金曜日, 2月 27, 2009

6割は戻ってきてしまう

検察審査会にいたときに東京地方裁判所で開かれている裁判をいくつも傍聴したことがある。そうした裁判のなかで印象的に残っている言葉がある。

昨日(26日)東京地裁の江見健一裁判官は、覚せい剤取締法違反(使用)に問われた元グラビアアイドルの小向美奈子被告に対して、即決裁判手続きが採用され、懲役1年6月執行猶予3年を言い渡した。

この裁判で裁判官は判決を言い渡したあとに、おそらく次のような言葉をつけ加えたのではないだろうか。

「初めての人には執行猶予がつきますが、残念ながら6割の人は戻ってきてしまいます。あなたはそのようなことがないように更生してください」

木曜日, 2月 26, 2009

映画「おくりびと」で悲喜こもごも

藤沢周平(鶴岡市出身)の本を愛読し、祖父が酒田市(旧八幡町)出身という私にとって、映画「おくりびと」がアカデミー賞・外国語映画賞受賞して、そのロケ地である山形県庄内地方がクローズアップされていることは正直嬉しい。

受賞のおかげでロケ地になった銭湯「鶴乃湯」は取材が殺到して、今や日本一有名な銭湯になってしまった。そして、限定酒の「初孫 純米吟醸 おくりびと」という日本酒も大変な売れ行きのようである。また、本木雅弘が演じる納棺師がチェロ奏者として所属するオーケストラのメンバーは、山形交響楽団(山形市)の楽団員が演じていて、山響も注目を浴びるようになっている。

こうした喜びに湧く山形県とは反対に、滝田洋二郎監督の出身地・高岡や、台本の出発点となった「納棺夫日記」を書いた入善町出身の青木新門が暮らす富山県では地団駄を踏んでいるという。なんと県議会委員会で「同じ雪国なのに、なぜ(ロケが)富山でなかったのか」と質問が飛び出したというのだから、ちょっと異常な気もする。

さて、こんなことを書きながら、私はまだ映画を観てもいないし、庄内地方へ行ったことがない。しかし、以前よりこの夏に先祖の墓参りに行こうと思っていた。ただ、「おくりびと」のアカデミー賞受賞でクローズアップされた後に、酒田へ墓参りに行くことになるとは、なんか出遅れたような複雑な気持ちでもある。

火曜日, 2月 24, 2009

富士山の日とふろしきの日

昨日2月23日は「ふ(2)じ(2)さん(3)」という語呂合わせと、この時期が富士山がよく望めることから、富士河口湖町が「富士山の日」と制定している。また「今日は何の日〜毎日が記念日〜」というWebサイトによると、京都ふろしき会が「つ(2)つ(2)み(3)」という語呂合わせから「ふろしきの日」としている。ただ、京都の知人曰く「“京都ふろしき会”という団体はない」ということなので、ネットで検索してみたが確かにこういう団体が見つからない。ということは、「ふろしきの日」は大風呂敷なのだろうか。

それにしても、「今日は何の日」という日には語呂合わせが多い。前日の2月22日は「ニャン(2)ニャン(2)ニャン(2)」という語呂合わせから「猫の日」になっている。ならば「犬の日」は1月11日か11月1日かと思ったら、案の定11月1日だった。こうなると、「今日は何の日」というのも何でもありのような気になる。

なお、2月23日はいずれ祝日になる日でもある。

月曜日, 2月 23, 2009

金が4,000円台の時代が来る!?

株価が低迷しているなかで、案の定というか金価格が高騰している。これは日米のゼロ金利政策をはじめ各国の金利が軒並み低いこと、加えて、景気浮上のために今後各国政府が大量の資金を市場に供給することなどの理由からだろう。

金は昨年3月に過去最高値となる1オンス=1033.9ドルまで値上がったが、その後は株の下落と共に資金ぐりに困った投資家たちが手放して、昨年11月には712.3ドルまで下がった。そして、20日には一時NY商業取引所で1,000ドルを越えた。日本でも金は1月半ばまでは1グラム 2,500円前後だったのだが、この2〜3日は3,000円を突破している。

この金価格上昇はまだ続きそうな気配である。というのも、金融危機が東欧にも波及しそうだという観測から、より一層安全資産の金を買う心理が動いているからであろう。こうした投資家心理に一般投資家まで同調していくと、ますます金は上がりそうである。

バブル期に日本人はかなり人が金を買ったと言われていてタンスの奥深くに眠っている。その当時の値段は1グラム2,100円から2,300円だったので、今、売れば間違いなく儲かることになる。しかし、今後、金が大好きな中国人がその経済力を背景に買いに走れば、1オンスあたり2〜300ドルは上がるのかもしれない。こうなると、いつの日か1グラム4,000円台の時代が来るかもしれない。まあ、捕らぬ狸の皮算用とも思えるのだが・・・。

木曜日, 2月 19, 2009

杉浦日向子の『百日紅』(上下巻)を読む


先日、興奮しながらひと晩かけて読んだ。もう2、3度ひと晩かけてじっくり読むだろう。

『百日紅(さるすべり)』は文化11年(1814年)頃の江戸の町を舞台とした杉浦日向子の傑作漫画であり、漫画史上に残る名作のひとつといっても過言ではないだろう。上下巻で30ストーリー。

お話は葛飾北斎、その娘・お栄(葛飾応為)、居候と決め込む池田善次郎(後の渓斎英泉)、歌川門下にありながら北斎の画風を慕う歌川国直らを主人公に、彼らの人となりや生き様を活き活きとそして鮮やかに描いている。

この漫画には黒船騒ぎで揺れる前の江戸情緒が豊かに新鮮な空気で奏でられている。そして、読んでいるうちに、自分がまるで江戸の町にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。というのも、この漫画からは江戸の香りが漂ってくるからである。それは肥桶の匂いであり、堀を伝わってくる柳の風であり、居酒屋の安い酒の味であったりする。

私たち凡人は手塚治虫のように50年100年後の未来の歴史を想像することはとても無理だが、今から200年近く前の江戸を想像することは意外に容易い。それを実感させてくれる漫画でもある。

月曜日, 2月 16, 2009

「昭和毎日」が面白い

毎日新聞が作っているウエブサイト「昭和毎日」が面白い。

「昭和毎日」は「クイズ昭和の記憶」「昭和ニュース」「昭和に帰りたい」「昭和の地図」「昭和写真館」といったコーナーで構成されている。なかでも、「クイズ昭和の記憶 ここはどこ?」は昭和30年代の写真を掲載して、それがどこかを二者択一で推察するようになっているのだが、これが意外に難しい。何分、昭和30年代はまだまだ子供だったので、知らない場所もある。私より少し年配の人ならば簡単かもしれないが・・・。

「昭和の地図」では現在の自分の住んでいる場所を探すと、1956年(昭和31年)の東京の地図が表れて、旧町名や旧番地の地図を見ることができる。また「昭和写真館」には貴重な写真が数多く掲載されている。昭和を語る上では貴重かつ重要な資料のウエブサイトである

昭和30年代を知っている人も、あまり知らない人も一度見てみましょう。

昭和毎日
http://showa.mainichi.jp/

金曜日, 2月 13, 2009

“飲兵衛”と“ヨッパライ”の違い

飲兵衛とはお酒が好きな人で、己の理性を失うことなく、酒に飲まれることなく、酒を楽しく嗜む人のことを言う。

ヨッパライとはお酒が好きだが、たびたび他人に迷惑をかけ、酒を楽しむというよりは酒に身を委ね溺れてしまう人のことを言う。

これは自慢ではないが、私は50数年に生きてきて、酔っ払ったことがたったの一度しかない。これは高校(某都立大学附属高校)のときのことで、クラスマッチかなにかでバレーボールをやっていて、優勝候補の相手チームから1セット取ったら祝杯しようやぁ、ということでみんなで頑張ったときのことである。そして、その第1セットをなんと取ってしまったのである。しばらくしたら、我々のベンチ横には一升瓶が置かれいるではないか。プレーをしている我々はもう戦意喪失(笑)で、第2・第3セットを軽く捻られてしまった。

その後がいけなかった。運動した後の空きっ腹、ツマミはほとんどないのに、我々は屋上に通じる踊り場で、次に自治会館の部室で、次から次へと一升瓶を空けていってしまった。あとから聴いた話なのだが、結局6本飲んだそうだ。ほぼひとり1本である。もうこうなると、何も憶えていません。私は教頭や教師に説教をたれていたとか、夜の校庭のど真ん中で女の取り合いをしていたとか、我々が知らない話があとからいくつも続出した。私もどうにか家に帰ったようなのだが、どうやって帰れたかも全く覚えていない。

ということで、私が酔っ払っている姿を見たことがある人は、高校のクラスメイトと教師ぐらいである。それ以来、私はお酒で醜態をさらしたことは一度もない。飲んだ勢いで女性を口説いたりはするが、セクハラ行為などはしない。たまにヨッパライを見ると「あ〜、俺もヨッパライになって、誰かに介抱されてみたいもんだ」と思ったりするが、後々のことを考えるとできない。

「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」はもちろんのことであるが、「飲んだら酔っ払うな、酔っ払うなら飲むな」である。飲兵衛は紳士たれ!

水曜日, 2月 11, 2009

東京の5大“粗大ごみ”のひとつ、東京芸術劇場

有楽町の都庁跡地に東京国際フォーラムが完成したとき、建築家の磯崎新さんが某読売新聞に東京には5つの文化施設という“粗大ごみ”ができたと書いたそうだ。その粗大ゴミというのは、完成順に書くと東京芸術劇場(設計:芦原義信)、東京都新庁舎(設計:丹下健三)、江戸東京博物館(設計:菊竹清訓)、東京都現代美術館(設計:柳澤孝彦)、東京国際フォーラム(設計:ラファエル・ヴィニオリ)のことを指している。

このなかで、私は東京都現代美術館へ行ったことはないが、それ以外の4つの施設には何度も足を運んでいる。なかでも東京芸術劇場は単に音楽を聴くだけでなく、中ホールで公演した芝居に二度ほど携わっているのでその内装や設備をかなり知っている。また、小劇場でも何度も芝居を観ている。それゆえに、ここの印象は5大ごみのなかでも最悪である。

まず第一に大ホールへのあの長いエスカレーターのセンスの無さ、実用性の無さは酷いもんである。そして、大ホールへ向かうエレベーターは11人乗りのものが2つあるだけで、身体の不自由な方や御年寄への配慮が全く欠如している。加えて、5階の大ホール入口に入っても実際の劇場の1階はまだまだ上で、これまたエスカレーターである。芦原義信(文化勲章を受章している)という建築家はよほどエスカレーター好きな輩だったのだろう。それなのに、劇場の3階席へ行くには階段しかない。信じられない構造である。

次に中ホールであるが、これは客席の傾斜が非常に緩やかで芝居を観る設計になっていない。その上、声や音が妙に籠もってしまい、東京に数ある中劇場のなかでは最低の観劇環境といっても過言でない。最近は舞台機構の老朽化も目立っていて、そのメンテナンスだけでも大変のようである。

そんな東京芸術劇場も2011年度から大改修工事を行うことが決定している。総工費は114億円で、ミューザ川崎の設計などを手がけた松田平田設計が行うことになった。詳しい計画はまだまだのようであるが、基本方針として劇場内外のデザインを一新して、大ホールおよび中ホールは内装および設備などを改修する。また、バリアフリー化への対応、エレベーターの増設に向けた構造検討なども行うようである。ただ、私としは改修工事などという下手なことをするよりも、一度建物を壊して完全に建替えた方がいいと思っている。そう思う人は少なくないと思うのだが・・・。

東京芸術劇場改修と改革の方向性について
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/bunka/hyougikai/3kai/bunkasisetu_kentoubukai-houkoku.pdf

月曜日, 2月 09, 2009

肥桶を積んだ荷車やバキュームカーを覚えていますか

私が小学校に通い始めたころ(昭和30年代半ば)までは、私の家の前を肥桶を積んだ大きな荷車を牽く馬が行き交いしていた。当時は目黒や世田谷にはまだまだ畑がいっぱいあり、畑のそばには外見は井戸に似ているものの、すっごい異臭を放つ肥溜があり、子供たちの間での悪口のひとつに「おまえ、肥溜に落すぞ」なんて言っていた。

都心はどうだったか知らないが、昭和30年代半ばまでは下水道がまだ完備されていなかったために、トイレは汲取り式で月に1回ぐらいバキュームカーがやってきて、浄化槽に貯まった糞尿を回収していった。バキュームカーについている長い汲取り用のホースの先にはなぜか軟式ボールがついていた。

しかし、私の家の前は肥桶を積んだ荷車は通るのに、私の家にお百姓さんが汚泥を取りにくることはなかった。なぜだったなのだろう。昔ながらの家や大きな家など契約した家からしか汚泥を取っていかなかったのだろうか。

そんな肥桶を積んだ荷車も東京オリンピック(昭和39年)と共に見ることはなくなった。そして、バキュームカーも1970年代後半には見かけることがほとんどなくなった。ただ、地方ではまだまだ走っているところはあるようである。

金曜日, 2月 06, 2009

47都道府県、すべて言えますか?

職業柄、日本で行ったことがない都道府県は3県しかない。和歌山県、徳島県、高知県だけが行ったことがない。いわゆる南海道にはなぜか縁が薄い。しかし、いつの日かはこれらの県にも行き、日本の全都道府県に足跡を残すつもりでいる。余談だがアメリカは50州のなかで足を踏み入れたことのない州はおそらく2州だけで、カナダも10州&3準州中11州へ行ったことがある。

さて、そんな私のくだらない話はどうでもいいのだが、47都道府県すべてをいえない小学生が多いという。2007年の文部科学省国立教育政策研究所の調べによると、小学生の間で位置がわからない都道府県ワースト10は下記のようになっている。

位置がわからない都道府県(小学生)
1位 福井 60.1%
1位 徳島 60.1%
3位 宮崎 59.9%
4位 島根 59.8%
5位 岡山 58.7%
6位 福岡 58.2%
7位 山梨 57.0%
8位 鳥取 56.5%
9位 岐阜 55.8%
10位 佐賀 55.5%

実は大人でも福井県や徳島県が何処にあるかわからないという人は多い。ということで、都道府県の位置をよく確認ができない人は下記のホームページへ行ってお勉強しましょう。さあ、どれだけ正解できるでしょうか。

都道府県パズル
http://earth.endless.ne.jp/users/yoshi216/tizu-check.html

都道府県当てクイズ
http://butuyokuannex.cocolog-nifty.com/home/files/jcheck.dcr

水曜日, 2月 04, 2009

京の冬の旅・美食日記(烏丸仏光寺 桜田)

京都滞在2日目の昼食は、いま京都でもっとも女性客に人気がり、なかなか予約が取れないと言われている料亭「桜田」へ行ってきた。「桜田」は滋賀県東近江市にある料亭「招福楼」の神戸店料理長を務めた桜田五十鈴氏が1988年(昭和63年)に開いたお店である。

お店は四条烏丸から南へ少し行った仏光寺通を東へ入って一筋目を南へ下がった左側(東側)にひっそりとある。店内はカウンター席が8席、テーブル席は4人掛けが3卓、2人掛けが1卓、その奥に6〜8人に入れそうな座敷が一つある。テーブルの席の部屋には、先代吉兆(故・湯木貞一氏)が開店祝として贈った「味道是茶道」という書が飾ってある。ちなみに、この年に先代吉兆は数えで88歳となり、料理界初の文化功労者となった。

この日は京都の知人(女性)と打ち合わせを兼ねた食事だったのだが、出てくる料理は下手な打ち合わせなどしていられるようなものではなく、もう料理以外の話などできようもない品々のオンパレードであった。

我々が訪ねた日はちょうど旧正月(1月26日)ということで、最初の付け出しには写真のように「立春大吉」の書かれた和紙(この紙をなんと呼ぶの?)が飾られていた。季節感を大事にしているご主人の心憎いばかりの配慮に感服の極みである。この付け出しを皮切りに出て来た刺身、煮物、お椀などはどれをとっても逸品で、すべてが驚愕の品々であった。

なかでも、我々を虜にしたのが、お吸い物であった。まずお椀の美しさ。輪島塗のような高級そうなお椀。その蓋をあけると漂ってくるのは山椒の香り。お吸い物のなかには新春の筍に鮮やかな色をしたワカメ。そして、吸い物のお味はなんというか優しいまろやかな味。いったいこれは何のダシだろうか・・・。このお椀ひとつだけでも、目で味わい、香りで味わい、舌で味わうと一品でいくつもの味わいを楽しむことができる。

デザートの後に最後にもう一度お茶が出される。つまり、お茶で始りお茶で終わる。掲げられて「味道是茶道」の通りのコースになっている。店主の桜田さんの季節感を大事にした繊細にして優しい味は女性客だけでなく、私のような飲兵衛をも引きつける。次はぜひとも夜のコース料理をゆっくりと味わってみたい。

桜田
京都市下京区烏丸仏光寺東入ル一筋下ル匂天神町
電話番号075-371-2552(要予約) 火曜定休
午前11時30分〜午後1時30分(ラストオーダー)
午後5時〜午後7時30分(ラストオーダー)
料金は昼は5000円から、夜は10,000円から(カード不可)

月曜日, 2月 02, 2009

京の冬の旅・美食日記(先斗町 いふき)

京都滞在1日目の夕食は、昨年10月に訪れてめちゃくちゃ気にいった、先斗町にある「炭火割烹いふき」を再び訪れた。前回はなかなか見つけることができなかった“21番路地”も、今回は簡単に見つけることができ、人一人か二人しか通れないような狭い路地奥にあるお店へすんなりと足を運ぶことができた。

ここ「いふき」は賀茂川沿い北大路にある懐石料理店「紫明卯庵」や先斗町の「卯月」で料理長をしていた山本典央さんが2005年10月にオープンしたお店。

日曜の夜というにもかかわらず、カウンター3席を除いては店内は満席。人気のほどが窺える。3ケ月前に来たばかりなので、店主の山本さん、女将さん、そして、ナイナイの岡村くんに少し似ている焼き方のお兄さんたちが笑顔で迎えてくれた。

前回の日記でも書いたが、ここは炭火割烹といっても、おまかせコースの場合は先付け、刺身、煮物、お椀、漬物と旬の素材を大事にした京料理が出てくる。今回はそのなかでも、もろこの煮付け(?)が非常に美味しく印象に残った。

もろことはびわ湖特産の魚で、その大きさは5〜10センチぐらいで細長い。以前は普通に獲れた魚だったのだが、90年代半ば頃からブラックバスなど外来魚に食べられてしまうようになり漁獲高は激減。今や高級魚になってしまったそうである。そのモロコを軽く炭火で炙ったあとに飴煮にしたものが非常に苦み走った味で、例によってお酒がすすんでしまった。

今回は日本酒ではなくイタリア産の赤ワインを頂戴した。山本さんは日本酒に詳しいが、ワインにもウンチクがあるようである。そのワインをあける頃になると、隣りの予約席にも若いカップルが来て店は満席となり、カウンター前の焼き方のお兄さんの動きが機敏になり、ワインの味も引き締まるようで、なんとも言えない味とムードになっていた。

この日の私のメイン・ディッシュは若狭ぐじ(アカアマダイ)の炭火焼き。いつも笑顔を絶やさない焼き方のお兄さんがキビキビした手つきで、目の前で若狭ぐじを焼いてくれる。そして、いつしか隣りの若いカップルとも話が合うようになったしまった。というのも、女性の方が京都にある編集プロの編集者で、同業者とういうことでついつい話がはずんでしまったのである。もちろん、骨董商という男性とも日本酒の話がすすみ、このお店に置いてある十四代(山形)、早瀬浦(福井)、磯自慢(静岡)、楯の川(山形)などがいかに素晴らしいお酒であるかを、お節介にも説明してしまった。それにしても、ここはいつも美味しいお酒を用意してある。

今回も前回同様に「いふき」では料理を舌で味わい、目で味わい、話で味わうことができた。「いふき」は私にとってはそういう楽しい料理を味あわせてくれるお店である。

炭火割烹いふき
先斗町21番路地奥 電話番号075-211-3263(要予約)
午後5時〜午後10時(ラストオーダー)火曜定休
http://ifuki.jp/

先斗町の隠れた名店『炭火割烹いふき』
http://k21komatsu.blogspot.com/2008/10/blog-post_09.html

追記になってしまったが、すぐき(漢字では「酸茎」と書く」)という漬物が美味しかった。このすぐきは京都の伝統的な漬物で「柴漬」「千枚漬」と並んで京都の三大漬物と言われているそうだ。京料理は奥深い。