水曜日, 2月 14, 2018

如月の三枚看板 喬太郎 + 文蔵 + 扇辰

昨日(13日)は銀座ブロッサムで開かれた落語会“9年目だヨ”「如月の三枚看板 喬太郎 + 文蔵 + 扇辰」を聞いてきた。チケットは完売。出演者と演目は下記の通り。

橘家かな文 『やかん』
入船亭扇辰 『紫檀楼古木』(したんろうふるき)
橘家文蔵  『化け物使い』
 〜 仲入り 〜
柳家喬太郎 『ぺたりこん』

開口一番の橘家かな文は橘家文蔵の弟子。昨年のこの会の開口一番も彼だった。噺の初めは彼の少し甲高い声がマイクに合わず耳にキンキンきたが、途中から音響さんが気づいたのかマイクのトーンを下げてとても聞きやすくなると共に、『やかん』の講談調部分からはテンポも良く、観客から大きな拍手をもらっていた。続いて登場した○○師匠も、どうしてあの師匠からどうしてこんな上手い前座さんが生まれるんだろうか、と感心しきりであった。同感。

出囃子がなぜか「Happy Birthday to You」。さて誰の誕生日だろうか、と登場したのは入船亭扇辰。実は私と扇辰師匠は最寄駅が一緒で、この日も東銀座まで同じ電車の車両で御一緒だった。で、扇辰は登場するなり舞台袖のお囃子・恩田えり社中に怒りの一喝(笑)をしてから本題に。『紫檀楼古木』はキセルの間にあるラオと呼ばれる竹を交換するラオ屋と御新造さんが狂歌を交わすというとても風情のある落語である。そのなかでラオ屋と御新造さんの間を行き来する女中のきよをうまく際立てさせて扇辰は噺を進めていく。「ラオ屋あぁ〜〜、キセル」という売り声の名調子と共に江戸の粋を十二分に味わせてもらえる一席だった。お見事。

続いては三代目橘家文蔵。まずは平昌オリンピックをマクラに。金がかかっていないオリピックは面白くない、と。私はどうして?と思ったら、師匠の金がかかっていないは賭け事の方であり思わず納得。(苦笑)そして、座布団に寝てのリュージュ姿には場内大爆笑。本題の『化け物使い』は人使いの粗いご隠居が人間ばかりでなく化け物までが音を上げてしまうという有名な噺。私はこの噺をこれまでに何人もの噺家で聞いてきたが、コワモテの師匠が化け物を心優しく演じるのに吹き出さざるをえなかった。文蔵師匠、三代目を襲名してそろそろ1年半になるが、風格も出てきて列記しとした橘家文蔵になっていた。よっ、男前!

仲入りを挟んでトリは柳家喬太郎。登場するやいなや観客に向かって「なんでみんなそんな服装なの、銀座でしょ、アルマーニを着なきゃ」と。これにはお客も唖然の大受け。そしては本題はサラリーマンの悲哀を描いた三遊亭圓丈作の『ぺたりこん』。机の上についた左手が離れなくなって、社員から備品扱いになってしまうというカフカか筒井康隆を思い浮かべてしまうシュールなお話。喬太郎師匠は古典も新作もオールマイティーな落語家であるが、初めて聞く不条理話も上手い。この人は本当にウルトラな噺家だ。

来年は節目の10回目。大いに楽しみである。

火曜日, 2月 06, 2018

美食日記『ロムデュタン シニエ ア・ニュ』(銀座)

久しぶりの美食日記。今回は昨年11月の伊勢丹シャンパーニュの祭典で手に入れた「ドゥーツ」のロゼと、手に入れにくい北海道ワイン「ドメイン・タカヒコ」のピノを美味しい料理と味わいがために、BYO(ワイン持ち込みOK)でGINZA SIX13階にある「ロム デュタン シニエ ア・ニュ」を訪れた。ここは広尾にあるアニュの姉妹店で昨年4月にオープン。シェフは広尾でスー・シェフとして活躍していた簑原祐一さん。支配人はメートルドテルだった新井哲成さんが務めている。

この日のメニューは下記の通り。

・アオリカのコンフィ
・鰤のセビーチェ
・白子のムニエル
・本日の鮮魚(桜鱒のポワレ)
・鮑と筍
・和牛のバベット
・シェーブル
・ワゴンデザート(モンブラン、プディングなど)
・飲み物(コーヒー)と小菓子

訪れたのは2月3日節分の日。席についてすぐ私が相方に「今年の恵方巻にはマグロやカニなどの高級食材をノリで巻いて、その上に金粉やキャビアが載っている15000円で売り出されたものがあるね」と話をしていたら、いきなり金粉とキャビアが乗ったアオリイカのコンフィがアミューズとして登場。これには私も思わず苦笑。

 

続く「鰤のセビーチェ」は鰤と大根のミルフィーユといった感じだが、そのテイストはどことなく和食感に満ちていていた。

「白子のムニエル」は春菊のペーストがポイント。春菊とバターなどを合わせたペーストは食材に広がりを与える美味なソース。これを使えば白身魚(例えば太刀魚)のポワレと合わせたら、美味しいだろうなあと想像が膨らむ。一方で相方は私も作ってみようかな、と。ほんまいかいなあ。

 

本日の鮮魚は「桜鱒のポワレ」。低温調理された桜鱒の身はほんのり温かくレアな感じだが、刺身と焼き魚の中間の味を見事に表現。泡のノイリーソース(?)にもマッチしていて美味。これには相方はこれは私は作れないなあ、と。当たり前でしょう。w

「鮑と筍」は試行錯誤の一品らしい。鮑をメインにするか魚のを挟んだ筍のどちらに比重を重くおくべきか迷っているらしかった。まあ、器からしてちょっと食べにくかったので、そこは改善してほしい。で、私は鮑はいつでも食べられるのだから、旬を大事にするならやはり筍をメインにする方に一票入れたい。

 

メインディッシュは「和牛のバベット」。バベットとはフランス語でヨダレカケという意味で、いわゆるハラミ肉で牛のなかでも稀少かつ恒久な部位。和牛はどこ産のものか知らないかとにかく柔らかく、赤身の旨味をしっかり表現。こうしたシンプルな味だけでも満足なのだが、それにスライスされた黒トリフもトッピングされ、トリフの薫りと共に食べる肉も美味しい。肉好きにはたまらないステーキだ。

 

デザートはシェーブルに始まり、ワゴンデザート(モンブラン、プディングなど)、そして最後に小菓子と飲み物の3連発。私は甘党でないので、ここらに関しては書くのはスルーさせてもらうが、相方はスイーツは別腹と言わんばかり、いろいろと訪張っていた。

 

こちらの店にはオープン1ヶ月後ぐらいに来たのだが、その時はまだ肩肘を張った感じの料理でちょっとという感じだったが、今回は腕を上げたというか妙な力が抜けていて、和のテイストをうまく取り入れた感性で、シェフの個性もしっかり表れていてとても好感がもてた。また、どの料理も持ち込んだシャンパンとワインにマッチしていて感謝感謝。あと写真を撮るのを忘れたが、軟水にもかかわらず炭酸が入っている「奥会津の炭酸水」というのがとても美味しかった。ヨーロッパの硬水の炭酸水に比べてマイルドで優しく飲みやすい。