラは師匠(柳家権太楼)と一緒に行った熊本での出囃子の曲を間違えるという気のきいた(?)おばちゃんの話。「たらちね」は長屋の八五郎と言葉使いが馬鹿丁寧なお清との珍問答を繰り返すという噺だが、柳家ほたるはこれをほとんど淀みもなく語る。ただ、八五郎に比べてお清のインパクトが薄い。もっともっと大袈裟に表現してもいいのかもしれない。

2席目。両国の川開きの日(5月28日)に両国橋の上で、たがや(桶や樽などを竹で絞めるロープのようなものを売る商売)と侍の一行の経緯を描く話。基本的に町人が武士を揶揄する話。春風亭正太郎は情景描写が上手い。川開きでごった返す両国橋の情景というか状況を上手く語る。ただ、逆にたがやが侍を討ち果たす描写が少し生々しく滑稽さがない。これではオチに面白みがでない。難しい落語である。

3席目。「看板のピン」は博打の話である。オチが聞いている人にも想像がつくという話なので、いかに独自の話術で話を進めていくかという落語である。春風亭正太郎は軽妙かつスマートに話を展開していく。ただ、壺振りのシーンをもっと誇張した方がオチに面白みが出るような・・・。

4席目。「幾代餅」は個人的には大好きな演目。つき米屋(精米店)の奉公人清蔵が吉原の花魁・幾代太夫を娶るという、ある意味夢物語のような廓噺。清蔵の実直ぶりと花魁の艶かさの対比をいかに描くかで話の良し悪しが決まる。柳家ほたるはその風貌からして、清蔵の実直ぶりは無難にこなすが、幾代太夫の吉原にいる悲哀というか憂愁が今ひとつ。これを克服すれば、十八番にできるのではないだろうか。

それにしても、今回の会は長かった。仲入りまでに1時間10分あった。普通の落語会なら普通だが、チェロキーだと長く感じてしまう。というのも、木の椅子に長時間直接座るとお尻が痛くなる。せめて座布団もしくは小さなクッションが欲しい。

さて、次回(6月13日)のチェロキー寄席は入船亭小辰と入舟辰之助の「扇辰弟子の会」。東急東横線沿線でお時間のある方は是非とも足を運んでみてください。

金曜日, 5月 04, 2018

イチロー実質的引退

イチローが実質的にMLBを引退した。マリナーズはイチローと生涯契約を結ぶと言っているが、イチローの今シーズンの出場は今後なし。これは現監督がイチローに対して戦力外通告をしたものの、マリナーズは大功労者であるイチローに対する敬意と同時に、来年日本で開かれるMLB開幕戦(アスレチックス vs マリナーズ)のことを配慮したと思われる。つまり、来年の監督次第だがイチローは来年の日本での開幕戦および本拠地シアトルでの開幕戦を最後に登録メンバーを離れるだろう。つまりこれが完全な引退になる。

昨今のイチローの打席を見ていると、そのほとんどが振り遅れの内野ゴロばかりである。これは間違いなく動体視力の低下によるものである。こうなると、残念なことだが昨今のゴロよりフライを好むメジャーの監督としてもこういった選手を使いたいと思わなくなる。ということで、球団は現監督およびイチローのことを思い、今回のような処遇(=措置)になったのだろうと思う。

いずれにしろ、いつかこういうときがイチローにもやってくるとは思っていた。イチローは20代の頃好きだったTVゲームも封印して、動体視力の低下をしないように心がけていた。他にも野菜をほとんど食べないという偏食も改善していたと聞く。しかしながら、改善できないのは寄る年波である。なんと言っても44歳である。イチローと比較するのはおこがましいが、私は30代後半にバックパックで旅する力の限界を感じた。おそらく多くの人が似たような体力の限界を感じたことがあると思う。

イチローは2001年から18年MLBに在籍している。その間に新人王、MVP、首位打者、ゴールドグラブなど数多くの賞を受賞して、通算安打も3000本を越えている。しかし、そんな彼が得ていないものがある。ワールドシリーズ・チャンピンリングである。松井秀喜、田口壮、松坂大輔らが得ているリングを彼は持っていない。ただ、イチローが生涯契約を続けるならば、いつかマリナーズが優勝すればそのリングを手にすることができるかもしれない。しかし、その生涯契約がいつまで続くかは神のみぞ知るである。

火曜日, 5月 01, 2018

毎日新聞落語会「渋谷に福来たる 桃月庵白酒芸術選奨新人賞受賞記念的な」

昨日(4月30日)は渋谷区文化総合センター大和田で開かれた毎日新聞落語会「渋谷に福来たる 桃月庵白酒芸術選奨新人賞受賞記念的な」を聞いてきた。本題に入る前に芸術選奨新人賞について軽く説明を。

芸術選奨新人賞(大衆芸能部門)はそう簡単に受賞できる賞ではない。2000年以降に演芸関係で受賞した人は下記の通り。

2001年 桂吉朝 『七段目』『百年目』など
2002年 笑福亭鶴笑 パペット落語『不思議の星のアリス』など
2003年 桂文我 『蛸芝居』『盆唄』など
2005年 柳家喬太郎 人情噺『錦の舞衣』など
2008年 林家たい平 『林家たい平独演会』など
2013年 古今亭菊之丞 『第七回 古今亭菊之丞独演会』など
2015年 桂吉弥 『噺家生活20周年記念 桂吉弥独演会』など
2016年 柳家三三 『定例三三独演』など
2017年 土屋伸之、塙宣之 『ナイツ独演会』など
2018年 桃月庵白酒 『桃月庵白酒25周年記念落語会的な』など

これをみればわかるように今世紀に入って東京の演芸関係者で受賞しているのは柳家喬太郎、林家たい平、古今亭菊之丞、柳家三三、ナイツ、桃月庵白酒のたった6人(組)だけなのである。一方、新人賞でなく2000年以降に芸術選奨大臣賞を受賞しているのは古今亭志ん朝、柳家小三治、桂歌丸、立川志の輔、柳家権太楼、柳家さん喬、五街道雲助、春風亭小朝、入船亭扇遊と錚々たるメンバーである。

こうみると、桃月庵白酒の受賞は喜ばしいことではあるが、かなりのプレッシャーになるやもしれない。(笑)

ということで、オープニングトークではそういうプレシャーのかかる話かと思ったら、三遊亭白鳥がいきなり「おれ、去年の芸術祭に参加したんだよ。ある人に絶対獲れるからとそそのかされたら落選よ」と。これには一同「そんなのに参加していたの」「いったい誰にのそそのかされたの」で大盛り上がり。ということで、オープニングトークは予定より10分超過して高座へ。で、演目は下記の通り。

桃月庵白酒 『宗論』
三遊亭白鳥 『黄昏のライバル〜白酒編〜』
 〜 仲入り 〜
林家彦いち 『掛け声指南』
桃月庵白酒 『寝床』

1席目は本来は参加予定のはずだった(?)という春風亭一之輔に代わって桃月庵白酒が白鳥師匠曰くやっつけ仕事の『宗論』を。これは大正時代に実業家にして劇作家だった益田太郎冠者が書いた宗教を茶化した噺。本来は15分ぐらいある噺だと思うが、白酒はやっつけ仕事よろしく10分程度で終了。やっつけ仕事ながらも場内は爆笑。とにかく彼は客の反応を掴むのが上手い。

2席目は三遊亭白鳥の桃月庵白酒の20年後を予言する未来話。三遊亭白鳥は三遊亭圓丈門下ということもあり、新作落語の旗手。今回の落語も自作のオリジナルを桃月庵白酒に置き換えて、最後には駕籠かきと雲助(白酒の師匠)をかけたオチも披露。あまりの素晴らしいオチに唖然。拍手もできずごめんなさい。w

3席目は林家彦いちの有名な新作落語。ボクシングのセコンドとして働くタイ人のムァンチャイが言葉の壁を乗り越えるのため、新宿の街頭で日本語を勉強して、再びセコンドに戻るという話。とにかくその言葉遊びが荒唐無稽。彦いちは林家木久扇門下ということもあり、師匠譲りのイヤミのなさがいい。白鳥師匠には悪いが、次の芸術選新人賞は彼かもしれない。w

トリは芸術選奨新人賞受賞の桃月庵白酒。これまでに数多くの「寝床」を聞いてきたが、白酒の「寝床」はケレン味がなく、これまで聞いてきた「寝床」では最高の出来。義太夫好きの商家の旦那であり長屋の大家でもある男と番頭である繁蔵のやりとりがとにかく巧妙。さすが新人賞受賞である。次はぜひとも20年後に師匠ももらっている芸術選奨大臣賞を受賞してもらいたい。w

木曜日, 4月 26, 2018

お守りは2ドル札

2ドル札をご存知だろうか。


ドル紙幣で馴染み深いのは一に1ドルまたは20ドル。続いて5ドル、10ドルとなる。他に50ドル、100ドルと高額紙幣があるが、2ドル札はめったにお目にかかれない。

2ドル札が発行されたのは1976年の建国200年祭の年だったそうである。その年に私はアメリカにいたので、何度かお目にかかっていたが、これはいずれ珍しくなるのではないかと思い、それ以来1枚だけ(写真)常に隠し持っている。


2ドル札の表は第3代大統領のトーマス・ジェファーソン。そして裏は独立宣言署名の図である。ちなみに、ドル紙幣の裏は1ドルと2ドル以外はすべて建物ばかりで味気ない。

さて、この2ドル札。以前は使いがってが悪いとか自販機に使えないとか、日本の2000円札に近い不評だったが、最近ではレアなこともあり人気があるそうだ。私が手に入れたのは1976年だから、すでに42年もたっている。そう思うとこれは幸運のお札であり、お守りにもなっている。


月曜日, 4月 16, 2018

毎日新聞落語会「渋谷に福来たるSPECIAL 渋福 春成金」

先週の金曜(13日)は渋谷区文化総合センター大和田で開かれた毎日新聞落語会「渋谷に福来たるSPECIAL2018  渋福  春成金」を聞いてきた。成金とは落語芸術協会所属の二ツ目落語家と講談師11人で作るユニット。今回はそのなかでも人気者4人が出演ということでチケットは完売。出演者と演目は下記の通り。

春風亭昇々 『待ちわびて』
柳亭小痴楽 『あくび指南』
 〜 仲入り 〜
神田松之丞 『西行鼓ヶ滝』
桂宮治   『粗忽の釘』

春風亭昇々は2007年4月に春風亭昇太に入門。2011年4月に二ツ目に昇進。2016年第二回渋谷らくご大賞受賞。『待ちわびて』は落語界の高齢化を皮肉る共に現代の高齢化現象を風刺する新作落語。若者を意識して作られているだけであって、私を含めて50歳以上の高齢者(笑)にはげーム用語などが出てきて少々わかりずらい。また、落ち着きのない振る舞い立ち回りも少々気になる。これは師匠譲りだから仕方がないのかも。

柳亭小痴楽は5代目柳亭痴楽の次男。2005年16歳の時に11代目桂文治に前座修行に預けられ、桂ち太郎として初高座。2009年二ツ目昇進を期に3代目小痴楽を襲名。同時に父の弟弟子・柳亭楽輔の門下になる。柳亭小痴楽を聞くのは初めてだが、まだまだ若い。深みというか厚みがない。またオープニングトークで他の3人から「同じ日に同じ町で掛け持ちしては駄目」とイジられたように、どことなく手抜き感が否めなかった。これでは枕にでてきたが親父さんの着物を着るにはまだ時間がかかりそうである。

神田松之丞は2007年11月、3代目神田松鯉に入門。2012年に二ツ目昇進。2017年花形演芸大賞銀賞受賞。「西行鼓ヶ滝」は摂津にある鼓ヶ滝に行った西行が「伝え聞く 鼓ヶ滝に 来て見れば 沢辺に咲きし たんぽぽの花」と歌を詠むものの、夢のなかで近くに住む老夫婦と娘の3人に直されるという話。松之丞はとにかく声がいい。また声質の使い分けも上手い。彼のおかげで講談が人気になっているのも頷ける。

桂宮治は2008年に桂伸治に入門。2012年に二ツ目昇進。2012年10月NHK新人演芸大賞大賞受賞。まだ10年のキャリアだが、その風貌と風格は真打ち並。そして、その話し方は人を魅了させるパワーは素晴らしい。とにかく全力投球で自分の芸をまったく惜しみなく曝け出していく。それはある意味清々しい。

ということで、初めて「成金」の落語会を聞いてきたが、客席の半分は女性。それも30代から50代のいわゆる追っかけ的な人も多かった。この追っかけ的な人も1人では来るのでなく、友人知人と連れ添ってきている。「成金」は確実に落語人気の底辺を広げている。

木曜日, 3月 15, 2018

桂伸三 & 春風亭朝之助@第24回チェロキー寄席

昨日(14日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で桂伸三と春風亭朝之助出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。演目は下記の通り。

春風亭朝之助 『牛ほめ』
桂伸三    『蒟蒻問答』
 〜 仲入り 〜
桂伸三    『続・寿限無』
春風亭朝之助 『黄金餅』

チェロキー寄席の発起人は入船亭扇辰師匠だが、今回出演の二人は師匠の大学の後輩。師匠を含めて3人とも落研出身。その落研の教えには「プロにはならない」「落研内恋愛は禁止」というのがあるそうだが、春風亭朝之助はどちらも破ったとのこと。もちろん真偽のほどは落語家なので分からない。w

1席目は「牛ほめ」。与太郎噺でもっとも有名なお話。与太郎が伯父の佐兵衛の新築の家を褒めに行くが、そこで珍問答が繰り広げられる。春風亭朝之助にとっておそらく演じ慣れた演目なのだろう、淀みもなく得意の江戸弁も快活で聞いていて気持ちいい。

2席目は「蒟蒻問答」。ニセ坊主が住職の寺に諸国行脚中の永平寺の禅僧がやってきて、これまたニセ大僧侶に扮した蒟蒻屋の六兵衛との間で無言問答を行うというお話。桂伸三はこれまでチェロキー寄席で2回聞いているが、本当に上手くなっている。二ツ目にして正統派落語家としての品格というか厚みを身につけている。こんなに上手くなっているのだから、もっと注目されるべきだよなあ、と仲入りの時に彼の名前をネット検索したら、なんと3日前の11日に行われた第17回さがみはら若手落語家選手権で優勝しているではないか。そんなことをマクラでは何も言わないとは。言っていればご祝儀でもあげたのに。w

3席目は「続・寿限無」。話は寿限無が外国人(スペイン)の女性と結婚して子供を設けるという話だが、この相手の女性の名前も、子供につけようとする名前も寿限無同様に長い長い名前。それゆえに桂伸三は「蒟蒻問答」とはうって変わって、品格のカケラもなくただただ早口に喋りまくる。落語会ならではのこのギャップがいい。抱腹絶倒とはまではいかないが、本題である「寿限無」より面白い。この噺は伸三の創作のようである。お見事。

4席目は「黄金餅」。かなり難しい落語である。死体の胃の中に入っている2分金や1分金を取り出すために焼場で、腹だけは生焼けにしてくれと言い、見事に金をせしめるという話。ある意味悲惨でもあり、ある意味滑稽でもある。それゆえに、どちらにウエイトを置いて話せばいいのかで味わいが変わるような気がする。その意味において春風亭朝之助はどっちつかずで迷いがある。しかし、これから何度も噺をするうちに解決はするだろう。今後の健闘を祈る。それにしても、下谷山崎町の長屋を出て、麻布のお寺まで辿り着く道順の口上は鮮やかであった。

さて、次回(4月11日)のチェロキー寄席は入船亭小辰と入舟辰之助の「扇辰弟子の会」(豪華ゲストあり)。お時間のある方は是非とも足を運んでみてください。

水曜日, 2月 14, 2018

如月の三枚看板 喬太郎 + 文蔵 + 扇辰

昨日(13日)は銀座ブロッサムで開かれた落語会“9年目だヨ”「如月の三枚看板 喬太郎 + 文蔵 + 扇辰」を聞いてきた。チケットは完売。出演者と演目は下記の通り。

橘家かな文 『やかん』
入船亭扇辰 『紫檀楼古木』(したんろうふるき)
橘家文蔵  『化け物使い』
 〜 仲入り 〜
柳家喬太郎 『ぺたりこん』

開口一番の橘家かな文は橘家文蔵の弟子。昨年のこの会の開口一番も彼だった。噺の初めは彼の少し甲高い声がマイクに合わず耳にキンキンきたが、途中から音響さんが気づいたのかマイクのトーンを下げてとても聞きやすくなると共に、『やかん』の講談調部分からはテンポも良く、観客から大きな拍手をもらっていた。続いて登場した○○師匠も、どうしてあの師匠からどうしてこんな上手い前座さんが生まれるんだろうか、と感心しきりであった。同感。

出囃子がなぜか「Happy Birthday to You」。さて誰の誕生日だろうか、と登場したのは入船亭扇辰。実は私と扇辰師匠は最寄駅が一緒で、この日も東銀座まで同じ電車の車両で御一緒だった。で、扇辰は登場するなり舞台袖のお囃子・恩田えり社中に怒りの一喝(笑)をしてから本題に。『紫檀楼古木』はキセルの間にあるラオと呼ばれる竹を交換するラオ屋と御新造さんが狂歌を交わすというとても風情のある落語である。そのなかでラオ屋と御新造さんの間を行き来する女中のきよをうまく際立てさせて扇辰は噺を進めていく。「ラオ屋あぁ〜〜、キセル」という売り声の名調子と共に江戸の粋を十二分に味わせてもらえる一席だった。お見事。

続いては三代目橘家文蔵。まずは平昌オリンピックをマクラに。金がかかっていないオリピックは面白くない、と。私はどうして?と思ったら、師匠の金がかかっていないは賭け事の方であり思わず納得。(苦笑)そして、座布団に寝てのリュージュ姿には場内大爆笑。本題の『化け物使い』は人使いの粗いご隠居が人間ばかりでなく化け物までが音を上げてしまうという有名な噺。私はこの噺をこれまでに何人もの噺家で聞いてきたが、コワモテの師匠が化け物を心優しく演じるのに吹き出さざるをえなかった。文蔵師匠、三代目を襲名してそろそろ1年半になるが、風格も出てきて列記しとした橘家文蔵になっていた。よっ、男前!

仲入りを挟んでトリは柳家喬太郎。登場するやいなや観客に向かって「なんでみんなそんな服装なの、銀座でしょ、アルマーニを着なきゃ」と。これにはお客も唖然の大受け。そしては本題はサラリーマンの悲哀を描いた三遊亭圓丈作の『ぺたりこん』。机の上についた左手が離れなくなって、社員から備品扱いになってしまうというカフカか筒井康隆を思い浮かべてしまうシュールなお話。喬太郎師匠は古典も新作もオールマイティーな落語家であるが、初めて聞く不条理話も上手い。この人は本当にウルトラな噺家だ。

来年は節目の10回目。大いに楽しみである。

火曜日, 2月 06, 2018

美食日記『ロムデュタン シニエ ア・ニュ』(銀座)

久しぶりの美食日記。今回は昨年11月の伊勢丹シャンパーニュの祭典で手に入れた「ドゥーツ」のロゼと、手に入れにくい北海道ワイン「ドメイン・タカヒコ」のピノを美味しい料理と味わいがために、BYO(ワイン持ち込みOK)でGINZA SIX13階にある「ロム デュタン シニエ ア・ニュ」を訪れた。ここは広尾にあるアニュの姉妹店で昨年4月にオープン。シェフは広尾でスー・シェフとして活躍していた簑原祐一さん。支配人はメートルドテルだった新井哲成さんが務めている。

この日のメニューは下記の通り。

・アオリカのコンフィ
・鰤のセビーチェ
・白子のムニエル
・本日の鮮魚(桜鱒のポワレ)
・鮑と筍
・和牛のバベット
・シェーブル
・ワゴンデザート(モンブラン、プディングなど)
・飲み物(コーヒー)と小菓子

訪れたのは2月3日節分の日。席についてすぐ私が相方に「今年の恵方巻にはマグロやカニなどの高級食材をノリで巻いて、その上に金粉やキャビアが載っている15000円で売り出されたものがあるね」と話をしていたら、いきなり金粉とキャビアが乗ったアオリイカのコンフィがアミューズとして登場。これには私も思わず苦笑。

 

続く「鰤のセビーチェ」は鰤と大根のミルフィーユといった感じだが、そのテイストはどことなく和食感に満ちていていた。

「白子のムニエル」は春菊のペーストがポイント。春菊とバターなどを合わせたペーストは食材に広がりを与える美味なソース。これを使えば白身魚(例えば太刀魚)のポワレと合わせたら、美味しいだろうなあと想像が膨らむ。一方で相方は私も作ってみようかな、と。ほんまいかいなあ。

 

本日の鮮魚は「桜鱒のポワレ」。低温調理された桜鱒の身はほんのり温かくレアな感じだが、刺身と焼き魚の中間の味を見事に表現。泡のノイリーソース(?)にもマッチしていて美味。これには相方はこれは私は作れないなあ、と。当たり前でしょう。w

「鮑と筍」は試行錯誤の一品らしい。鮑をメインにするか魚のを挟んだ筍のどちらに比重を重くおくべきか迷っているらしかった。まあ、器からしてちょっと食べにくかったので、そこは改善してほしい。で、私は鮑はいつでも食べられるのだから、旬を大事にするならやはり筍をメインにする方に一票入れたい。

 

メインディッシュは「和牛のバベット」。バベットとはフランス語でヨダレカケという意味で、いわゆるハラミ肉で牛のなかでも稀少かつ恒久な部位。和牛はどこ産のものか知らないかとにかく柔らかく、赤身の旨味をしっかり表現。こうしたシンプルな味だけでも満足なのだが、それにスライスされた黒トリフもトッピングされ、トリフの薫りと共に食べる肉も美味しい。肉好きにはたまらないステーキだ。

 

デザートはシェーブルに始まり、ワゴンデザート(モンブラン、プディングなど)、そして最後に小菓子と飲み物の3連発。私は甘党でないので、ここらに関しては書くのはスルーさせてもらうが、相方はスイーツは別腹と言わんばかり、いろいろと訪張っていた。

 

こちらの店にはオープン1ヶ月後ぐらいに来たのだが、その時はまだ肩肘を張った感じの料理でちょっとという感じだったが、今回は腕を上げたというか妙な力が抜けていて、和のテイストをうまく取り入れた感性で、シェフの個性もしっかり表れていてとても好感がもてた。また、どの料理も持ち込んだシャンパンとワインにマッチしていて感謝感謝。あと写真を撮るのを忘れたが、軟水にもかかわらず炭酸が入っている「奥会津の炭酸水」というのがとても美味しかった。ヨーロッパの硬水の炭酸水に比べてマイルドで優しく飲みやすい。

土曜日, 1月 13, 2018

春風亭小朝・春風亭昇太・林家たい平 新春爆笑三人会@パーシモンホール

昨日(12日)はめぐろパーシモンホールで開かれた「春風亭小朝・春風亭昇太・林家たい平 新春爆笑三人会」を聞いてきた。昨年の会(出演者は違う)はちょっと空席が目立ったが今回は人気メンバーということもあり前売で完売。もちろん平日の昼公演ということもあり、客席のほとんどは高齢者ばかり。ただし女性客の方が男性客より多いのにはびっくり。誰が女性受けするのだろうか!? なお演目は下記の通り。

春風亭昇咲  『寿限無』
春風亭昇太  『看板の一』
春風亭小朝  『芝浜』
 〜 仲入り 〜
柳貴家雪之介  太神楽     
林家たい平  『猫の災難』

開口一番はイガグリ頭の春風亭昇咲。春風亭昇太の9番目の弟子。演目は前座お決まりの『寿限無』。昇咲の滑舌は明快だが、坊さん、父親、母親、子供、婆さんの声色の使い分けの変化がかなり乏しい。もう少し強弱、抑揚、間合いなどの工夫してもらいたい。まだまだ勉強、前座はつらいよ。

春風亭昇太は開口一番が自分の弟子が出ていたせいか、ちょっと気がきでない状態で登場。それでもマクラでお得意の「結婚できない」ネタをたっぷり披露。最後には「私は自分で稼いだ金は全部自分で使えるんだ」と開き直り。いいぞ。w さて『看板の一』(かんばんのピン)は博打話。新春や正月らしいネタではないが、それでもそれを滑稽かつ軽快にまくし立て行く。そのせいか、ちょっと聞きづらい部分もあったのが残念。

春風亭小朝はマクラもなく本題へ。小朝は所作もバッチリ、夫婦間のやり取り上手い。しかし、申し訳ないが髪型が悪い。体型や身なりで人を判断するのは悪いとわかっているが、落語は時代をも売る商売である。テレビに出る今風タレントとは違うのだ。というより、小朝はもはや以前言われた「金髪ブタ野郎」ではない。髪がかなり薄いので「金髪ハゲ野郎」状態なのである。これではいくら上手い落語も見聞きしていも興醒めしてしまう。その昔落語といえば寄席(定席)もしくラジオで聴くだけのものだったが、今やホール落語はあたり前の時代。そんな時に江戸時代の落語を話すのに金髪ハゲ野郎では様にならない。これではいくら上手くても江戸の情景が浮かび上がってこない。それゆえに、私は『芝浜』の最後の女将さんがお金を隠していたくだりでは目を瞑って聞いた。小朝には悪いがとてもじゃないが、あの顔および髪を見たら『芝浜』も芝浦の浜辺でなく、ハワイの浜辺になってしまう。古典に金髪はマッチしない。早く金髪に別れを告げるべきである。

仲入りがは皿回しの曲芸の大神楽。出刃包丁を使った芸には観客も「やめた方がいいよ」とか「怖い」とか余計なひそひそ声があちこちから。まあ、私は寄席(定席)で見慣れている上、彼が大神楽の大名人の後継者であることも知っているので、しっかりと柳貴家雪之介の芸を楽しむことができた。

林家たい平は素晴らしい。マクラでトイレネタを披露する同時に、『笑点』の「大月 vs 秩父」戦争の裏話というか先輩の三遊亭小遊三を立てることもする。そして、本題の『猫の災難』に入ると、こうも人は酒に酔うのかと思うぐらいの、酒の飲み方と酔い方をシラフで演じる。いや〜、とにかく面白い。説明の仕様がないほど面白い。『猫の災難』は爆笑王・柳家権太楼のメチャクチャに面白いのを聞いたことがあるが、それに負けずと劣らずたい平の『猫の災難』も素晴らしかった。権太楼の後を受け継ぐ爆笑王はたい平で決まりだ、と思わせる一席だった。

木曜日, 1月 11, 2018

第23回チェロキー寄席(柳亭市弥 & 春風亭一蔵)

昨日(10日)は学芸大学「Cherokee LIVE TAVERN」で春風亭一蔵と柳亭市弥出演の「チェロキー寄席」を聞いてきた。春風亭一蔵は江戸弁落語の第一人者・春風亭一朝(時代劇の江戸弁指導もしている)の弟子。柳亭市弥は落語協会会長であり、大相撲中継で花道側の席にたまに座っている柳亭市馬の弟子。なお、演目は下記の通り。

春風亭一蔵  『熊の皮』
柳亭市弥   『試し酒』
 〜 仲入り 〜
柳亭市弥   『初天神』
春風亭一蔵  『宿屋の富』

1席目は「熊の皮」。NHK『超入門 ! 落語 THE MOVIE』で三遊亭遊雀の語りで放映されたが、髪さんの尻に敷かれる情けない甚兵衛が、世話になっている医者へ行って、髪さんに言われた口上をしどろもどろで伝えるという噺。春風亭一蔵はその巨体(100キロ以上はある)を上下左右に動かしながら甚兵衛夫婦を滑稽に演じていくが、甚兵衛と医者のくだりになると少し甘くなってしまう。ある意味難しいオチなので、その点を明確にしてほしかった。

2席目は「試し酒」。五升飲むという大酒の久蔵の話。これは話うんぬんより、その飲む動作を楽しむ落語といった方がいいかもしれない。よく芝居では本当の酒飲みは酔う様が下手だと言われるが、これはどうやら落語にも似たようなところがあるのかもしれない。柳亭市弥は扇子を使って上手く飲むには飲むが、その酔い方が少し甘い。もう少し大胆に酔った様を表現しても酔いのではないだろうか。そうすれば「先に表の酒屋で試しに五升飲んできた」というオチが一層効果があるような気がする。

3席目は「初天神」。枕で意外にも高校・大学ではラグビー部だったとプロフィールを明かす柳亭市弥。よく見れば耳はラグビーをやっていた影響で少し変形している。で、正月ということで定番の「初天神」。これまでに何人も「初天神」を聞いてきたが、市弥が演じる子どもは最も可愛くそしてズル賢い。できれば、親父の声色にもう少し凄味を加えてもらえれば、言うことなしだ。市弥にはイケメンだけでなく愛嬌という武器もあるので、それを使って師匠のような古典落語の王道を歩んでていってもらいたい。

4席目は「宿屋の富」。神田馬喰町の宿屋に泊まった金には困らないという大ボラ吹きの男が、なけなしの金で買った富くじに当たるという滑稽噺。春風亭一蔵の噺ぶりは巨体を生かすべくツッパリで能動的である。下手な引き技などもない。前回ここで彼が演じた「阿武松」は秀逸だったが、それ比べると今回の「宿屋の富」は人の内面(金に対する欲)を引き技で表現してもよかったのではないかと思う。とはいえ、彼には大きな体を活かして大きな噺をする落語家になってもらいたい。